1週間で300回イく彼女と旅のしおり

優麗

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九州6泊7日編

旅行1日目 『本』の字を冠していれば間違いなく美味い

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 ホテルに荷物を預けると時間的にもちょうど良い頃合いだったので、一休みした後に晩御飯を食べに行くことになった。

「今日はなにを食べるの?」
「ご飯は2人で決めようと思っていたから、まだ決めていないよー。」

 僕と彼女の旅行は『食』にかなりの比重が置かれている。
『せっかく見知らぬ土地に来たのだから、その地で有名な美味しい物を(庶民的常識の範囲内で)お金に糸目を付けずに食べたい』、そう考えるのは何もおかしな事では無いだろう。

 これから決めるとなると直前まで予約していないことになるけれど、そこは人の少ない某感染症禍。
 前回の北海道旅行では予約が取れず苦労したこともあったが、最終的には美味しいご飯にありつけているので今回の旅行でも晩御飯は直前までに考える方針だ。

 ただ、そうは言ってもなにも下調べしていないなんてことはなく、みーこは友人・知人から情報を仕入れてきていたらしい。
 さすがみーこ、頼りになる。全てを彼女任せにしていた僕とは大違いである。……いや、ここは全てをみーこに割り振った僕の采配が良かったと思うことにしよう。


 彼女が言うには九州と言ったら『もつ鍋』、『水炊き』、『焼き鳥』、『天ぷら』が美味しいらしい。どれもお互いの好物であるが今日は思いのほか風が冷たかったので、もつ鍋で温まることにした。

 その時は『九州なんだからもっと暖かいと思っていたのに、あまり変わらないんだなぁ』なんてことを考えていたのだけれど、この日、僕の地元では雪が降っていたらしいのでそれに比べれば十分暖かかったのだろう。
 雪の中を通勤しなくて済んだのは本当に運が良かった。

 ともあれ、そうした経緯から訪れたのは『もつ鍋 おおやま』本店。
『本店』と名が付いていることから分かるように、関東進出まで果たしている人気もつ鍋屋さんの本店だ。

 この前の旅行で彼女と行った『えびそば 一幻』の本店もやはり美味しかったので、『本店』と付いているお店の食事には否が応でも期待が高まる。
 さすがはみーこ、僕の好みを良く理解したお店選びだ。直前の電話で予約が取れたのも幸先が良いね。

『本店』然り『本家』然り。『本』の字を冠していればそれだけで『間違いなく美味い』と思えてしまうのは僕が単純だからなのだろうか?
 いや、そんな事はない。だって性行為のことも『本番』って言うし。

◇◇◇

 お店に到着して『さて、なにを注文するか』となった所で、メニューを見た僕と彼女は大いに悩むこととなった。と言うのも、僕も彼女もあまり食が太い訳では無いのだ。
 互いに1人分のもつ鍋と少しのサイドメニューがあれば十分にお腹は満たされる。

 しかし、おおやまにはとても魅力的なサイドメニューがいくつもあり、どれも食べてみたかった。
 それならばサイドメニューを個別で頼むよりコース料理を頼む方がお得なのだが、コース料理は受付人数2名から。

 果たして、僕と彼女の2人でコース料理を食べきれるだろうか?
 お昼ご飯を移動でほとんど食べていなかったので空腹度的にはだいぶ余裕があるが、食べきれないなら頼むべきではない……のだが。
 最終的には「こんな豪華な食事をするのは旅行中だけだから」を言い訳にしてコース料理を頼むことにした。
 ただ、それはそれとしてお家に帰ったら彼女には体重計に乗ってもらいたいとは思う。


『おおやま』コース

 まず最初に『おおやまサラダ』と呼ばれるサラダが出てきたのだが、これは僕の口にはあまり合わなかった。彼女は「美味しい」と言っていたので人によるのだろう。お豆腐が入っていることが彼女には好評だったようだ。
 尚、お通しの枝豆は普通に美味しい。


 続いて出てきたのは『馬ユッケ』、『柔らか牛すもつ』、『馬刺し三種盛り』の3品。

『馬ユッケ』は馬の細切り赤肉を特製のタレと卵で絡めて食べる。食感こそねっとりとした生っぽさを感じるが、味や匂いに生臭さはなく、ユッケ自体初挑戦だった彼女も美味しく食べていた。
 走らせても良く、擬人化しても良いのに食べても良いとは馬とは素晴らしい生き物だ。さすがはオス馬でも馬娘になれるだけの事はある。

 また、僕は『牛すもつ』と言う食べ物を寡聞にして知らなかったのだけれど、牛の直腸をスライス&ボイルした食べ物であるらしい。
 見た目は短い平麺のようだが、その上に沢山のネギとゴマを振りかけポン酢で味付けされている為、あっさりしている。
 全く臭みはないのに肉を食べている満足感も味わうことができるので、これは僕のオススメだ。

