異世界転生からの逃亡

トエコ

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幼少期

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前話までのあらすじ

俺が死ぬという事が分かった







いやいやいやいや。絶対死なない!絶対死なない!!!

異世界転生に折れそうもない死亡フラグ。神様俺は何かしたのでしょうか。



でも最近よくこういった話見るよね!死亡フラグをたたき折るね!お話をね!

でも本当大概、そういった話は多い。

性悪お嬢様に転生した主人公が死亡フラグたたき割る話。よく見るよく見る。SNSの広告で。

それだそれ。俺も叩き割ればいいじゃないの?死亡フラグってやつを!!だんだん前向きになってきた。



まず死なないためには、死ぬまでのルートをよく理解しそれに合わせて対処するべきだ。

って異世界転生小説の主人公が言ってた。俺よく見てた。

俺も対応策を考えよう、とそこら辺にあったペンをとる。



まず、俺ことアウルは殆どの攻略対象のルートにわざわざ赴き、噛まれに行く。そこまではわかった。自分の身体ながら悪役の仕事しているなって思う。偉い。

攻略対象は五人?だったか、アーサー王子に、俺が引き取られた先の義兄、学校の生徒会長、あとなんかちゃらちゃらしてたやつと、よその国の王子。

最初は覚えてたけどあとふわってしてる。ちゃんと見ておけばよかったと後悔するがもう遅い。そもそも、異世界転生を本当にしてしまうなんて思わないだろう。それがまさか妹がしてた乙女ゲームだなんて誰も思わない。



大体の話はアニメ、妹がしていたゲームの端々しか見てなかったのだが、アニメでは全攻略対象のルートの触りがあっただけで細かなところまでは知らなかった。そもそも、アーサー王子と引き取られた先の兄の幼少期、学生時代の話しか知らない。



両親を亡くした俺は、ある貴族に引き取られ王子の側仕えもとい、身代わりとなるため育てられる。

身代わりになる運命と知らないまま、引き取られた先の家族への感謝と、俺は王子に仕えられる名誉から懸命に日々の特訓を行うわけだ。が幼少期に王子の身代わりになるために育てられたと知り自暴自棄になってしまうわけである。

自暴自棄になった俺は心を閉ざし、そこから周りの環境を憎み噛みつきまわるわけだがまだ子供、親の保護下以外では暮らせずそして王子の身代わりという重役から逃れられない。

そこから転落人生が始まるわけだ。悪い大人に唆されて王子を殺しに向かったりなんだり。

そして学園生活でヒロインちゃんとであった攻略対象五人組にやっつけられる運命なのだ。

我ながら可哀想である。



つまり、こんなことにならないようにするためには俺が何をすべきかといえば。

ただ単に、噛みつかない…というか攻略対象に近づかなければいいのでは…?



なーんだ簡単である。あとは身代わりという観点から、全く知らない他人に殺されるという事もあるだろう。



…前言撤回、体を鍛えなければ。



簡素ながら、俺のやるべきことが決まった。

まずは、強くならなければ。強くなればなんでもダイジョウブ。筋肉OFジャスティス。

素手でリンゴを潰せる男になろう。



話が脱線しかけているところで、コンコンと部屋のドアをノックされる。

はっと、現実に戻された俺は書いていたメモ帳をポケットの中にくしゃりと丸め入れた。





◇◇◇





「なんだ起きてたのか。」



とつぶやいた少年もまた美少年。

この世界には美少年しかいないんだろうか、世界の均衡が崩れてしまう。



目の前にいる少年も見覚えがあった、さっき思い返していた引き取られた先の兄。ルーファスである。兄といっても同じ年らしいが。赤髪に緑の目。アーサー王子が儚い美少年枠だとするとルーファスは兄貴分的な男前顔だろう。



「何見てるんだよ、様子見て来いって言われたんだ、父さんに。」



見つめすぎてたのだろう、じっと凝視されていたことに対してルーファスは顔をしかめる。ルーファスは元々乙女ゲームでは好青年キャラであり、だれにでも優しく振る舞うことのできる兄貴分キャラなのだがどう見てもアウルに対して攻撃的だと感じる。

もう、きっとアウルと仲違いしてしまっているものだとすると、ここから仲良くするのは骨が折れるな…と心の中でひとりごちる。どのくらいの距離感で接するのがいいのかわからず悩んでいると、無視されたと思ったのかルーファスが声を荒げて話す。



「返事もできないか?それとも俺と話もしたくないって?ガキみたいだな。」



乙女ゲームに登場する彼とは、かなり印象が違いすぎて面食らう。ここまで、仲が悪いのであれば関係を修復するのは難しいと言えるだろう。しかしこの様子では下手に無視するのもよくないかもしれない。



「いえ…、具合が悪くて。」



「具合が悪いなら、わざわざ王宮にまで行かなきゃいいだろう。そのせいで王子に迷惑をかけたと思わないのか?」



「その通りです。後日お会いした時に謝罪させてもらいます。」



無難にその場をやり過ごすため従順な態度を取ったが、ルーファスは少し驚いた表情をしていた。



「…やけに素直だな、いつも無視するだけなのに。頭打ったせいなのか?」



…そこまで??そこまで仲悪かったの??

表面上の会話位するだろうと高をくくった対応だったが可笑しかったようだ。

でも、今後俺が生きていくためにはどうしても遭遇する可能性が高い異母兄であるルーファスは

少なくても当たり障りない関係を築いていたほうがいいだろう。ここで関係を悪化させて、敵を作るのも何だし…。



「…今日は休めと父さんもいってた。明日からまた訓練あるからな。」



と、ルーファスはわざとらしく大きな音を立てて扉を閉めた。







…ヒヤヒヤしたーー!!さっきの少ない会話で怪しまれたことに汗が噴き出る。



こんな調子で大丈夫なのだろうかと、泣きそうになる。

不安は尽きないが、明日こそはいい日になると良いと思いベッドの中で俺は目を閉じた。
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