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2章 あなたと共に過ごす日々
41 分岐点・1
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雅がアパートに戻ってきたのは、それから3日後のことだった。
孝幸さんの来訪以来、私と雅が連絡を取りあうことはなかったから、その間お互いが何をしていたかは知らない。
「……ずっと帰ってこれなくて、ごめん。スマホ取り上げられた上に部屋に軟禁状態で……」
私は心ここにあらずの状態でぼんやりと過ごしていたけれど、雅はと言えば、孝幸さんに強硬手段に出られていたようだ。
あの人は、そんなに私と雅を別れさせたいのか……。
そう考えることはショックだったけど、今更そんな話を聞いた所で大して驚かなかった。
動じない、浮かない表情の私を見て、雅は何となく状況を察したようだった。
「もしかして……会っちゃった? 来たのは親父が直接?」
その問いに小さく頷く。
雅は私を責める風もなく、頭を垂れて「そう。どうりで素直に解放してくれた訳だ……」と呟いた。
いつものようにリビングに並んで座る。
改めて、会いたくて堪らなかった雅の横顔をじっと見つめた。
私の中の雅のイメージは、いつも元気で笑っている、無邪気で可愛い人だったのに。
一週間とちょっとぶりの雅は、なんとなく痩せたと言うか……やつれた気がする。
ツンツンした髪は撫でつけられて大人しくなっているし、憂いを帯びた表情が相まって大人びて見える。
この短い期間に、桐羽さんや孝幸さんのことで悩んだり苦しんだりした筈だから、無理もないのかもしれない。
「どこまで聞いたのかわからないけど……。家族のこと、ずっと話さなくてごめん。あんな父親だから……会っても、多分……」
私との交際を反対されて、一緒にいる期間が短くなっただけだったのかな。
話してくれれば良かったのに、とも思ったけど、だからと言って、今と何か結果が変わったのかはわからない。
私が歓迎されていないことを雅から言われても傷ついたと思うし、ただでさえ自分に自信がなかった私が、これ以上余計なことを考えないよう、雅は雅で気を使っていたのかもしれない。
「親父は美亜に……失礼なこと、たくさん言った……でしょ?」
「……まぁ。でも、大体は本当のことだったし」
探りを入れながら申し訳なさそうに尋ねてくる雅に、私は淡々と答えていた。
思ったほど傷ついていない自分に、自分でも驚いている。
少し前の私なら、母や自分の生い立ちをアレコレ言われるのは確実に地雷だった。
ショックで立ち直れなかったかもしれないのに、今の私には些細なことのように思える。
自分でどうにもできない過去のことを、あれこれ悩んで摩耗したって仕方がない。
開き直った、に近いのかもしれない。
それよりも今は、目の前にいる恋人の本心の方がずっと重要で、気がかりだった。
「雅は会社を継ぐんでしょ?」
「継がないよ!」
私の問いかけに、雅は間髪いれずに答えを返した。
「継がないよ。あんな横暴なやり方で勝手に進められて『ハイ、そうですか』なんて言えないよ。そんなんだから兄ちゃんにも逃げられるんだ」
「お兄さん、どうしたの?」
「彼女と駆け落ちしたんだって。気持ちわかるよ。全て意のままに動かされて……恋愛だって自由にできないなんて。時代錯誤も良い所だよ……」
「…………」
「ああいう頭の固い人間には、こういう手段で抵抗の意思を示さないと、ホント駄目だと思う……」
こういう、っていうのは駆け落ちのことを指しているんだろうか。
「そう……なのかな」
曖昧に返事をする。
私には、それが正解なのかわからなかった。
「だから俺も逃げちゃおうかと思って」
「え?」
「軟禁されている間、就職とか住居探すのに、信頼できそうなツテがないかずっと考えていたんだよね。大学中退するのは痛いけど、そのぐらいの覚悟がないと一生あの人からは逃げ切れないと思うし」
「逃げる? なんで?」
「え……、なんでって……」
雅から聞く答えは、私が想像していたこととはかけ離れたものだった。
後先考えず、私は心に湧き上がった思いをそのまま口にする。
「雅から見たらこれは千載一遇のチャンスじゃない。ずっとお兄さんにしか興味がなかったお父さんが、やっと雅に注目しているんでしょ?」
「でも、こんな形で、だよ!?」
「それでも……ここで逃げたら、雅はお兄さんと同じかそれ以下になる。お兄さんの上になんて絶対行けない」
私の言葉に、雅が露骨にムッとしたのがわかった。
「なんで美亜にそんなこと言われなきゃならないの?」
「だって……」
何も知らなかった頃なら、何も言わなかったかもしれない。
でももう知ってしまった。
雅が心の底では、ずっとリリーバリーで働きたいと思っていたことを知ってしまった。
あんなにたくさんの本を読んで勉強して、毎日毎日、会社の動向を追い続けてきた癖に。それは本当に本心なの?
