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第11章 ダンジョンフロア2階 オープン準備編

【閑話】ウィーンのいなくなったブラム城

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ウィーンが勘当されて、城から追い出されて早くも一か月が過ぎた。

「グリム兄さん、あの役立たずの下っ端の弟、ウィーンがいなくなってせいせいするね。」

「あーまったくだ。あいつは蝙蝠を使って血を集めることも、狼男達を使って荷運びすることも出来ないどうしようもないやつだったからな。」

「僕たちが外で汗水垂らして働いているのに、あいつはクーラーの、効いている城の一室でのんびりくらりと、事務仕事をして、それでいて給料は、僕らと同じでしたからね。腹が立って仕方なかったですけど、追い出された時のあいつの顔を見たら溜飲が下がりましたよ。」

「お前もか、グラム。まったくだ。どうして誰でも出来る仕事で、楽をして疲れてもいないあいつがあれだけもらえるのか?気に食わなくて仕方なかったが居なくなってせいせいするよ。」

「まったくです。読み書きなら、誰でも出来ることに対して、僕たちは栄誉ある吸血鬼一族に、しか出来ない栄誉ある仕事なんですからね。」

「何度もあいつには、この栄誉ある仕事をさせようとしたがあいつは本当に鈍臭かった。いくら吸血鬼や狼男達への扱い方や、血の取り方を、見て覚えろって、教えてやってんのに、まったく出来なかったからな。」

「そうですよね。グリム兄さん。ウィーンの鈍臭さには参りますよね。挙句の果てに本来使うべき狼男達と同じ作業を、しながら狼男達よりも仕事が出来なかったんですから。本当に呆れてしまいました。」

「だな、それで事務作業の方に回してたんだけど。」

「ええ、『こんな大量の宛名を一日でやれなんて無理ですよ』だもんな。出来なきゃ、出来るまでやれですよね。」

「まったくだ、初めの頃は、ウダウダ文句いいながら夜遅くまでやっていたが、最近なんか、午前中に『もう終わりました』で、何やってるか見てみると、プログラミングの本と表計算の本だったか、それを椅子に座ってのんびりと読んでいるんだからな。まったく腹が立つよ。」

「まー鈍臭いウィーンか出来たことですからね。誰でもあいつ以上に出来ますよ。元に今も問題なく仕事は回ってますし」

「ちょっと、グリムとグラム、くっちゃべっている暇があるならこっち手伝いなさい」

「母上一体どうしたのですか?今日の僕たちの仕事は終わりましたけど。」

「どうしたもこうしたものないわよ。今月中に送らないといけない請求書や、各月の経費の計算、売上の計算が全然出来てないのよ。これが出来ないどうお金が振り込まれないわよ。そうなったらうちは資金がショートして、破産よ。破産」

「はっ、母上何を言っているのですか?今月のブラッドワインの発送自体は先月よりも少ないんですよ。なら、先月より作業量は、少ないはずでしょう。それなら、つつがなく終わるはずです。事務担当員が責任持って終わらせる仕事でしょう。何故、わざわざ誰にでも出来る仕事を僕たちがやらなければいけないんですか?」

「そうです。母上、ウィーン一人がやっていて、それを追い出した後に事務員を当ててちゃんと補充したではないですか。鈍臭いやつを一人減らして、仕事の出来るやつをそこに当てたんですから、早く終わることそあれ、終わってないなんてバカな話しあるわけないでしょう」

「交代の事務の子なら、ここ2週間連日泊まり込みで作業してるわよ。今も目の下に隈を作って一心不乱に事務業務してるわ。」

「それだけやってるんなら、終わるはずですでしょう。まさか、交代要員がウィーン以上に使えないやつでしたか?」

「あの事務員の子が使えない子になるのなら、それ以下の作業しか出来ない私は、もっと使えないやつね。少なくとも代わりの事務員は、私の倍以上のスピードでやってるわよ。」

