【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ

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7章

第96話「涙の祝福」

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 王都の春祭りから数日――。
 砦にも王都にも、穏やかな日差しと新しい喜びが満ちていた。

 カイラスとノクティアが“想いを交わした”ことは、静かに、けれど確実に仲間たちの間に広がっていた。
 最初に気づいたのは、やっぱりエイミーだった。

    * * *

 「ノクティアさん、なんだか顔が明るいです!」
 「団長も、最近ずっと楽しそうだぞ」

 子どもたちの小さな目が、ふたりの背中を追いかける。
 レオナートは早速「これはお祝いしないとな」と声を上げ、砦中の皆も“何かが始まった”ことに心を躍らせていた。

 ――そしてある晩。
 食堂に「集まってください!」というエイミーの呼び声が響く。

    * * *

 いつもの質素な食堂が、その夜だけは花と色とりどりの布で飾られていた。
 大きなテーブルには、村から届いた新鮮な果物や手作りのパン、煮込み料理が並ぶ。

 「ようこそ、ふたりの祝福パーティへ!」

 エイミーが声を弾ませると、子どもたちが「ノクティア様、おめでとう!」「カイラス団長、幸せにしてね!」と口々に叫んだ。
 ノクティアは驚きで目を丸くし、カイラスは照れ隠しのように頬をかく。

 「こんな……皆でお祝いしてくれるなんて……」

 「それは、ノクティアさんと団長が、ずっと私たちを守ってくれたからです!」
 「お祝いするの、あたりまえだよ!」

 子どもたちの素直な笑顔に、ノクティアの胸が熱くなる。

    * * *

 乾杯の音頭はレオナートが務めた。

 「ノクティア、団長、これからも末永く幸せに。……俺たち家族一同、全力で見守るからな!」

 皆でカップを掲げ、賑やかな宴が始まった。
 砦の仲間、村の大人も子どもも、遠くから訪ねてきた友人たちも。
 みんなが“家族”のようにテーブルを囲む。

 「ノクティア様、こっちこっち!」
 「団長、一緒に写真撮ろう!」
 「お祝いの歌、歌ってもいい?」

 エイミーは、ノクティアの手を握りながらそっと囁く。

 「ノクティアさん、本当に嬉しいです。これでやっと――みんなが待っていた“幸せ”が始まるんですね」

 ノクティアは、こらえきれず涙をこぼした。

 「ありがとう、エイミー。私……本当に、幸せ」

 エイミーは涙をぬぐい、「私も!」と笑う。

    * * *

 宴は続く。
 レオナートが冗談を言い、子どもたちが手作りの花冠をふたりの頭に乗せる。

 「ノクティア様、お姫様みたい!」
 「団長も王子さま!」

 カイラスは恥ずかしそうに頭をかくが、ノクティアを見つめる目はどこまでも優しい。

 (こんな夜が、本当に来るなんて――)

 ノクティアの胸は、喜びと感謝でいっぱいだった。

    * * *

 パーティの終わり頃、リュゼルがそっとノクティアに歩み寄る。

 「ノクティア。……おめでとう」

 ノクティアは涙ぐみながら微笑む。

 「リュゼル……ありがとう」

 リュゼルは、どこか照れたような、でも優しいまなざしで彼女を見つめる。

 「俺も、君の幸せを本気で願っている。カイラスと一緒に、どんなときも――君の未来を応援している」

 ノクティアはリュゼルの手を取る。

 「リュゼルがいたから、私はここまで来られた。心から感謝してる」

 リュゼルはその手をそっと握り返し、「じゃあ――これからも友人として、頼ってくれ」と微笑む。

 カイラスもやってきて、ふたりにしっかり頭を下げる。

 「リュゼル、ありがとう。お前がいたから、ノクティアも俺も支えられたんだ」

 「……幸せになれよ。二人とも」

    * * *

 夜も更けてきた頃、砦の広場にみんなが集まる。

 子どもたちが「ノクティア様と団長のために」と焚き火を囲んで歌を歌う。
 春の星空の下、家族のような温かい輪ができあがる。

 ノクティアは、カイラスの隣で小さく呟いた。

 「こんなにたくさんの“家族”ができた。私は、幸せ者だね」

 カイラスは力強く頷き、そっとノクティアの手を握る。

 「これからもずっと――みんなで一緒に、生きていこう」

 ノクティアはあふれる涙をぬぐいながら、仲間たちの輪に溶け込んでいった。

 リュゼルは少し離れた場所から、静かに微笑みを浮かべていた。
 その横顔には、確かな“祝福”の光が宿っていた。

    * * *

 春の夜風がやさしく吹く。
 幸せと涙と、家族のような温もり。
 砦には“新しい物語”の始まりを告げる、優しい灯りがともっていた。
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