雅にとってきっとリリーバリーは人生で、桐羽さんの形見で、絶対大切な存在の筈なのだ。
よく考えて欲しかった。
取り返しのつかない行動をとって、みすみすチャンスを手離して、雅は本当に後悔しないんだろうか。
桐羽さんだってそう。
雅の気持ちを知っていた。
雅が孝幸さんと仲よく会社を盛り立てていくことを願っていた筈だ。
今までずっとわからなかった。
私は雅の人生にどこまで踏み込んでいいのか。
だけどやっぱり知るべきだったのだと思う。
知れて良かった、と。こんな形になってしまったけど、それでもそう思う。
大好きな人の将来を、一緒に考えて何が悪い。
雅の気持ちは明白なのに、遠慮する必要なんてあるだろうか。
「雅はリリーバリーで働くことがずっと夢だったんでしょう!?」
「そんなこと俺は美亜にひと言でも言った?」
「言わなくてもわかるよ!」
「なんでそんなこと言うの? ばーちゃんとか親父に何か吹き込まれたの?」
認めようとしない、頑なな雅に苛々する。
あぁ、やっぱり私、雅に相談して欲しかった。
私が一番、雅が心を許せる存在でありたかった。
「私にぐらい、そろそろ本音を言ったら? 会社継ぎたいって思ってたこと! いっそ全部教えてよ!」
「嫌だよ」
「なんでっ……!」
「美亜のことが好きだからだよ!」
シン……と静まり返った部屋に、雅の声が凛と通る。
真っ直ぐ私を見つめている雅は、私と同じぐらい怒っていた。
孝幸さんの来訪以来、私と雅が連絡を取りあうことはなかったから、その間お互いが何をしていたかは知らない。
「……ずっと帰ってこれなくて、ごめん。スマホ取り上げられた上に部屋に軟禁状態で……」
私は心ここにあらずの状態でぼんやりと過ごしていたけれど、雅はと言えば、孝幸さんに強硬手段に出られていたようだ。
あの人は、そんなに私と雅を別れさせたいのか……。
そう考えることはショックだったけど、今更そんな話を聞いた所で大して驚かなかった。
動じない、浮かない表情の私を見て、雅は何となく状況を察したようだった。
「もしかして……会っちゃった? 来たのは親父が直接?」
その問いに小さく頷く。
雅は私を責める風もなく、頭を垂れて「そう。どうりで素直に解放してくれた訳だ……」と呟いた。
いつものようにリビングに並んで座る。
改めて、会いたくて堪らなかった雅の横顔をじっと見つめた。
私の中の雅のイメージは、いつも元気で笑っている、無邪気で可愛い人だったのに。
一週間とちょっとぶりの雅は、なんとなく痩せたと言うか……やつれた気がする。
ツンツンした髪は撫でつけられて大人しくなっているし、憂いを帯びた表情が相まって大人びて見える。
この短い期間に、桐羽さんや孝幸さんのことで悩んだり苦しんだりした筈だから、無理もないのかもしれない。
「どこまで聞いたのかわからないけど……。家族のこと、ずっと話さなくてごめん。あんな父親だから……会っても、多分……」
私との交際を反対されて、一緒にいる期間が短くなっただけだったのかな。
話してくれれば良かったのに、とも思ったけど、だからと言って、今と何か結果が変わったのかはわからない。
私が歓迎されていないことを雅から言われても傷ついたと思うし、ただでさえ自分に自信がなかった私が、これ以上余計なことを考えないよう、雅は雅で気を使っていたのかもしれない。
「親父は美亜に……失礼なこと、たくさん言った……でしょ?」
「……まぁ。でも、大体は本当のことだったし」
探りを入れながら申し訳なさそうに尋ねてくる雅に、私は淡々と答えていた。
思ったほど傷ついていない自分に、自分でも驚いている。
少し前の私なら、母や自分の生い立ちをアレコレ言われるのは確実に地雷だった。
ショックで立ち直れなかったかもしれないのに、今の私には些細なことのように思える。