 馬刺し三種盛りはそれぞれ『極上大トロ』・『上赤身刺し』・『たてがみ』の三種類が盛り付けされていた、のだが。

「あ、これマグロのトロみたいで私、好き!」
「こっちは……イカだっ!?」

 これが馬刺しを食べた僕と彼女の感想なのだから、最早もはや馬ではないだろう。勿論、ウマかったけれども。


 その後に出された『牛すじ煮込み』は「時間が経つと固くなってしまうのでお早めに召し上がりください。」とのことだったので、他を置いて先に食べることにしたのだが、本当にこれが固くなるのか?と思えるほど柔らかく、醤油・砂糖・ニンニク・生姜等の様々な調味料がとても深みのある味わいと食べ応えを生み出してくれていた。
 一緒に盛り付けされていたゴボウ等のお野菜にも味が染みていて、とても美味しい。みーこは人参を僕に食べさせていたが。


 ここまでどれもハズレ無しであったが、いよいよ大本命の登場だ。
 もつ鍋は『みそ』、『しょうゆ』、『水炊き』の中から選べるのだが、僕も彼女ももつ鍋と言ったら『みそ』のイメージだったので、満場一致で『みそ』を選択。
 コースじゃなければ別々に2種類選べたのかなと思うとそれも惜しいところではあった。

「すごい、もつが口の中で溶ける……!」
「わかる! すごい美味しい……。」

 今まで僕が食べてきた『もつ』はどれも溶けはするけど、もにゅっとする部分が少なからず残っていたのだが、おおやまで食べた『もつ』はこれまで食べてきたどの『もつ』よりもじゅわりと溶けるのだ。
 これが本場か。『もつ』とはこれほどまでに美味しかったのか。最初に『もつ』を食べた人間は偉大だ。日本に生まれてよかった。

「この溶けるのが美味しいんだけど、でも溶けてしまうのが勿体ない……。」
「そう! それ私も思った!」

 味が染みていてそれが美味しくて沢山味わっていたいのに、じゅわりと溶けて無くなってしまうのだ。
 溶けるからこそ美味しいけれど、溶けてしまうから味わえなくなってしまう。こんな悲しいことってないだろう。


 どれも大満足な料理に僕と彼女はサラダ以外をほぼ完食まで食べてお腹いっぱいになってしまっていた。このあとに〆のちゃんぽんがあるらしいのだが、どう考えてもそこまでは食べきれない。

 〆の料理と言えばどれも美味しいと相場が決まっているので是非食べてみたくはあったのだけれど、せっかく持ってきて貰って残すのも申し訳がない。みーことも話して、これでお会計にすることにした。

「すみません、お会計をお願いします。」

 お店の人を呼ぶと、お店の人は困惑しているようだった。

「あの、こちら〆のちゃんぽんをまだお出ししておりませんが……。」

 知ってるよ。でも、そこまで食べきれないんだ。
 わざわざ尋ねてくれると言うことは他の人は〆までしっかりと食べきっているのだろうか。やるな、九州。

「もうお腹いっぱいで食べられなくて……。」
「そうでしたか。 それなら、代わりにアイスはいかがでしょう?」
「アイス?」

 そんなものコース料理に書いていなかったと思うのだが、アイスなら確かに食べられそうではある。
 お店の人がパラパラとメニューを捲ると、デザートのページに『九州しょうゆアイスクリーム』と書かれていた。

 しょうゆアイスとはあまり見ない組み合わせである。この時点で興味は津々だ。
 2人で1つなら食べられそうだったので持ってきて貰うと、それは確かに『醤油』で、しかも『アイス』なのだ。
 醤油の風味は間違いなくするのだが、デザートとして成り立つ絶妙なバランス。なるほど、これが和風アイスか。
 バニラアイス至上主義な僕でも十分に満足できる味だった。

「はぁ、美味しかった……初日から大満足だね。」
「うん、幸せ……。」

 金額と満足度はプライスレス、と言いたいところだけれど知りたい人もいると思うので2人分で諭吉さんが1人旅立つぐらいと思って頂ければ間違いない。
 一日目にして『来てよかった』と思える最高の晩御飯であった。


『おおやま』を出ると、食べ過ぎて少し重くなった体をのんびり動かしながらホテルへと歩いていく。
 外は更に寒さが増していたけれど、もつ鍋のおかげで体ポカポカ、キャリーケースが無くなり空いた手を彼女と結んだことで心もポカポカなのであまり気にならない。

 いや、それでも勿論寒いけど。なんなら僕から熱を奪いにくる彼女の手が一番冷たかったけど。
 たまに恥ずかしげも無く組んだ手をブンブン振り回したりもしていたが、久しぶりの再会なのだからこれぐらいのバカップルぶりは大目に見て貰いたい。

 そうそう、帰り道で飲み物を買うことを忘れてはいけない。ホテルに飲み物が置いてあるとは限らないからね。
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