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第5話 無力
昼過ぎに目が覚めると、勇者様は私の隣で寝そべって本を読んでいた。
開けっ放しのテントの出入り口からは心地よい風が流れ込んでくる。
「お、目が覚めたか。具合はどうだ?」
「はい、もう大丈夫です。あの、もしかしてずっといてくださったんですか?」
本を閉じる勇者様。
「ああ、俺は別にすることもないからな。さてと、賢者が果物を見つけてきてくれたそうだから食べるといい」
テントを出るとすでにみんな戻ってきていて、私の顔色がよくなったことを喜んでくれた。
賢者様が見つけた果物を魔術師様が魔法で冷やしてくれていて、とても美味しかった。
聖女様はきれいな花を摘んできてくれたのだが、
「今日からは一緒のテントで寝ましょうね」
と言われた。人の気配がある方が落ち着くってこと、勇者様が話しちゃったのかな?
魔王領に入る前に馬車と勇者様の馬を小さな村の役場に預け、徒歩での移動が始まった。
それぞれ空間収納を持っているので大荷物を運ぶ必要はない。
ただ補充は難しくなるので、食材やポーション類の使いどころをよく考えなければならない。
勇者様と私は冒険者として活動していたからそれなりに体力もあるけれど、他の面々はそうもいかないので休憩をこまめに取るようになった。
それでも勇者様はイラついたりすることなく、私を含めてみんなを気遣ってしっかりとまとめ上げている。
魔王領を進んでいくにつれて魔族からの攻撃も増えてきた。
賢者様は出現した魔族に関する情報を伝え、魔術師様はそれに合わせて魔法を発動する。
聖女様が防御の結界を張りつつ、負傷者が出ればすぐさま治癒を行う。
勇者様は大物狙いで聖剣で切り込んでいく。
私は魔獣くらいならどうにか出来るけど、魔族ともなると桁が違いすぎて手も足も出ない。
連携をとりつつ戦っている魔王討伐パーティの面々と私との力の差をまざまざと思い知らされる。
今は直接戦闘に関わらない賢者様の背後で食事の支度をする。
私達のまわりには魔術師様が結界を張ってくれて、聖女様の護符も持たされている。
ただ守られるだけの存在。
懸命に戦う人達が目の前にいるのに私には何もできない。
「おつかれさまでした!食事の準備は出来ていますよ」
周辺の魔族をすべて退治し終えた皆さんを笑顔で出迎える。
私にできることはこれくらいしかない。
具沢山のスープは干し肉を多めにしたし、パンにはチーズとナッツも混ぜ込んだ。
「うん、美味い!」
「身体が温まりますわね」
こんなことしかできないけれど、少しでも皆さんの助けになればいいと思う。
「なぁ、何かあったのか?食事の時に時々つらそうな表情をしていたが」
こんな時でも勇者様は後片付けを手伝ってくれて、私に気遣いもしてくれる。
「…皆さんが戦っているのに、何もできないのがくやしいと思っただけです」
こんなことで勇者様に迷惑をかけちゃいけないってわかってるのに、つい本音をこぼしてしまう。
「お前が何も出来ないなんてことはないぞ。美味しい食事を作ってくれて、笑顔と明るい声で俺達は元気をもらってる。俺だけじゃない、みんなそう思ってるんだからな」
大きな手で頭をなでられる。
「…ありがとうございます」
その言葉だけでも報われた気がした。
後片付けを終えた勇者様に肩を抱き寄せられる。
「俺はこのパーティに来てくれたのがお前で本当によかったと思ってる。自分を卑下する必要なんてない。お前にはこれからもずっと笑顔でいてほしい。そのためにも俺はがんばるから、お前はしっかり見守っていてくれ」
「…はい」
そう答えたら額にキスされた。
「明日もまた忙しくなるだろうから早く寝ろよ」
そう言い残して去っていく勇者様。
私は顔の熱がなかなか冷めなくてちょっと困った。
開けっ放しのテントの出入り口からは心地よい風が流れ込んでくる。
「お、目が覚めたか。具合はどうだ?」
「はい、もう大丈夫です。あの、もしかしてずっといてくださったんですか?」
本を閉じる勇者様。
「ああ、俺は別にすることもないからな。さてと、賢者が果物を見つけてきてくれたそうだから食べるといい」
テントを出るとすでにみんな戻ってきていて、私の顔色がよくなったことを喜んでくれた。
賢者様が見つけた果物を魔術師様が魔法で冷やしてくれていて、とても美味しかった。
聖女様はきれいな花を摘んできてくれたのだが、
「今日からは一緒のテントで寝ましょうね」
と言われた。人の気配がある方が落ち着くってこと、勇者様が話しちゃったのかな?
