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 それから暫くして、予定よりも数日程早く退院する事の出来た伊織は円香と共に事務所へ戻ってきた。

「忠臣さんと雷は?」
「お二人とも便利屋さんのお仕事に出ていますよ」
「そうか」
「伊織さんの事は全て任されていますから、安心してください!」
「そりゃ、どーも」
「ささ、伊織さんはお部屋で寝ててください」
「いや、流石にもう寝るのはいいよ」
「駄目ですよ!  退院しても安静なのは変わらないってお医者様も仰っていましたよ?」
「いや、安静にしてるからせめて起きてるのは許してくれよ。ソファーに座って安静にするから。な?」
「…………分かりました、だけど、少しでも傷が痛むようならすぐにお部屋に行ってくださいね」
「ああ、分かった」

 すっかり円香に主導権を握られた伊織はやれやれと溜め息を吐くも、自分の為に一生懸命やってくれている彼女には感謝してもしきれない思いでいっぱいだった。

 そんな彼女を見つめ、ただソファーに座ってじっとしているも退屈になった伊織は、

「なぁ円香」
「何ですか?」
「こっちに来いよ」
「え?  でも、片付けを済ませちゃわないと」
「そんなの後でもいいだろ?  ほら、早く」
「……それじゃあ、少しだけ」

 自分の元へ来るよう呼び寄せると、伊織に呼ばれた円香もまた嬉しくなり、片付けの手を止めて彼の横に腰を下ろそうとする。

「違ぇよ、こっちだろ」

 そう言われて腕を引かれた円香は、伊織の膝に座る形になってしまい焦って離れようとする。

「い、伊織さん、どうしてここなんですか?  っていうか、こんなの、傷に障りますから――」
「離れるなよ、こうしたいから良いんだよ」

 そして、後ろからギュッと抱きしめられ耳元でそう囁く伊織に、円香の体温は一気に上昇する。

「い、伊織さん、駄目ですよ……」
「平気だよ、これくらい」
「でも……」
「俺はずっとこうしたかった。円香は、違うのかよ?」
「そんな事ないです、私だって、ずっと伊織さんに触れたかったし、こうして、ギュッてしてもらいたかった……」
「なら問題ねぇじゃねぇか」
「……もう、伊織さんってば……」

 そう言いながら円香は首を伊織の方へ振り向けると、視線がぶつかり合う。

「…………円香」
「……伊織さん……」

 こうなると相手に触れたい、相手を感じたいという欲求が沸き上がり、いつしか互いの距離が縮まっていくと、どちらからともなくキスをする。

「……ん、……っはぁ……」

 存在を確かめ合い、貪り合うようなキスを繰り返すうちに、キスだけでは物足りなくなってしまう。

 いつしか円香は伊織に跨るような形に体勢を直され、恥ずかしがりながらも時折円香の方からも求めてみたり、二人は何度も何度も唇を重ねていく。

「……っは、……い、おり……さん。あんまりすると、……傷が……」
「平気だって」
「……でも……」
「何だよ、じゃあ、やめるか?」
「……やめたく、ないけど……」
「けど?」
「それに、その……ここじゃ……」
「ふーん?  じゃあ、部屋ならいいのかよ?」
「そ、そういう訳じゃ、ないです……」
「あっそ。じゃ、もうやめるか」
「えっ……」

 伊織の言葉に名残惜しそうな表情を浮かべて黙り込む円香。

 もっと触れたいし、キス以上の事もしたい円香だけど、まだ安静が必要な伊織に無理をさせたくないという思いがあるからか、なかなか自分の欲求に素直になれない。

 それを分かってる伊織は、

「なんてな、こんなんでやめられる訳ねぇっつーの」
「い、伊織さん!?」

 驚く円香の身体を軽々と抱き上げると、自室へ戻って円香をベッドの上に下ろすと彼女の上に跨った。
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