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第二十四話 駒姫

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「素晴らしい国であるな! ここは!」

レオニダスが大笑いしながら北政所と話している。

「お気に入りいただき、光栄でございます。今後もこの地を納めていただいても構いません……ですが……」

レオニダスは微笑みを崩してはいないが、決意を感じさせるものに変化していく。

「戦があるのだな」

北政所は頷く。

「はい」

レオニダスはそれ以上は何も言わなかった。

この世界に転生した理由。

ーー次なる戦に完勝し、この者たちを冥土に送り届けねばならん。

石田三成、北政所、、、そして、豊臣秀吉。

彼らは皆、道半ばで倒れ悔いをこの世に残してきた。

北政所はレオニダスとスパルタ兵たちと別れ、京の屋敷に戻り、一息ついていた。

ーー一度でもいい。乱世を秀吉様の意志を受け継ぎ、皆で歩んできた道の正しさを証明したい。自分も秀吉様も晩年の汚名だけではないことを後世に遺したい。

三成はこの世への未練から何度も記憶が残っている状態で人生をやり直している。

北政所もまた他の人間に知られぬよう何度も転生していた。
彼女は豊臣秀吉が後の世で暴君として評価されているのを知り、そうならないように豊臣家を守ろうと徳川家康に加担した時もあった。
しかし、その全てで愛しい存在である秀吉の人格は後の人々により否定されてしまう。
天下を平定し、日本に残っていた土地制度などの問題を解決した。

ーー私とお猿さんがしてきたことが、全部無駄になる。

「母様、さきが可愛いんですよ」

駒姫が楽しそうに北政所に話しかけ、北政所は我に返る。

駒姫。

北政所は秀次と共に彼女が処刑されそうになった際、自ら京に赴き石田三成たちと共に駒姫を守った。

「私があなたを守ります」

北政所預かりとして駒姫は過ごしていたのであった。

彼女と北政所は相性が良く、

「母様」
と言って、新しく養女となったさきと共に楽しく過ごしていた。

「私がこのような美しい姫を?」

北政所は側近の法正孝直との婚姻を勧めた。

「また勝手に事を進める……最上義光殿は了承しましたか?」

法正は転生し、駒姫のような優しく、美しい姫と婚姻できるとは思っていなかった。
彼は顔を赤らめて、諦めるように促した。

「私が了承したのです。最上義光殿にも、勿論伝わっておりますよ。駒は嫌ですか?」

法正は悪党と呼ばれるほど、勝つための手段を選ばず、三国時代は裏切りを繰り返し、この世界でも加藤清正を罵り追放させた男。

しかし、彼の顔は端正であり美しい。
最上義光から預かっている大切な姫。
法正は丁重に対応した。
駒姫は一眼見た時から「この方と添い遂げたい」と思っていた。
彼女も嬉しくなり顔を赤らめている。

法正は一度、ため息をして頷く。

「わかりました。仕方ありませんね」

北政所は二人の顔を見て、自分と秀吉を思い出して微笑む。

ーー私も……

まだ前田利家が若かった。

「猿! ねね殿を泣かせると、ワシがおぬしの首を刎ねるからな!」

周囲にいた秀吉、まつ、秀長は笑い合っていた。

ーーあの頃を思い出しました。

そして、駒姫に笑顔で言う。

「駒、法正に泣かされたら言いなさい。私がこの人の首を刎ねます」

周囲に笑みが溢れる。

さらに、さきがやってきて言う。

「母様、あかんて。そんな品ないこと言ったら」

「そうですね」

周囲が明るくなる。

三人は楽しく幸せに暮らしていて、法正は優しい瞳で彼女たちを見つめていた。

ーーまったく……この世界で戦う理由ができてしまったようですね。

法正は駒姫を北政所の屋敷に預け、彼女との幸せのために加藤嘉明の旧領である伊予、淡路10万石の整備を開始していた。

ーー戦が終われば駒を呼び、ここで生涯を終えよう。

彼は思っていた。

ーー関ヶ原が終われば、魏呉蜀三国時代には得られなかった穏やかで幸せな未来が待っている。

最上義光も駒姫の手紙から幸せな結婚をしたと知り、嬉しく思っていた。

「北政所様から上杉方につくようにと」

配下の者が義光に報告する。

「相わかった! この戦が終われば、駒の盛大な式を挙げるぞ!」

上杉最上が四万人の兵を集め、徳川家康の到着を待っていた。











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