優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

夏目萌

文字の大きさ
49 / 90
STORY4

16

しおりを挟む
「あ、もしもし大和さん? 樹奈でーす」

 その夜、日付が変わる少し前に樹奈は大和へ電話を掛けた。

「あのね、実は白雪ちゃんの事なんだけどぉ」

 その内容は勿論詩歌絡みで、何か良からぬ事を考えていた樹奈は詩歌への恋心を抱き、諦めきれていない大和にも協力させようと電話を掛けたのだけど、

「え? もうどうでもいい? 何で? この前は諦められないって言ってたじゃん。だから樹奈にお願いしたいって」

 大和はもう詩歌への気持ちが冷めつつあったようで、樹奈からの話に興味を示してはいなかった。

「そんな事ないよ、大丈夫! 樹奈の言う通りにすれば必ず上手くいくから…………あ、そう。じゃあもういいよ。さよなら」

 結局、何度か説得を掛けたものの大和の気持ちは変わらなかったようで、思い通りの展開に事が運ばない樹奈はますます機嫌を悪くした。



「郁斗さん、ちょっといいですか?」

 店が終わりキャストたちが帰って行く中、太陽は再び店を訪れていた郁斗に話し掛ける。

「どうした?」
「実は、樹奈の事なんですけど」
「樹奈がどうかしたのか?」
「それが、帰り際に突然店を辞めると言ってきたんです」
「辞める?  アイツが?」
「はい。ひとまず、保留という形にはしてありますが、本人の意思は固そうです」
「……そうか」

 樹奈が店を辞めるという話には、正直郁斗は驚いていた。

 スカウトしたての頃はイマイチ乗り気じゃなかった彼女も今ではそれなりに楽しんでやっていたからだ。

 そんな彼女が辞めたいと思っているのは恐らく、自分が詩歌を優先しているからだという事は何となく予想出来ていた。

「悪いな、俺の方でも一度話をしてみるよ」
「すみません、お願いします」

 太陽と話を終えて車に戻った郁斗は一度樹奈と話をしようと電話を掛けた。

 すると、

「もしもし~?」

 何やらかなり酔っぱらっている様子の樹奈が電話に出た。

「樹奈、お前、酔ってるな?」
「そんなことないですよ~?  どうしたんですか?」
「……さっき太陽から聞いた。店を辞めたいと言ったみたいだね?」
「あー、その話ですか。そうです。だってぇ、郁斗さんが全然樹奈をみてくれないからぁ」
「約束を破ってる事は悪いと思ってるよ。けど、今はどうしても時間が作れないんだ」
「白雪ちゃんの事が優先なんですもんね~」
「…………樹奈――」
「いいですよ、もう。とにかく、樹奈はもう辞めます。次の仕事も決まりそうだしぃ」
「次の仕事?」
「とにかく、今はお友達と楽しんでるでぇ、もう切りますね」
「あ、おい、樹奈――」

 まだ話があった郁斗だけど、樹奈が一方的に電話を切ってしまい話は途中で終わってしまった。

 この時、樹奈は友達と一緒だと言っていたのだが、その友達というのが、黛組と繋がりのある組織の人間だった。

「おい樹奈、誰だよ、今の電話」
「え~?  樹奈が良いなぁって思ってた人」
「何で過去形なんだよ?」
「だってぇ、その人ってば、一人の女の子に夢中なんだもん」
「へぇ?  どんな女なんだよ?」
「花房  詩歌っていう、世間知らずのお嬢様タイプの子。純で清楚系が受けるのかなぁ。樹奈には無理ぃ」
「花房……詩歌?」
「なぁに、やすくん、知ってるの?」
「いや、その名前……どっかで聞いた事あんだよな…………あ!  確か……」
「ん?  何?」
「いや、ちょっと知り合いが探してる子の名前がそんなだった気がすんだよ」
「へぇ~?」

 樹奈と一緒に飲んでいるのは中宿なかやど  泰典やすのりという男で、女ウケしそうな爽やかな顔立ちで一見優しそうに見える彼は、堅気の人間ではない。

「あ、じんさんお疲れっす。黛さんが探してるって言ってた女いたじゃないっすか、その子の名前って何て言いましたっけ?  え?  あー、そうっすか。あの、実は俺、その子の事知ってる人と一緒に居るんすけど…………はい、分かりました、それじゃぁ、また」

 泰典は誰かに電話を掛け、その話終えると、

「なぁ樹奈。その詩歌ちゃんについて詳しく教えて欲しいって人が居るんだけど、これから会ってくれねぇ?」

 酔っぱらっている樹奈にそう話を持ちかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ヤクザの組長は随分と暇らしい

海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ 店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた 目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして―― 「リカちゃん。俺の女になって」 初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ! 汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...