地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

文字の大きさ
上 下
7 / 53
2章 汗鬼

真理子の危機

しおりを挟む
礼司がスタッフに言った。

「そりゃ汗が出ないようにしているけどあれだけ踊って歌って
いたら無理だよ」
スタッフが答えると魔美もそう言った

「そうよ」
「分かった」
礼司は奥に行ってベレッタに金のマガジンに
入れ戻って袖から真理子を
見つめていた

8時30分。1部の最後の歌を歌っている間に
乱丸とナイルがキョロキョロし始めた。
「来た」
「うん」
真理子の動きは激しくなり額に浮かぶ汗が見えた
顎の先から1滴の汗が落ちる瞬間

「やばい!落ちるぞ」
礼司はピストルを取り出しトリガーを引いた
発射された弾丸が汗に当たるとそれは蒸発した
「すごい!ここから汗を撃った」
浜田が驚いて言った

「それより、0.1度ピッタリだ」
1部が終わって舞台のそでに戻ってきた真理子は
礼司を見て驚いた。
「夜野さん、どうしたんですか?」
礼司は真理子の耳元で囁いた。
「例の君を飲み込んだ物が狙っている」
「ええ?本当ですか?」
真理子の顔色が変わった

「うん」
「怖い!」
真理子は礼司の手を握るとそれを魔美が見ていた
「まったく」
「だから絶対汗を床に落としちゃ駄目だ」
礼司は手を握り返した
「はい」
「汗さえ床に落とさなければ大丈夫だから」
「はい」
真理子がスタッフと一緒に楽屋へ戻ると魔美が礼司に聞いた

「どうするの?」
「このまま彼女を囮にして11時まで待つさ」
「でもライブが終わるのは9時半過ぎよ」
「どこかへ移動しないかしら」
「今夜は腹をすかしているから、彼女を狙ってくるさ」
「バレーボールの会場は?」
浜田が聞いた。

「一度俺達を見かけているから戻らんだろう」
「なるほど」
浜田が納得すると魔美が聞いた
「浜田さん、仕事は?」
「あはは、今日はもう終わっています」
「刑事さんなの?」
「ええ」

「やはり向うで浜田さん・・・・」
魔美が悲しそうな顔をした
「ああ、そうだな」
「な、何なんですか?」
「君が向こうの世界で死んだって事だよ」
「はあ?」

コンサートの第2部では真理子は
礼司の言った事を守り汗を拭きながら
歌って問題なく終わった。
「9時35分、無事終了か」
「そうそう、さっき真理子さんが夜野さんの
タクシーで帰るから待っていてくださいって」

「おおそうだ、今日は仕事していなかったから助かるな」
「あはは」
「これで真理子さんが汗を流す事ありませんね。良かった」
「ん?シャワーは?」
礼司は変な予感がした
「楽屋にあるわよ」
「まずい、まずいぞ」
礼司は走り出して真理子の楽屋に飛び込んだ

「な、なんですか?」
マネージャーが驚いてその時
「きゃー」
と言う悲鳴が聞こえた
乱丸とナイルはマネージャーの頭を飛び越えて、
礼司はマネージャーの手を払ってシャワールームへ入って、
そのカーテンを開けると真理子の体は首まで飲み込まれていた
礼司は真理子の手を引いた

「こら鬼!」
礼司は思い切り真理子の手を引くと体が黄色く光った
そこへ魔美が来ると
「魔美、ポケットの小柄で鬼を刺せ」
「はい」
魔美は礼司のポケットから小柄をとってベージュの鬼をさした

「ギャー」
鬼は悲鳴を上げて消えた
礼司は真理子を引き上げると
「あはは、綺麗な胸だ」
「きゃー」
真理子は胸を隠した

「魔美今何時だ?」
「10時」
「行くぞ」
「どこへ?」
「鬼が逃げたところだよ、サウナ」
「はい」
魔美はニッコリ笑った

礼司はバスタオルを巻いて体を震わせている真理子に向かって
「鬼退治して来るから安心して」
「そうよ。夜野さんがやっつけてくれるから」
魔美が自慢そうに言った
「あ・り・が・と・う」
しおりを挟む

処理中です...