自分でどうにもできない過去のことを、あれこれ悩んで摩耗したって仕方がない。
開き直った、に近いのかもしれない。
それよりも今は、目の前にいる恋人の本心の方がずっと重要で、気がかりだった。
「雅は会社を継ぐんでしょ?」
「継がないよ!」
私の問いかけに、雅は間髪いれずに答えを返した。
「継がないよ。あんな横暴なやり方で勝手に進められて『ハイ、そうですか』なんて言えないよ。そんなんだから兄ちゃんにも逃げられるんだ」
「お兄さん、どうしたの?」
「彼女と駆け落ちしたんだって。気持ちわかるよ。全て意のままに動かされて……恋愛だって自由にできないなんて。時代錯誤も良い所だよ……」
「…………」
「ああいう頭の固い人間には、こういう手段で抵抗の意思を示さないと、ホント駄目だと思う……」
こういう、っていうのは駆け落ちのことを指しているんだろうか。
「そう……なのかな」
曖昧に返事をする。
私には、それが正解なのかわからなかった。
「だから俺も逃げちゃおうかと思って」
「え?」
「軟禁されている間、就職とか住居探すのに、信頼できそうなツテがないかずっと考えていたんだよね。大学中退するのは痛いけど、そのぐらいの覚悟がないと一生あの人からは逃げ切れないと思うし」
「逃げる? なんで?」
「え……、なんでって……」
雅から聞く答えは、私が想像していたこととはかけ離れたものだった。
後先考えず、私は心に湧き上がった思いをそのまま口にする。
「雅から見たらこれは千載一遇のチャンスじゃない。ずっとお兄さんにしか興味がなかったお父さんが、やっと雅に注目しているんでしょ?」
「でも、こんな形で、だよ!?」
「それでも……ここで逃げたら、雅はお兄さんと同じかそれ以下になる。お兄さんの上になんて絶対行けない」
私の言葉に、雅が露骨にムッとしたのがわかった。
「なんで美亜にそんなこと言われなきゃならないの?」
「だって……」
何も知らなかった頃なら、何も言わなかったかもしれない。
でももう知ってしまった。
雅が心の底では、ずっとリリーバリーで働きたいと思っていたことを知ってしまった。
あんなにたくさんの本を読んで勉強して、毎日毎日、会社の動向を追い続けてきた癖に。それは本当に本心なの?
雅にとってきっとリリーバリーは人生で、桐羽さんの形見で、絶対大切な存在の筈なのだ。
よく考えて欲しかった。
取り返しのつかない行動をとって、みすみすチャンスを手離して、雅は本当に後悔しないんだろうか。
桐羽さんだってそう。
雅の気持ちを知っていた。
雅が孝幸さんと仲よく会社を盛り立てていくことを願っていた筈だ。
今までずっとわからなかった。
私は雅の人生にどこまで踏み込んでいいのか。
だけどやっぱり知るべきだったのだと思う。
知れて良かった、と。こんな形になってしまったけど、それでもそう思う。
大好きな人の将来を、一緒に考えて何が悪い。
雅の気持ちは明白なのに、遠慮する必要なんてあるだろうか。
「雅はリリーバリーで働くことがずっと夢だったんでしょう!?」
「そんなこと俺は美亜にひと言でも言った?」
「言わなくてもわかるよ!」
「なんでそんなこと言うの? ばーちゃんとか親父に何か吹き込まれたの?」
認めようとしない、頑なな雅に苛々する。
あぁ、やっぱり私、雅に相談して欲しかった。
私が一番、雅が心を許せる存在でありたかった。
「私にぐらい、そろそろ本音を言ったら? 会社継ぎたいって思ってたこと! いっそ全部教えてよ!」
「嫌だよ」
「なんでっ……!」
「美亜のことが好きだからだよ!」
シン……と静まり返った部屋に、雅の声が凛と通る。
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