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夢見る新妻
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そばにあったティッシュで汚れた手と陰部を拭き取ると、直生はさらにその先の未来を想像した。
──子どもは、どんな子が生まれるんだろう?
直生は、まだ見ぬ子どものことについて考えた。
結婚したら、たくさんの子どもを生みたい。
直生は10代の頃から、そんな夢を見ていた。
直生の兄弟は、10歳離れた弟がひとりだけ。
弟は可愛かったが、10歳もの歳の差があると、どうしても距離ができてしまう。
そんなわけだから、児童の頃は寂しい思いをして育った。
だから、自分が家庭を持ったときには、たくさんの家族を持ち、にぎやかな家庭にしたいと考えていていたのだ。
──最低でも、3人は欲しいな。それで…
生まれた子が男の子だったら、女の子だったら、アルファだったら、オメガだったら、自分に似たら、そして、総治郎に似たら…
──総治郎さん、50代であれだけカッコいいから、若い頃はきっと、もっとステキだったんだろうなあ
それでもやっぱり、直生は今の総治郎がいい。
年相応の、あの落ち着いた物腰の男が、夜はどんな姿を見せるのか。
色っぽい妄想に耽りながら、直生は眠りについた。
そうして迎えた翌朝。
「必要なものや欲しいものは、全部これで買いなさい。現金が必要になったときは、私に直接言ってくれ」
総治郎がクレジットカードを渡した。
おそらく、新しく発行されたものであろう。
結婚してから、初めて交わした会話がこれだった。
「はい…」
クレジットカードを受け取ると、直生は次の言葉を待った。
「今日は都合が悪くて来ていないけど、家のことは、いつも世話になってる家事代行の中野さんに頼むといい。
電話の横に彼女が所属してる家事代行サービス会社の電話番号が貼ってあるから、家のことで困ったことがあったら、来て欲しい日時を言って呼びなさい。
優秀な人だから、きっと頼りになるぞ」
「はい」
この旨なら、中野本人から聞いた。
今のところ、家のことで困ったことは特にない。
料亭の息子なだけあって、直生は料理もできるし、洗濯や掃除だって使用人から教わっている。
だから、中野を呼ぶのは家事雑用を任せるためというより、総治郎のことについて聞き出すためだ。
それから総治郎は、ほかに何か聞きたいことはないかと尋ねてきた。
この家の勝手については事前に中野に聞いていたため、特に聞くことはなかった。
直生が「ありません」と答えると、
「今日は何時ごろに帰られるんですか?」
「あー…今日は泊まりがけの仕事だから、帰ることはできない」
総治郎は直生の顔など、ほとんど見ないで答えた。
「…そうなんですね」
「うん、だから、今日一日は私に構わず好きに過ごしなさい。この辺りはオシャレで美味い店がたくさんあるし、映画館やフィットネスジムやブティックなんかもたくさんあるから、行ってみるといい」
言っているうちに、総治郎は出て行く準備が整いつつあった。
「わかりました。いってらっしゃい、総治郎さん」
「ああ、いってくる」
そう言うと、総治郎は家を出た。
総治郎の背中を見送った後、玄関ドアがバタンと閉まり、直生はリビングに引っ込んだ。
──今日は帰らないということは、初めては明日の夜になるのかな?
このときはそう思っていたが、総治郎が帰る日はなかなかやって来ない。
そうこうしているうちに10日経った。
──子どもは、どんな子が生まれるんだろう?
直生は、まだ見ぬ子どものことについて考えた。
結婚したら、たくさんの子どもを生みたい。
直生は10代の頃から、そんな夢を見ていた。
直生の兄弟は、10歳離れた弟がひとりだけ。
弟は可愛かったが、10歳もの歳の差があると、どうしても距離ができてしまう。
そんなわけだから、児童の頃は寂しい思いをして育った。
だから、自分が家庭を持ったときには、たくさんの家族を持ち、にぎやかな家庭にしたいと考えていていたのだ。
──最低でも、3人は欲しいな。それで…
生まれた子が男の子だったら、女の子だったら、アルファだったら、オメガだったら、自分に似たら、そして、総治郎に似たら…
──総治郎さん、50代であれだけカッコいいから、若い頃はきっと、もっとステキだったんだろうなあ
それでもやっぱり、直生は今の総治郎がいい。
年相応の、あの落ち着いた物腰の男が、夜はどんな姿を見せるのか。
色っぽい妄想に耽りながら、直生は眠りについた。
そうして迎えた翌朝。
「必要なものや欲しいものは、全部これで買いなさい。現金が必要になったときは、私に直接言ってくれ」
総治郎がクレジットカードを渡した。
おそらく、新しく発行されたものであろう。
結婚してから、初めて交わした会話がこれだった。
「はい…」
クレジットカードを受け取ると、直生は次の言葉を待った。
「今日は都合が悪くて来ていないけど、家のことは、いつも世話になってる家事代行の中野さんに頼むといい。
電話の横に彼女が所属してる家事代行サービス会社の電話番号が貼ってあるから、家のことで困ったことがあったら、来て欲しい日時を言って呼びなさい。
優秀な人だから、きっと頼りになるぞ」
「はい」
この旨なら、中野本人から聞いた。
今のところ、家のことで困ったことは特にない。
料亭の息子なだけあって、直生は料理もできるし、洗濯や掃除だって使用人から教わっている。
だから、中野を呼ぶのは家事雑用を任せるためというより、総治郎のことについて聞き出すためだ。
それから総治郎は、ほかに何か聞きたいことはないかと尋ねてきた。
この家の勝手については事前に中野に聞いていたため、特に聞くことはなかった。
直生が「ありません」と答えると、
「今日は何時ごろに帰られるんですか?」
「あー…今日は泊まりがけの仕事だから、帰ることはできない」
総治郎は直生の顔など、ほとんど見ないで答えた。
「…そうなんですね」
「うん、だから、今日一日は私に構わず好きに過ごしなさい。この辺りはオシャレで美味い店がたくさんあるし、映画館やフィットネスジムやブティックなんかもたくさんあるから、行ってみるといい」
言っているうちに、総治郎は出て行く準備が整いつつあった。
「わかりました。いってらっしゃい、総治郎さん」
「ああ、いってくる」
そう言うと、総治郎は家を出た。
総治郎の背中を見送った後、玄関ドアがバタンと閉まり、直生はリビングに引っ込んだ。
──今日は帰らないということは、初めては明日の夜になるのかな?
このときはそう思っていたが、総治郎が帰る日はなかなかやって来ない。
そうこうしているうちに10日経った。
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