地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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6章 写鬼

呪鬼

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由美はそっけない返事をし続けた
「別の世界に移動したか・・・・」
「私、検案書書いてしまいます」
「わかった、待っている」
「はい」

礼司は浜田に電話をして説明をした
「そうですね、何か方法を考えて係長に頼んでみます」
「遺体を遺族に引き渡す前に何とかしなきゃ」
「わかりました、急ぎます」
「ところで、警察の方では捜査していないのか?」
「ええ、テレビ局の方は人が多くて目撃者も調べていないです」
「いまさら目撃者も見つからんだろう」

「せめて今日の富田さんだけでも、調べられないか?」
「分かりました、私が捜査してみます」
「頼む」
「それと、警視庁の白バイ隊には沢村と言う男はいませんでした」
「そうなると、他の県警かもしれないな?」
「それは、警視庁の方からは調べられないですね。
警察庁からでないと」

「そうか、それに警察になっているとは限らないしな」
「ええ、意外とバイク屋になっているかも知れませんよ」
「あははそうだな」
「では、新宿地下街に戻って聞き込みしてみます」
「おお」

しばらくすると
魔美から連絡が入った
「今どこ?」
「新宿大学病院で由美が終わるのを待っている」
「すぐ行くわ」

魔美がスカートを翻し走ってきた
「鬼が見つかったわ」
「どんな鬼だ?」
「ええ、呪鬼て言う鬼」
「呪いか」

「うん、呪いをかけて魂を食う鬼よ」
「誰が誰にだ?」
「この鬼は日本のどこかに住んでいて、鬼が住んでいる火の中に
殺したい人間の名前を書いて祈祷するの。すると・・・・・」

「死ぬわけか」
「ええ」
「そんな祈祷師が現代にいるのか?」
「たぶん」
「もしそうだったら依頼者と祈祷師、
二人いるわけね」

「ええ」
「その鬼はどこにいる?」
「わからない」

そこへ浜田から電話があった
「隊長、富田さんの司法解剖の許可が出ました」
「ありがとう」
「それと、国土交通省の次官と職員の2名死にました」
「えっ?次官がか?」

「テロか?」
「また原因不明だそうです」
「ちょっと調べてほしい事が有るんだが」
「はい」
「富田さんの出身地調べてくれ」
「は、はい」
礼司が電話を切ると由美に言った

「由美、司法解剖の許可が出たそうだ」
「はい」
「それと国土交通省の役人が2人死んだそうだ」
「それも鬼?」
「そうかもしれない」
「私、解剖の準備をします」
「はい」
由美は事務室に戻っていった


「魔美、俺たちは地下街に戻るぞ」
「どうするの?」
「浜田と合流する」
「はい」

礼司と魔美は新宿地下街の
富田順子が勤めていたラーメン店で
浜田を待った
「やはりここにもいないようね」
「ああ、彼女の霊はどこへ行ったんだ」
「うん」

「お待たせしました」
後ろから浜田が声をかけた
「途中でワッフルなんて食べているからだよ」
「ど、どうして分かるんですか?」
「ところで、富田順子さんの出身地分かったか?」

「はい、山形県の鶴岡です」
「わかった」
「今から?行くんですか?」
「無理か」
礼司が肩を落とした

「浜田、彼女の人間関係捜査するのか?」
「いえ、事件ではないので動けないんですよ」
「えっ?そうなの?」
魔美は浜田の方を向いた

「まあな、難しいな」
「そうなんだ」
「浜田ちょっとだけ聞いてくれよ」
「はい、わかりました」
「たのむ、俺達はこの辺りを歩いてみる、魔美いくぞ」
「はい」
礼司と魔美は地下街を歩き始めた

「魔美」
「えっ」
「ここにも地縛霊がいるな」
「うん」
「ホームレスがここで死んだんだな」
「ええ」
二人が地下街を歩き回って
ラーメン店の前に戻ると
浜田が立っていた

「夜野さん」
「わかったか?」
「はい」

三人は新宿駅の二階にあるスターバックスに入ると
「どうだった?」
「はい、富田順子は三年前から勤めていてその前は
看護師だったようです。
友人関係あまり無かったようですね」

「あっ、どこの病院だ?」
礼司は声を上げた
「広尾の公立病院です」
「どうしたの?」
「いや、富田さんはおそらく鬼の被害者だ」
「うん」
「呪鬼にやられたわけではないだろう」
「そうね、誰かに恨みをかった様子は無いわね」

「そうですね、富田さんはとても
まじめだった様子ですね」
浜田は答えた

「そうなると、知りたいのは病院勤務の様子だな」
礼司は浜田の顔を見た
「えっ、それも聞いてくるんですか?」
「いや、無理にとは言わないけどな」
「わかりました」

そこへ由美からの電話が鳴った
「隊長、富田さんの死因が判りました」
「なんだ?」
「心臓がありません」
「なんだって?」
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