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「ねぇエレナ……貴方の婚約者のレオ様、私が貰ってもいいかしら?」
「え、どういうこと……?」
「言葉の通りだけれど……?」
突然の告白すぎて、理解しているはずなのに理解が追いつかなかった。
いいや、事態を飲み込めない。
事態を理解したくないというのが本音だろうか。
きっと瞬時に理解できたからこそ嫌悪感から拒絶しようとしたのかもしれない。
「何を考えてるの、ルメリア? 私たちのことを応援するって、婚約が決まったときも祝福してくれたじゃない……なのに、どうして」
「それはもちろん、親友の婚約なんだもの。祝福するに決まってるじゃない。でも、気が変わったの。何だか彼のこと欲しくなってきちゃって」
『欲しくなってきちゃって』って……。
所謂、略奪愛というものなのだろうか。
私にはその類の気持ちを経験したことがなく、よくはわからないけれど、したいとも思わない。
どんな理由であれ、略奪を認めるわけにはいかない。
「でも、そんなのってないよ。レオ様との婚約者は私ってもう決まっているのよ?」
「じゃあ、婚約破棄すればいいじゃない? アナタのような田舎の貧乏貴族がレオ様に相応しくないことくらい最初からわかってたでしょう? それを認めようとした私の心があまりに優しすぎたってところかしらね」
まるで、夢でもみているかのような錯覚にすら陥る。
目の前で今、起こっている状況が現実だと思うことの方が難しいのかもしれない。
ーー婚約破棄。
それを聞いた途端、かなりショックを受けた。
親友からこんなことを言われる日が来るとは思いもしなかった。
「そんなことできるわけないでしょ! 私は彼を愛している!」
気づいた時にはもう口走っていた。
「できるわよ。簡単よ。婚約を取り下げるだけなのよ? レオ様のような優良株は誰だって欲しがる。エレナが婚約を解消すれば、瞬く間にみんなの的。まぁ、元々レオ様はそういう立ち位置だったから初めに戻るだけよ。それにアナタの言い分だと婚約しているというだけでそこに愛はなさそうだけれど?」
そんなことはない。 断じてありえない。
でも言えなかった。いや、言いたくなかった。
二人の愛は、二人だけのもの。こんな発言をしてくる彼女に共有する義理はない。
私が彼にどんな想いでいるかなんて何も知らないくせに。
レオ様のことなら世界で、この森羅万象で誰よりも愛しているといっても過言ではないと言い切れる。
そして彼も私のことを強く愛してくれていると信じている。
絆はそう簡単には壊れないと。
「ルメリアは私のことをどう思っているの?」
それは率直に浮かんだ疑問だった。
彼女は綺麗な大きな眼を細めながら、
「何って、それは素敵な友人。まさに親友よ」
親友だからこそ、そんなことを言うのだろうか。
でも、だとしたら言い方というものがあるはずだ。それにこの態度、流石に、私も気分が悪い。
人間不信になりそうだ。
「ねぇ、ルメリア。もうこんなことをアナタから聞いたせいで今までの関係じゃいれなくなるかもしれないのよ?」
「それは悲しいわ……とても。でもいいわ。レオ様が手に入るのなら、アナタなんて別に要らないわ」
「それって、どういう……」
「どうもこうもないでしょ」
急にルメリアの態度が豹変し、私の瞳を睨みつける。
猛獣のようなその心の中まで突き刺すような眼光で私は体がすくむ。
「いい? エレナ。アナタのような使えないお荷物がレオ様と結婚だなんてまずありえないの……!全くもって似合わないし、不釣り合いよ! 身の程を弁えなさい。小さな田舎国の貴族風情が調子に乗らないことね!」
ルメリアに圧倒されると同時に、涙が溢れて、頬を伝って首元へとこぼれ落ちる。
「今までずっとずっとエレナ! アンタのことが嫌いで嫌いで憎くてしょうがなかった! 私が仲良くしてあげてたのは私のおもちゃにするためよ! アナタは周りからもあまり好かれてないものね? 親友だって私しかいないんでしょ? ねぇ……??」
と、嘲笑しながら、こちらを伺ってくる。
私は言葉も出なかった。浮かばなかった。
自分が何をどう思っているか、それすらもわからなかった。
ただただ、涙が止まらなくて、息が乱れて、どうしようもなかった。
「鬱陶しいし、面倒だし、明日には婚約破棄できるように私の方で手続きしておくから何も気にしなくて大丈夫よ。よかったわね、エレナ。こんな素敵な親友がいて」
あぁ……ずっと親友だと思っていた。
私がバカだったのだろうか。
唯一心を許せる友達だった。
初めから騙されていたのだろうか。
初めから憎まれていたのだろうか。
でも、何故だろうか。心は決まっている。
どこまで行っても、レオ様だけは渡さない。
そう強い想いがちゃんとあった。
レオ様は私にとって、家族よりも大切な存在。
ルメリアももちろん大切な人だったけれど、ルメリアよりは家族が大切。
結局、私もその程度にしか思ってなかったのだ。
冷たい人間は私の方かもしれないなと思いながら、大聖堂の中心で私を欺きながら目の前を去っていったルメリアの姿を見つめていた。
「婚約破棄なんて、絶対にさせないんだから……」
