成金竜と金色青年の黄金ライフ ~ドラゴンに転生したので惚れた人形をミュージカルで救います~

すずり

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#45-2星降る雫が満ちる饗宴

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<カリス>


 廃屋の屋根から伸びるのは竜気で編まれた階段だった。
 一本一本、複雑に絡み合う銀糸。糸に伝う水滴はダイヤモンドの光を放ち、階段全体をきらきらと煌めかせている。
 細緻な模様を描いた手すりに褐色の手を乗せたデルタがカリスの手を引いて先へと促す。

「カリス、ほら早く」

 銀糸の煌めきにも負けないデルタの笑顔に自然と足が前に出た。
 手を取り合って階段を駆け上がる。

 足を踏み込むと同時に、しゃらしゃらと音色を奏でて水滴が散った。上から力がかかると伝う水滴が弾くようだ。
 夜空に舞い散る一滴一滴が月光を淡く帯びている。

 目の前を漂う煌めきに視界を奪われながら足を動かしていると隣からクスリと微笑む声が聞こえた。

「カリスはこういう透明でキラキラしたものが好きだね」
「好き……ああ、これは多分、好きだ」

 これだけ視界を奪われるのだ。そういうことなのだろう。

 デルタから視線を逸らさず言うと、またもや赤黒くなったデルタが「いや違う。これは俺に言ったんじゃないから。そういう意味じゃないから……」と小声でぶつぶつと呟きだす。

 カリスは足を動かしながら、すーっと首を傾げた。

 階段は上へと続いている。十段先ほどで途切れているが、その先はデルタとカリスが駆け上がるごとに竜気で高速に編まれていった。
 星に向かって夜空を駆け上がっていると、やがて階段の先が村全体を包むドーム状に張られた竜気にまで到達する。

 流線型の安全柵をつけた踊り場を編み上げたデルタは、カリスの手を握ったまま「あっ」と声を漏らした。

 高所から見下ろすデルタの視線は村の外。大門の向こう側である。

 カリスもまた同じ方向を見下ろすと、白っぽい群れがこちらに手を振っていた。
 死霊アンデッドたちだろう。
 酒場の女主人を抱え、急いで大門外まで避難した結果、今度は竜気のバリアで村の中に入れなくなったようだ。

『みんなー! 無事かーい!?』

 なかなか距離があるが、念話とともにデルタが繋いでいないほうの手を振ると向こうも大きく手を振りピョンピョンとその場で跳ねている。
 音は聞こえないがカリスの脳内でイ音の掛け声が補完された。

「よし。骨士くんたちの無事も確認できたことだし、それじゃあ始めますか」

 繋いだ手をぎゅっと握られる。

「カリス、手伝ってくれる?」

 片眉だけひそめて笑うデルタに、カリスはそっと手を握り返した。

「もちろん」




 カザ村の人々の目が開く。
 同時にざわめきが広がり、自分達が村のメインストリートに残らず集められていることに気づいた。
 村長や村民を始め、荒くれの冒険者や強かな旅商人までもが目を白黒とさせる。

「なんだ、なにが起こった?」
「というかなんでここに?」
「なんかセラフィーネがどうとか聞いた気が…」

 多くの人間に動揺が走る中、どこからか颯爽と歩く一人の男が人々の合間を縫うように現れた。

 黒い癖毛に全身黒衣。真っ赤な裏地のマントが翼のようにはためく。
 自らを奇術師と嘯くデルタという男だ。
 彼の存在は丸一日たたずともカザ村にいつく者なら誰もが知るところとなった。

 存在も見た目も目力も強すぎる奇術師に、自然と人々からざわめきが消える。
 大勢の人間がいるというのにメインストリートはしん、と静まり返っていた。

 人々が集まる中央まで来た奇術師デルタは重々しい顔つきでゆっくり辺りを見回す。
 やがて全員が目覚めているのを確認すると、すうっと息を吸い込んだ。
 黒光りするブーツが巻き上げた砂とともに列し、歯切れのいい布切れの音が直角の腰曲げと同時に鋭く鳴る。

 あまりの勢いと謎の折り曲げポーズに、一同はびくりと肩が跳ねた。

「この度は、たいっへん申し訳ございませんでしたァ――――ッ!!!!」

 たー……たー……たー……と、静まり返ったメインストリートに木霊する。

 軒並みポカンとした顔を晒す群衆の中、誰かが「……は?」と呟いた。





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