婚約者は私を捨て、妹を選びました。ですが、妹は婚約者を捨て、私を選びました。

青杉春香

文字の大きさ
2 / 3

2話

しおりを挟む
「ふぅ……」
一夜が明けようやく、一息つけた。
誰もいない自室で、ベッドの上に寝転がって天井を見つめる。
なんだか、すごく疲れた。
身体はいつもより重いし、頭はガンガンする。
きっと精神的な問題だろうけど、今までの私にとってアルタ様との婚約は夢のような話だったため、心の整理がついていなかったのかもしれない。
そう考えると、今回の一件でアルタ様への気持ちが薄れていっていることにも、説明がつく。
アルタ様は、確かに優しくて、頼り甲斐があって、かっこよくて、素敵だと思っていた。
でも、それは過去形であり、今のアルタ様を見た上で、もう一度婚約したいとは思えない。
まだ、アリシアの方がよっぽど彼と婚約する価値があると思えた。
「どうして、こんなことになってしまったのかしら」今の私は、悲観的な考えしかできない。
アリシアに嫉妬してしまいそうになる。
アリシアは、私と違って何でもできる子だ。
容姿だって優れている。
私なんかよりも、ずっと良いところばかりだ。
「お姉様、入ります」
ノックと共に、アリシアの声が聞こえてくる。
「……どうぞ」
「失礼します」
アリシアは、私の部屋に入ってくるなり、私の顔をまじまじと見てくる。
「なに?」
「いえ、お姉様のお顔色が優れなかったので、元気づけようとおもいまして」
「そ、そう……。ありがとね」
アリシアは、本当に優しい。

私の体調を心配してくれるなんて、そんな人この世にアリシア以外に存在するんだろうか。「ねえ、アリシア? 私とアルタ様の結婚についてどう思う?」
「そうですね……。正直に言いますとお似合いだとは思いません。ですが、それでも愛しているのでしょう?」
「うん……。愛している。そのはずなのに、今はもうわからないの。彼は私を愛してくれない。そんな人と婚約していたなんて、馬鹿みたいよね。婚約破棄されて当たり前だったのかな。こんなにつらい思いをしていたのなら、破棄された方がマシだったのかもしれない」
私は本音を吐露した。
すると、アリシアは少しだけ不機嫌な様子になって、私の言葉を否定する。
「そんなことはありません! お姉様はとても魅力的な女性でございます。私は、お姉様ほど素敵な女性は見たことがございません! お姉様以上に素晴らしい人はいません!あの男がいけないんです!! 許せません!」

「え?」

アリシアは私を否定するどころか、彼女自身が想いを寄せてるはずのアルタ様を罵倒した。 

「本当はお姉様にはことが終わるまで言うつもりはありませんでしたが、この際だからはっきり言っておきます。私はアルタ様など……あんなクズどうだっていいんです。ただお姉様を悲しませた罪を償わせたい。いわば復讐です。その一心で今は生活しております」
「あ、アリシア……。あなた何を言っているの?」
「すみません。少し取り乱しました。ですが、世界で一番大切なお姉様には
幸せになってもらわないと困ります。これは、私からのお願いです。お姉様は、私に遠慮せず自由に生きてください」
アリシアは、アルタ様を罵ったあと、今度は私に自由になれと言う。

その瞬間涙が溢れ出て、止まらなくなってしまう。「うっ……ぐす……あり……がとう」
「お姉様……!? 大丈夫ですか!」
アリシアは、私が泣き出してしまったことに驚いていた。
「ごめんなさい。嬉しくて泣いてしまったの。私のために怒ってくれたのもそうだけど、何より私を想ってくれていたことが嬉しくて」
「お姉様……私はお姉様のためならば、命を捨てることも厭いません。お姉様は、私に生きる意味を与えてくれたのですから」
「アリシア……そんなことだけは言わないで。だけどありがとう」

「お姉様、どうかこれからも末永くよろしくお願い致しますね」
「ええ、こちらこそ……」
こうして、私はアリシアのおかげで、前を向けるようになった。
もちろん、完全にアルタ様への気持ちがなくなったわけではない。
けれど、アリシアの優しさに触れられただけで、今はまだいいと思える。

この日を境に、私のアルタ様への恋慕は完全に消え去った。

それから1ヶ月後、ついに運命の時が訪れた。
「アリシアとの婚約を結ぶことをここに宣言する!!」
アルタ様は、高々と宣言した。
その隣にいるのは、私の大好きな妹であるアリシアだ。
「はい」
アリシアは、返事をするなり私の元へ駆け寄ってきて、手を握ってくる。

「ご安心くださいお姉様。あとは私にお任せください。最高の一日にして見せます」

「アリシア……。あなたって子はどうしてそこまで私に尽くしてくれるの?」

「決まっています。私は、お姉様の妹なんですから」
アリシアは、当然のことのように言った。

私は、アリシアの手を強く握り返した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]裏切りの果てに……

青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。 彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。 穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。 だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。 「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。 でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。 だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ? 君に好意がなくても、義務でそうするんだ」 その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。 レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。 だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。 日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。 「……カイル、助けて……」 そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり…… 今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるルーティアは、ある時夫の不貞を知ることになった。 彼はルーティアの妹に誘惑されて関係を持っていたのだ。 さらに夫は、ルーティアの身の周りで起きたある事件に関わっていた。それを知ったルーティアは、真実を白日の下に晒して夫を裁くことを決意する。 結果として、ルーティアは夫と離婚することになった。 彼は罪を裁かれるのを恐れて逃げ出したが、それでもなんとかルーティアは平和な暮らしを手に入れることができていた。 しかしある時、夫は帰ってきた。ルーティアに愛を囁き、やり直そうという夫に対して彼女は告げる。 「妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?」

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

何か、勘違いしてません?

シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。 マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。 それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。 しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく… ※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

【完結】よりを戻したいですって?  ごめんなさい、そんなつもりはありません

ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。 かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、 卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。 ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。 後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。 「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」 アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。

「お姉様の味方なんて誰もいないのよ」とよく言われますが、どうやらそうでもなさそうです

越智屋ノマ
恋愛
王太子ダンテに盛大な誕生日の席で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢イヴ。 彼の隣には、妹ラーラの姿――。 幼い頃から家族に疎まれながらも、王太子妃となるべく努力してきたイヴにとって、それは想定外の屈辱だった。 だがその瞬間、国王クラディウスが立ち上がる。 「ならば仕方あるまい。婚約破棄を認めよう。そして――」 その一声が、ダンテのすべてをひっくり返す。 ※ふんわり設定。ハッピーエンドです。

処理中です...