魔王領に入る前に馬車と勇者様の馬を小さな村の役場に預け、徒歩での移動が始まった。
それぞれ空間収納を持っているので大荷物を運ぶ必要はない。
ただ補充は難しくなるので、食材やポーション類の使いどころをよく考えなければならない。
勇者様と私は冒険者として活動していたからそれなりに体力もあるけれど、他の面々はそうもいかないので休憩をこまめに取るようになった。
それでも勇者様はイラついたりすることなく、私を含めてみんなを気遣ってしっかりとまとめ上げている。
魔王領を進んでいくにつれて魔族からの攻撃も増えてきた。
賢者様は出現した魔族に関する情報を伝え、魔術師様はそれに合わせて魔法を発動する。
聖女様が防御の結界を張りつつ、負傷者が出ればすぐさま治癒を行う。
勇者様は大物狙いで聖剣で切り込んでいく。
私は魔獣くらいならどうにか出来るけど、魔族ともなると桁が違いすぎて手も足も出ない。
連携をとりつつ戦っている魔王討伐パーティの面々と私との力の差をまざまざと思い知らされる。
今は直接戦闘に関わらない賢者様の背後で食事の支度をする。
私達のまわりには魔術師様が結界を張ってくれて、聖女様の護符も持たされている。
ただ守られるだけの存在。
懸命に戦う人達が目の前にいるのに私には何もできない。
「おつかれさまでした!食事の準備は出来ていますよ」
周辺の魔族をすべて退治し終えた皆さんを笑顔で出迎える。
私にできることはこれくらいしかない。
具沢山のスープは干し肉を多めにしたし、パンにはチーズとナッツも混ぜ込んだ。
「うん、美味い!」
「身体が温まりますわね」
こんなことしかできないけれど、少しでも皆さんの助けになればいいと思う。
「なぁ、何かあったのか?食事の時に時々つらそうな表情をしていたが」
こんな時でも勇者様は後片付けを手伝ってくれて、私に気遣いもしてくれる。
「…皆さんが戦っているのに、何もできないのがくやしいと思っただけです」
こんなことで勇者様に迷惑をかけちゃいけないってわかってるのに、つい本音をこぼしてしまう。
「お前が何も出来ないなんてことはないぞ。美味しい食事を作ってくれて、笑顔と明るい声で俺達は元気をもらってる。俺だけじゃない、みんなそう思ってるんだからな」
大きな手で頭をなでられる。
「…ありがとうございます」
その言葉だけでも報われた気がした。
後片付けを終えた勇者様に肩を抱き寄せられる。
「俺はこのパーティに来てくれたのがお前で本当によかったと思ってる。自分を卑下する必要なんてない。お前にはこれからもずっと笑顔でいてほしい。そのためにも俺はがんばるから、お前はしっかり見守っていてくれ」
「…はい」
そう答えたら額にキスされた。
「明日もまた忙しくなるだろうから早く寝ろよ」
そう言い残して去っていく勇者様。
私は顔の熱がなかなか冷めなくてちょっと困った。
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