女神殺しの悪役貴族 ~死亡フラグを殴って折るタイプの転生者、自分と推しキャラの運命を変えて真のハッピーエンドを目指す~

とうもろこし

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2章 学園パートの始まり

第22話 性別不詳 シャル・メイアー改造計画 2

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 放課後、俺とシャルは予定通り野外訓練場へ赴いた。

「シャルの長所ってなに?」

「僕の長所? 魔法関係で?」

「そうそう」

 俺の問いに対し、シャルは少し悩んでから自身の長所を語りだす。

「僕の長所は人より魔力総量が多いことかな?」

 魔力総量とは、人が体内に溜められる魔力の最大量を指す。
 
 要はスタミナと同じだが、魔法使いにとっては重要な指標でもある。

「僕がAクラスに入れたのも、魔力総量が高いからだと思うんだ」

 シャル自身の申告によると、魔力総量値は驚きの『五千』だという。
 
 これは人並みどころか、歴史上で認められた大魔法使いに匹敵する数値だ。

 因みに、魔法の才能に関してカスな俺の魔力総量は『二百』である。

 こうして比べてみると、俺のカス具合がよく分かるだろう。

「ただ、僕は上級魔法が撃てないんだよね……」

 シャルは驚異的な魔力総量を持っているが、代わりに上級魔法が扱えない。

 一度に消費できる魔力量は中級魔法である『ジャベリン系』を一発撃てるくらい。

「中途半端でしょ?」

 シャルは苦笑いしながら中途半端と自己評価するが、その評価は「適切だ」と言わざるを得ないだろう。

 驚異的な魔力総量を持っていたとしても、一度に撃てるのが中級魔法一発分だけというのが惜しい。

 これが仮に中級二発分だったり、上位魔法を撃てるだけの魔力を一度に使えることができれば、シャルは魔法使いとして大成する人材に成り得ただろう。

 要約すると、シャルの能力は『モブレベル』なのだ。

 特質した性能を持ちつつも、それを完全に活かすための要因が欠けている。

 純粋な魔法使いとして歴史に名を残すほどの才能ではない、ということ。

 これが世間的な評価となるだろうが……。

 しかし、俺からすれば十分に利用価値のある才能だと思う。

「確かに魔法使いとして大成したり、英雄級の活躍をしたいってなると上位魔法を扱えなきゃって思うよな」

「……そうだね。だから、僕は中途半端なんだ」

 母以外の家族からも同様の評価が下され、父親もシャルの才能に難しい表情を見せたという。

「だから?」

「え?」

「だから何だ? って話だよ。いいか、よく聞け」

 俺はニヤリと笑いながら言葉を続けた。

「魔物だろうが人間だろうがな、強く殴れば死ぬんだ。同時に体に火を点けてやりゃ燃えるし、水責めしてやれば窒息死するんだ」

 確かに上位魔法ってやつは、中級魔法よりも理不尽な威力を発揮する。

 一つ例に挙げるとすると、上級魔法である『ファイアストーム』は超広範囲に影響を及ぼす炎の竜巻を発生させる魔法である。

 仮に俺がファイアストームを撃てたとしたら、ハーゲット領を襲ったオーク共を一撃一瞬で殲滅できただろうね。

 相手に有無を言わさず理不尽を押し付ける魔法ってやつは確かに強い。

 相手を派手に殲滅し、恐怖を植え付け、仲間の士気を上げやすいってところも英雄・大魔法使いには欠かせない要素だ。

 しかし、この世界で強くなり、強者として生きることに対して、必ずしも上級魔法を撃つ必要はない。

「初級魔法だろうが中級魔法だろうが急所に当てりゃ死ぬんだ。相手を殺すためにどんな魔法を選択するかって判断力の方が重要だ」

 上級魔法を放てる大魔法使いも殴れば死ぬ。体が燃えれば死ぬ。息が出来なきゃ死ぬ。

 重要なのは相手に理不尽を押し付けることではなく、相手をどう殺すかを的確に判断すること。

「……いや、でも、上級魔法を使える魔法使いなら中級魔法や初級魔法を防ぐ術も知っているよね?」

「そうだよ。セオリーとしては知ってるだろうね」

 風魔法を使って高速で避けるとか、魔法の盾で防御するとかね。

 基本的な防御方法は熟知しているだろう。

「だから、判断力が必要だ。相手が考える術の上をいけばいい」

「レオン君ならどうする?」

「近付いて殴る。相手の攻撃を躱しながら近付いて殴り殺す。シンプルで良い判断だろ?」

「…………」

 シャルは呆れるような目で俺を見てくる。

「あれ? 無理だって思ってる?」

「うん。いくらレオン君でも無理だと思う。だって、相手は上級魔法が使える魔法使いでしょう?」

「だとしても、俺が絶対に負けるって保証はないよな?」

