地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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1章 生鬼

地獄タクシー

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「はい」
「急いで!」
二人が降りると礼司はタクシーをUターンさせ方南通りを新宿へ向かって走らせた
「どこへ逃げた?鬼のノブがあれば」
その時、助手席に置いたソードがまぶしいくらいに光りだすと
「おい向うの世界へいけるのか」
礼司は左手でソードを握った。

すると、目の前が真っ暗になりさっきの黒いモヤが小さく
凝縮しながら人の形になって目の前に現れ道路の真ん中に立っていた。
それは全裸に近く赤銅色で髪を振り乱し目はつり上がり口は大きく裂け、
爪は猫のように鋭く伸びた鬼のような形相の女性の姿だった。
「良子さんの生霊か?」
礼司は思いっきりアクセルを踏みそれを轢こうとすると右によけた。

一瞬助手席を見ると魔美の姿が見えたように気がした。
「前と同じか?」
タクシーをUターンさせると生霊は凄いスピードで逃げ出した、
その速さは100キロを越していた。
「ひょっとしたら」
そう言って礼司はギアを一番奥に入れるとロケットのように加速した。
生霊に追いついてライトを上向きにするとそれのスピードが落ちた。

「おお、効果あり」
礼司はためらわずそのままのスピードで生霊を轢くと
風船が破裂したように八方に飛び散った。すると周りは明るくなり
「11時59分、任務終了。魔美今回は一人でやったぞ」

方南町の交差点には松山夫妻が立って待っていた
「乗ってください」
「はい」
二人がおびえて後ろのシートに座ると礼司は話し始めた。
「説明します」
「はい」
「奥さんの息子さんを轢いた男の残留思念が
霊園を彷徨っていた霊と結びつき
鬼となって人を食うつもりだったのでしょう」

「そんな」
良子は声を出して泣き出した
「奥さんに罪はありません。たまたま霊園に
居た霊と鬼が奥さんのエネルギーを
 吸い取って動いていたんです」
「はい」
夫が返事をした。

「飲酒運転をして男には鬼が取り憑きやすいですからね
 鬼は自殺をさせて魂を食っただけです。罪と罰です」
「わかりました」
「信じる信じないは自由ですが」
「いえ、信じます」
「ありがとうございます。またお墓参りに行きます。その時はお願いします」
「息子さんの霊は成仏して転生の準備しているはずです」
「はい」

翌日、水野から礼司に電話があった
「夜野さん」
「おお」
「昨日言われた方南町のひき逃げ事件、特集を組みますよ」
「おお、サンキュー」
「お母さんのビラ配り、目撃者が言った黒い車と
逃げた方向で犯人を見つけましょう」
「ありがとう」
「ところで、飲酒運転死亡事故の謎は」
「ああ、あれはもう終わった。ただの偶然だ」
「そうか、残念」

それから数日後、雅也を轢いた犯人が訳の分からない
言葉をつぶやきながら出頭してきた。

その言葉は「地獄タクシーが迎えに来た」
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