その日、彼女に復讐することを決意した。
「え、どういうこと……?」
「言葉の通りだけれど……?」
突然の告白すぎて、理解しているはずなのに理解が追いつかなかった。
いいや、事態を飲み込めない。
事態を理解したくないというのが本音だろうか。
きっと瞬時に理解できたからこそ嫌悪感から拒絶しようとしたのかもしれない。
「何を考えてるの、ルメリア? 私たちのことを応援するって、婚約が決まったときも祝福してくれたじゃない……なのに、どうして」
「それはもちろん、親友の婚約なんだもの。祝福するに決まってるじゃない。でも、気が変わったの。何だか彼のこと欲しくなってきちゃって」
『欲しくなってきちゃって』って……。
所謂、略奪愛というものなのだろうか。
私にはその類の気持ちを経験したことがなく、よくはわからないけれど、したいとも思わない。
どんな理由であれ、略奪を認めるわけにはいかない。
「でも、そんなのってないよ。レオ様との婚約者は私ってもう決まっているのよ?」
「じゃあ、婚約破棄すればいいじゃない? アナタのような田舎の貧乏貴族がレオ様に相応しくないことくらい最初からわかってたでしょう? それを認めようとした私の心があまりに優しすぎたってところかしらね」
まるで、夢でもみているかのような錯覚にすら陥る。
目の前で今、起こっている状況が現実だと思うことの方が難しいのかもしれない。
ーー婚約破棄。
それを聞いた途端、かなりショックを受けた。
親友からこんなことを言われる日が来るとは思いもしなかった。
「そんなことできるわけないでしょ! 私は彼を愛している!」
気づいた時にはもう口走っていた。
「できるわよ。簡単よ。婚約を取り下げるだけなのよ? レオ様のような優良株は誰だって欲しがる。エレナが婚約を解消すれば、瞬く間にみんなの的。まぁ、元々レオ様はそういう立ち位置だったから初めに戻るだけよ。それにアナタの言い分だと婚約しているというだけでそこに愛はなさそうだけれど?」
そんなことはない。 断じてありえない。
でも言えなかった。いや、言いたくなかった。
二人の愛は、二人だけのもの。こんな発言をしてくる彼女に共有する義理はない。
私が彼にどんな想いでいるかなんて何も知らないくせに。
レオ様のことなら世界で、この森羅万象で誰よりも愛しているといっても過言ではないと言い切れる。
そして彼も私のことを強く愛してくれていると信じている。
絆はそう簡単には壊れないと。
「ルメリアは私のことをどう思っているの?」
それは率直に浮かんだ疑問だった。
彼女は綺麗な大きな眼を細めながら、
「何って、それは素敵な友人。まさに親友よ」
親友だからこそ、そんなことを言うのだろうか。
でも、だとしたら言い方というものがあるはずだ。それにこの態度、流石に、私も気分が悪い。
人間不信になりそうだ。
「ねぇ、ルメリア。もうこんなことをアナタから聞いたせいで今までの関係じゃいれなくなるかもしれないのよ?」
「それは悲しいわ……とても。でもいいわ。レオ様が手に入るのなら、アナタなんて別に要らないわ」
「それって、どういう……」
「どうもこうもないでしょ」
急にルメリアの態度が豹変し、私の瞳を睨みつける。
猛獣のようなその心の中まで突き刺すような眼光で私は体がすくむ。
「いい? エレナ。アナタのような使えないお荷物がレオ様と結婚だなんてまずありえないの……!全くもって似合わないし、不釣り合いよ! 身の程を弁えなさい。小さな田舎国の貴族風情が調子に乗らないことね!」
ルメリアに圧倒されると同時に、涙が溢れて、頬を伝って首元へとこぼれ落ちる。
「今までずっとずっとエレナ! アンタのことが嫌いで嫌いで憎くてしょうがなかった! 私が仲良くしてあげてたのは私のおもちゃにするためよ! アナタは周りからもあまり好かれてないものね? 親友だって私しかいないんでしょ? ねぇ……??」
と、嘲笑しながら、こちらを伺ってくる。
私は言葉も出なかった。浮かばなかった。
自分が何をどう思っているか、それすらもわからなかった。
ただただ、涙が止まらなくて、息が乱れて、どうしようもなかった。
「鬱陶しいし、面倒だし、明日には婚約破棄できるように私の方で手続きしておくから何も気にしなくて大丈夫よ。よかったわね、エレナ。こんな素敵な親友がいて」
あぁ……ずっと親友だと思っていた。
私がバカだったのだろうか。
唯一心を許せる友達だった。
初めから騙されていたのだろうか。
初めから憎まれていたのだろうか。
でも、何故だろうか。心は決まっている。
どこまで行っても、レオ様だけは渡さない。
そう強い想いがちゃんとあった。
レオ様は私にとって、家族よりも大切な存在。
ルメリアももちろん大切な人だったけれど、ルメリアよりは家族が大切。
結局、私もその程度にしか思ってなかったのだ。
冷たい人間は私の方かもしれないなと思いながら、大聖堂の中心で私を欺きながら目の前を去っていったルメリアの姿を見つめていた。
「婚約破棄なんて、絶対にさせないんだから……」
その日、彼女に復讐することを決意した。
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