地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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2章 汗鬼

任務完了

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礼司はピストルを浜田に預けて更衣室へ行った
浜田は横たわっている女性の前に立って
天井に銃口を向けていた
そこへ、礼司が戻ってきて

「そこだ」
そう言って青いバスタオルを浜田の右横に投げつけた
そこには汗鬼が口を開いていた。
そこに落ちたバスタオルが汗鬼を吸い取った、
そしてブルーのタオルがベージュに
染まった瞬間、

「浜田撃て」
浜田が3発目を撃った時
「ぎゃー」
という声を出して汗鬼が飛び散った。
「きゃーやった」
魔美は飛び跳ねて拍手をした

「まだだ」
「どうして?」
「汗鬼はもう一匹いる、行くぞ!」
礼司が階段を下りてタクシーに向かうと
「待ってこの女性は?」
「あっそうか」
「浜田3階のスタジオに置いてこい」
「はい」
浜田は女性を抱き上げ誰もいないスタジオに横にさせると
外に走って出た。



「ご苦労さん」
浜田がタクシーに乗ると礼司は車を走らせた。
「次へ行くぞ」
「どこへですか?」
「板橋だ」
礼司タクシーを走らせた
「魔美今何時だ?」
「11時34分」
「OK」

誰もいない鬼の世界の道路を200キロ近いスピードで
青梅街道を走り山手通りを池袋方面に向けた
「向うには何があるの?」
「もう一匹の汗鬼退治」
「え?」
「浜田君あのサウナで二人死んだんだろう」
「そうです」
「それならもう一匹いるはず、真理子さんを狙ったやつが」
「なるほど」
「さっきのはまだ人は食っていない」

要町を真直ぐ抜け川越街道にでると
板橋の礼司が通っているスポーツクラブが見えた
「魔美後何分だ」
「あと10分だよ」
「OK」
「どうしてそんなに急ぐんですか?」
浜田が不思議そうに聞いた。

「一晩、つまり夜の12時を過ぎると鬼は強くなるんだ。
しかも人間を食うと巨大化する」
「そうか弱いうちに退治するんですね」
「そうだ」
礼司が運転するタクシーが駐車場に入った瞬間
フロントが溝に入ったように頭を下げた

「どうしたの?」
「汗鬼に飲み込まれた」
礼司はギアをバックに入れたと同時にライトをハイビームに入れた
すると「ギャー」という声を上げて汗鬼は
3mほどの高さに立ち上がった、それに向かってUターンした礼司は
ハイビームを当てると「ギャー」
と言って今度は地面に這った
それを礼司は思い切り轢いた。

「よし!」
礼司がタクシーを止めてタクシーの
下を見ると汗鬼は見あたらなかった
「逃げられた?」
魔美も浜田も辺りを見渡した

「どこへ行った?ビルの中か?」
礼司が走って1階の浴室に向かうと鬼が天井に張りついて礼司を狙っていた
それに気付かない礼司の上に落ちて来て礼司の全身から体液を吸い始めた
「痛てて・・・・」
体中に痛みが走った

そこへ、タオルを口に咥えて運んできた乱丸とナイルが汗鬼にかぶせ、
両手いっぱいにバスタオルを抱えた魔美と浜田が汗鬼に投げつけた
すると青いタオルがベージュに変わった瞬間、

浜田が「夜野さん!!」そう言ってピストルを投げた
礼司がピストルを受け取るとそれは黄金の光を放ち
15発立て続け弾丸を発射すると汗鬼がよれよれになった
そして、礼司は小柄を握ると金色に輝いて刀のように伸びた
そして、ジャンプしてバスタオルを縦に切ると

汗鬼は凄い音を立ててバラバラに飛び散った
そして、大田区のスポーツ施設から
5人の白い塊りが空に向って飛んでいった
「きゃー、やったー」
魔美と浜田が拍手をした
「11時55分任務完了!」
礼司が雄たけびを上げた
「夜野さんお疲れ様でした」
浜田は握手をした

「さあ帰るぞ!」
「はい」
3人と2匹はスポーツクラブを出てタクシーに乗った
「浜田さんなんて報告するの?」
「まあ、事実は無理ですね。でも安全宣言を出さないと」
「うん、とりあえず汗鬼は退治したけど、まだまだ出てくるぞ」
「本当ですか?」
「うん、また手伝ってね」

魔美がニッコリ笑った
「はい」
浜田も笑った
「がんばれよ」
そう言った礼司は向うの世界の
由美達の様子が気になっていた。

汗鬼 完
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