「はははっ、母上、本当にそのようなことを?」

「グリム、グラム、今はそんな話はどうだっていいのよ。問題なのは、請求書や各書類の計算が全然終わってないってことよ。とにかく人手が足りないよ。あなた達も手伝って頂戴。ウィーンが出来たんだから、当然、あの子以上に仕事の出来る二人なら、あっという間に出来るんでしょう。」

「母上、母上には吸血鬼としての矜持が、ないのですか?我々には、ウィーンのしたことなどあっという間に終わらせることは出来るでしょう。しかしですね。そんな誰にでも出来る仕事わざわざ僕たちが出ることはありませんよ。なぁグラム」

「ええ、そうですとも、グリム兄さん。母上、事務が足りなければ、人手を増やせば良いでしょう。」

「お黙りなさい。時間が無いのです。矜持があろうがなかろうが関係ありません。」

二人は…母親に首根っこを掴まれて強制的に事務室へと連行された。連れて行かれた場所だは、

「あなた、グリムとグラムを、連れてきました。ウィーンのやっていたことなら、あっという間に出来るそうですから、みなさん安心して下さい。不明な点はこの二人にお聞きください。あぶれている業務も二人にお渡し下さい。」

「「「助かりました。グリム様、グラム様ありがとうございます。」」」

事務所の中には執事やメイドも含め、15名ほどがそこにいた。

「グリム様、お客様への請求書の宛名書きと金額の明細書がほとんど出来ておりません。こちらをお願いします、」

どさっと、発注書の伝票がどさっと置かれる。ざっと換算してA4のコピー用紙の段ボール箱一箱分ほどある。

グリムは冷や汗が出てくる……

「グラム様、こちらもお手伝いお願いします。各商品の売上数量と金額の集計作業です。」

こちらも同量の明細書がどさっとグラムの前に置かれた。

「ちょっと待ってください。ウィーンがやってた時は、一人でやっていてこれを全部こなしていたというんですか?」

「ええ、そうでございます。もっともこれ全部を一日でやっていた訳ではなく、毎日少しずつパソコンで入力されておりました。」

と執事長が話し出した。

「なら、今回もそのようにしていたのだろう?」

「いえ、あいにく、ウィーン様の勘当が突然のため、引き継ぎも出来ていませんでしたので。手探りで業務を事務員がしておりましたが、客先から発注された品物に対して、各社への指示や発送作業に追われて、月末に行う業務のほとんどが手付かずとなっておりました。」

「グリム様、グラム様申し訳ありません。わたしが出来ないばっかりにお二方にまでご迷惑をおかけしてしまって。」

と事務員の吸血鬼の女性が平謝りする。

「フォルダやファイルが色々とあるのですが、正直どのようにして扱えば良いのかさっぱりでして、手作業で作業しておりました。でもこれで安心ですね。グリム様とグラム様が来てくれたらこんなボリュームのある作業でもすぐに終わってしまうんですね。どうか私めに事務作業のやり方をご指導下さい。」

みるものが見れば、わかるが、顧客シートに発注書のシートが一枚ずつあり、それが関数やマクロにて、細かくリンクされていた。

いくつかボタンがあった。発注書作成、請求書一括印刷など。しかし、手順が分からずにそのままクリックしても、エラーが発生し、処理が実行されない。

「ほら、このような調子なんですよ。わたしも前の職場で見たことがありますが前の事務の担当者はとても優秀な方のさだったようですね。合理化、効率化の極地の作業で、様々な業務が短時間で出来るようにされていたんだと思います。」

「「・・・・」」

「こんな素敵なシステムが、あったのに私には使い方が分からなくて、使いこなすことができませんでした。是非使い方をご教授下さい。来た日に教えてもらおうと思ったのですが最低限の業務だけでシステムに関するご説明がありませんでしので、助かりました、」

グリムとグラムは、事務室から飛び出した。

「ウィーンの馬鹿野郎!お前がいなくなったせいで俺たちがあんな業務することになったじゃ無いか」

「グリム兄さん、あれ1日でできそうですか?」

「出来る訳ないだろう。」

ウィーンのいなくなったブラム城では、連日、グリムとグラムの悲痛な叫び声が聞こえたという

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