「そうだけど……。絶対に怪我しちゃうよ」

「腕が千切れようが、足が燃えようが、生きているうちに相手を殺せば俺の勝ちだ」

 まぁ、これは俺のやり方だがね。

「こんな話はどうでも良いんだ。とにかく、判断力が重要ってこと」

「うん」

 ただし、すぐに判断力を養えってのも難しい話だ。

 こういった能力は経験を積んで獲得していくものだと思うし。

「最初は自分の必勝法を考えよう」

「必勝法?」

「そうだ。いくつかプランを用意してきたんだが……」

 寝る前にシャル用の戦術を用意してきたが、先ほど聞いた長所を活かすなら――シャル自身が固定砲台となる方法だろう。

「体力もないし、筋肉もない現状で相手の攻撃を避けろってのは無理だ。接近されれば確実にやられる」

「うっ……。うん……」

 自身の欠点を改めて指摘されたせいか、シャルはズンと絶望するような表情を見せる。

「だが、近付かれなきゃいい。近付かれず、魔力総量を活かして魔法を撃ちまくるんだ」

 相手の足を止め、相手に防御させ続ける。

 そうなった場合、先に魔力が尽きるのは相手だろう。

 相手の魔力が尽きるまで制圧し続け、魔力切れを起こした相手に必殺成り得る一撃をズドン。

 これが今のシャルにとっての必勝パターンだと思う。

「魔法を撃ちまくる……。中級魔法をたくさん使うの?」

「いいや、足止めには消費魔力が低い初級魔法を使う」

 中級魔法を放てる才能があるなら、その分だけ初級魔法をアレンジすることが可能だ。

「一回の発動で五発以上の初級魔法を放つんだ。質より量で」

 たとえば、放った瞬間は大きなファイアーボールだが、相手へ向かって行く間に分裂。五個の小さなファイアーボールになって相手を襲う、とかね。

 この時、当たるか当たらないかはどうでもいい。

 とにかく広く、そして相手の足を止めるほどの密度を実現させたい。

 一直線、点での攻撃ではなくでの攻撃で相手を制圧するってことだ。

「うーん、なるほど……」

 俺の説明を聞いたシャルは少し悩む様子を見せ――

「こうかな?」

 魔力を練り、空の魔法陣に魔法文字を書き込んでいく。

 そして、魔法が発動。
 
 赤い魔法陣から大きなファイアーボールが放たれ、目標である案山子に向かう途中で五つに分裂。

 分裂したファイアーボールは案山子に当たらなかったものの、案山子の左右を塞ぐように地面へ着弾した。

「……スゲェじゃん」

 一回説明しただけなのにも関わらず、ちょっと悩んだだけで魔法を具現化してしまうとは。

「難解な魔法文字をそんな早く書けるのも驚きだが、対応する文字自体を知っていることにも驚きだよ」

「えへへ。僕、魔法文字には自信があるんだぁ」

 そういえば、将来は魔法研究者になりたいって言ってたっけ。

 魔法研究者になれば新しい魔法の開発にも携わるだろうし、そのために魔法文字を徹底的に覚えたのかも。

 身体能力に関するスペックは低いが、頭と魔力のスペックはピカイチって感じか。

 ……身体能力を上げて実戦経験を積んだら化けるんじゃねえか? モブレベルに収まるような頭の出来じゃないだろ、これ。

「もうちょっと改良できる?」

 というわけで、更に注文を付けくわえてみた。

 今度は一直線に飛んでいくのではなく、案山子の真上へ向かって飛んでいくように。

 更に真上に到達したら分裂するように、と。

 すると、どうでしょう。

「うわ……。マジかよ……」

 シャル君は注文通りの魔法を実現してしまったのです。

 こんなに早く魔法を完成させちまうとかさ。

 もうここまで来ると怖いわ。

「えへへ。どうかな?」

 女の子のみたいな顔しているくせに恐ろしいよ。

「あとはこの魔法を連射して、とにかく相手の足を止める。どうだ? 出来そう?」

「やってみるね!」

 シャルは一発目をかる~くポンと放ち、続けて二発目をポンと放つ。

 それをどんどん続けていった結果、案山子の周りには火球の雨が降り始めた。

「…………」

 降り注ぐ火球一つ一つは大したことないが、量が多すぎて防御しないと致命傷になりかねない。

 防御しなきゃ絶対に頭が燃える。髪がチリチリになるどころか、頭皮が火傷して大惨事になるレベル。

「ど、どう?」

「……いいんじゃないでしょうか、シャルさん」

 問われた俺は笑みを浮かべながら頷いた。

 今の俺はちゃんと笑えているだろうか?

「どうして敬語なの!?」

 もしかして、俺はとんでもない『固定砲台』を誕生させてしまったんじゃないか?

 やっぱり魔法ってやつは恐ろしいぜ。
 
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