婚約破棄は綿密に行うもの

若目

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富豪商人婚約破棄計画

計画

「侯爵夫人ともなれば、相当プライドが高いと思うのですがねえ。「わたくしはあんなバカ娘に負けたのか!」なんてことになりませんか?」
ジュスティーヌは疑問を口にした。

「ああ、若さだけが取り柄のバカな令嬢に負けたとあっては、向こうのプライドはズタズタだろう。相当傷つくと思う。しかし、私がバカなフリをして、バカな令嬢に引っかかった。結果すぐに別れた。ということなら、向こうの面目も立つはずだ。「ざまあみろ」と思って気分は良くなるだろうし、そうなれば君もなんらかの割りを食らわずに済む。向こうが要求すれば、金も払うつもりでいる」

「若さだけが取り柄…」
リッシュ氏の見解は的を得ている気がするし、名案であるとジュスティーヌは思う。
しかし、少しばかり引っかかるものがあって、図らずもそれが口から出てしまった。

「私は、きみを「若さだけが取り柄」などとは思っていないよ」
リッシュ氏が、まるで取り繕うように言った。
迂闊なことを言ってしまって、ジュスティーヌが気を悪くしたと思ったのかもしれない。

「アタシはもう30でございますよ。若くないのです」
「はっ⁈」
リッシュ氏が、あからさまに驚いた。
今の今まで、ずっと穏やかでいたリッシュ氏がいきなり大きな声を出したから、逆にジュスティーヌの方が驚いた。

「客商売だし、店の気風が気風だから若作りしてるけど、もう三十路なのです」
「そうか…うん、大きな声を出してすまなかったな。勝手に、10代か20代だろうと思っていたから…」
リッシュ氏は、まだ先ほどの驚愕が抜けていないらしい。
懸命に言葉を繋ぐが、完全にしどろもどろだ。

──マルグリットお嬢さまやエレオノールさんもそうだけど、なぜみんなしてアタシのトシを知ると驚くんだろう?

ジュスティーヌは頭に疑問符を浮かべつつ、話を続けた。

「あくまで、非があるのはこちらと思わせておくのでございますね?」
おそらく、リッシュ氏は結婚などまだ考えられない、けれど相手の反感を買って揉めるのは避けたい。
概ねそんなところであろう、とジュスティーヌは踏んでいた。

「ああ、理由はどうあれ、婚約破棄されるのは、女性にとってはなかなか堪えるだろうからね。そこからトラブルになって、屋敷の人間を巻き込むなんてことはできない。なるだけ穏便に済ませたいんだ」
ジュスティーヌの推理は当たっていた。

「無理もないことです。あなたのに何かあってはなりませんからね。そんなに大事にされて、その方はさぞかし幸福でございましょうなあ。いったいどんな方なのです?」

今さらながらジュスティーヌは、リッシュ氏の恋人のことが知りたくなった。
「そこにいますよ」
リッシュ氏がふふ、と軽く吹き出すと、ジュスティーヌの背後を指差した。
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