婚約破棄は綿密に行うもの

若目

文字の大きさ
45 / 45
富豪商人婚約破棄計画

長く気まずい帰り道

契約の内容自体は別に構わない。
謝礼を貰えるなら、ジュスティーヌはいくらでも動く。

しかし、リッシュ夫人のこの頼み事とは名ばかりの罠に引っかかった自分が、どうにも歯がゆい。
そんなジュスティーヌに、リッシュ夫人は変わらぬ様子で優雅に微笑みかける。

「今日はわざわざ来てくれてありがとう。そのお菓子、ぜんぶ持って帰っていいわよ」

──見事なまでの厄介払いだなあ…

目的は果たしたのだから、相手を帰すのは当然であろう。
冷酷にも思える反面、この切り替えの早さは見習いたい気持ちにもなった。

──前のダンナのところで散々揉まれてきたのだろうなあ……そうじゃなきゃ、こんな算段は到底思いつくまい………

ジュスティーヌは腹を立てるどころか、これまでのリッシュ夫人の軌跡を考えて感心さえしていた。


「へえ…ありがとうございます」
お言葉に甘えて、ジュスティーヌは出されたお菓子をすべて持って帰ることにした。
さらにリッシュ夫人がヴァイオレットに命じて、厚意でほかにもお菓子や高価な茶葉、パンなんかを追加して持たせてくれた。

庶民特有のさもしい部分も持ち合わせているジュスティーヌなので、普段なら喜んで受け取るのだけど、今回ばかりはそれらを不要のお荷物のように感じられた。




──────────────────────



そんなわけで、リッシュ邸からの帰り道はかなり遠く感じられ、足取りもとてつもなく重かった。
どうしたわけかわからないが、リッシュ夫人が持たせてくれたお菓子や茶葉やパンは、いつだったかジュリエット嬢がくれたドレスよりはるかに重く感じられた。


それこそ、持って帰ったお菓子や茶葉をジャン・ジャックとガブリエル、そして勤め先の居酒屋の店主にも分けてやったところ、大いに感謝されたが、心の引っかかりはしばらく居残り続けた。

──ろくでもないもん持って帰っちまったなあ……

そんなジュスティーヌのため息なんてつゆ知らず、ガブリエルとジャン・ジャックと店主は、高価なお菓子や紅茶をありがたく堪能していた。
感想 14

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(14件)

ゴン太郎
2022.02.10 ゴン太郎
ネタバレ含む
2022.02.10 若目

感想、読了ありがとうございます!

解除
penpen
2021.10.10 penpen
ネタバレ含む
2021.10.10 若目

残念ながらそこまではまだ考えておりません(笑)

解除
penpen
2021.10.09 penpen
ネタバレ含む
2021.10.09 若目

マクシミリアンさん、ちょっと困ったさんです

解除

あなたにおすすめの小説

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? 2021/7/18 HOTランキング1位 ありがとうございます。 2021/7/20 総合ランキング1位 ありがとうございます

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

貧乏令嬢はお断りらしいので、豪商の愛人とよろしくやってください

今川幸乃
恋愛
貧乏令嬢のリッタ・アストリーにはバート・オレットという婚約者がいた。 しかしある日突然、バートは「こんな貧乏な家は我慢できない!」と一方的に婚約破棄を宣言する。 その裏には彼の領内の豪商シーモア商会と、そこの娘レベッカの姿があった。 どうやら彼はすでにレベッカと出来ていたと悟ったリッタは婚約破棄を受け入れる。 そしてバートはレベッカの言うがままに、彼女が「絶対儲かる」という先物投資に家財をつぎ込むが…… 一方のリッタはひょんなことから幼いころの知り合いであったクリフトンと再会する。 当時はただの子供だと思っていたクリフトンは実は大貴族の跡取りだった。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。