女神殺しの悪役貴族 ~死亡フラグを殴って折るタイプの転生者、自分と推しキャラの運命を変えて真のハッピーエンドを目指す~

とうもろこし

文字の大きさ
40 / 50
3章 夏と教会

第37話 怪しまれる悪役貴族

しおりを挟む

 今夜も名演技をキメて寮の自室へ帰ると、鍵を開けたタイミングで隣のドアが開いた。

「おかえり」

 ドアから顔を出したのはパジャマ姿のシャルだ。

「おお、ただいま」

 挨拶を返して自室へ戻ろうとすると、シャルはスススッと滑り込むように俺の部屋へ。

 先に入室したシャルは俺のシャツを引っ張りながら立ち位置を入れ替え、流れるような動作で鍵を閉めた。

「ねぇ、連日どこへ行ってるの?」

 シャルの顔には「怪しんでいます」と言わんばかりの表情が浮かぶ。

 そして、俺の体に顔を近付けて匂いを嗅ぎ始めた。

「……少々のタバコ臭」

 スンスンと鼻を鳴らしながら顔を上へ上げていき、最後には俺の口元に鼻が近付いた。

「お、おい」

「……お酒臭い」

 これが決め手になったらしい。

 シャルはムスッとした顔を俺に見せると、腰に手を当てて説教を始めた。

「レオン君。君は男の子だし、僕達の年齢は大人に憧れを持つのも分かるよ。みんな早く大人みたいに色々したいって思うよね」

 シャルは酒を飲んだことについて怒っているのだろうか?

 しかし、この世界に飲酒に関する法律はない。

 ガキだろうが赤ちゃんだろうが、酒を飲もうと思えば飲める世界である。

 タバコや娼館での性交渉も同じ。

「でもね! 南東区はダメだよ! あそこはクズ共の肥溜め、悪い大人達の巣窟って言われているんだからね!」

 酷い表現だが、決して間違ってはいないのが何とも……。

「南東区には行ってない」

「表通りの酒場で飲んできたの?」

「まぁ、そんなところだ」

「ふぅん……」

 またしても怪しむような視線と表情を見せ、シャルは俺の体に再び顔を近付ける。

「……女の人の匂いはしないから本当っぽい」

 スンスンと匂いを嗅いでいたシャルは俺に抱き着くと上目遣いを見せる。

 どう見ても美少女にしか見えない仕草を見せながら、頬を赤くして言うのだ。

「……どうしても我慢できなくなったら僕に言って」

 何をだよ。

 何を言えってんだよ。

 俺は怖くて聞けなかった。


 ◇ ◇


 翌日、早朝トレーニングを終えて学園へ向かおうとした時だ。

「僕、今日は先に行くね!」

 いつもは俺の横に並んで向かうシャルが、珍しくも一人で向かうという。

 しかも、いつも以上に早く。飯を食ったら即出発って感じだ。

 短い道を一人で歩くのも久々過ぎて、若干ながら物足りなさを抱いてしまう。

「おはよう、レオ!」

「おはようございます」

「おっす、おはようさん」

 学園の門を潜るタイミングでリアムとマリア嬢に遭遇。

 朝から二人一緒ってことは、昨晩は侯爵邸に泊まったのだろうか?

 御盛んなことだぜ。

「今日はシャルと一緒ではありませんのね?」

 俺が一人って状況は、マリア嬢にとっても珍しく見えるようだ。

「うん。何か先に行くって」

「どうしたのでしょう? 今日は先生に頼まれた仕事でもあったのかしら?」

 我らがAクラスの担任は、ちびっ子お昼寝先生ことミミモ先生である。

 まぁ、担任といっても前世の学校ほど担任らしいことはしない。

 たまに学生達へ連絡事項を伝える係、みたいな立ち位置なのだが。

 ただ、あの先生は常に「楽をしたい」の塊みたいな人間性だ。自身の仕事を優秀な生徒に押し付けるように巻き込む癖がある。

 ありゃ、見た目がちびっ子だから許されているんだ。他の先生だったら貴族パワーで即潰されているぞ。

 合流した二人と共に教室に向かうと、いつも通りリリたんが先に到着しているのだが……。

「あっ! 来た!」

 先に向かっていたシャルはリリたんと何か喋っていたらしく、俺達を見つけるなり手招きをする。

「マリアちゃん、今日の放課後に水着を買いに行かない?」

「ええ、構いませんわよ」

 シャルはリリたんと水着を買いに行く計画を立てていたのだろうか?

 だとしても、早く登校する意味はあまりないように思えるが……。

 女性陣とシャルが盛り上がる中、授業が始まる予鈴が鳴る。

 シャルとマリア嬢は自分達の席に戻っていき、俺も着席して授業を受ける準備を始めたのだが、ここで横に座るリリたんにトントンと肩を叩かれた。

「レオ君、昨晩はお酒を飲みに行ったって本当?」

 リリたんは笑顔である。

 満面の笑みだ。

 しかし、続けてこうも問うてくるのだ。

「女の人がいる酒場じゃないよね?」

 目が笑ってない。

 口元は笑っているが、目には断罪者のような暗く冷たい何かが潜んでいた。

「ち、違うよ」

「そっか。なら良いんだぁ」

 パッと輝くようなワンコスマイルに戻ると、彼女はスッと口元を俺の耳に寄せる。

「もしも、我慢できなくなったら言ってね」

 小さな声で囁く彼女の顔を見ると、顔が真っ赤だった。

「わ、私……。頑張るから」

 何を、とは聞けなかった。

 聞いたら絶対に気絶絶頂しそうだったから。


 ◇ ◇


 放課後、俺達五人は街へ繰り出した。

 向かった先は東区の表通り、貴族向けの商会が並ぶゾーンだ。

 貴族向けの店舗の正面はガラス張りになっており、イチオシの商品達がこれでもかと主張している。

 その中でも特に多いのは、これからの季節には欠かせない水着や夏物の洋服達である。

「じゃあ、行ってくるね」

 女性物の洋服を扱う商会に到着すると、女性陣は水着を買うべく入店。

 俺とリアムは外で待つことになったのだが……。

「当然のようにシャルも一緒に行ったね」

「言うな」

 リアムの呟きをシャットアウトしつつ、勇者と二人きりという状況が出来上がった。

「そういえば、近いうちに騎士団で訓練を積ませてもらうことになったんだ。よかったらレオも一緒にどう?」

 壁に寄りかかりながら待っていると、リアムが「侯爵様の計らいでね」と付け加えつつ言った。

「ほーん……。騎士団ね」

 最初は興味を抱かなかったが、頭の中にいる俺が「ちょ、待てよ」と考え直すよう促してきた。

 これはチャンスなんじゃないか?

 本来は騎士団で指南役をするユグゲルが不在となっているが、その代わりを誰が務めているのか確かめるチャンスである。

「本職の騎士達が模擬戦をしてくれるらしいんだ! きっと大きく成長できるチャンスだよ!」

「確かにチャンスだ」

 俺にとっちゃ別の意味でのチャンスだがね。

 しかし、俺が乗り気な様子を見せるとリアムの顔がどんどん嬉しそうになっていく。

「じゃあ、一緒に行く!?」

「お、おお」

 どうしてそんなに嬉しそうにするんだよ。

 まるで俺とダチになったばかりのシャルみたいなリアクションじゃねえか。

「どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」

 素直に問うてみると、リアムは満面の笑みを浮かべた。

「だって、友達と一緒に高みを目指すなんて最高じゃないか! レオと一緒に強くなれるなんて嬉しいよ!」

「そ、そうかい……」

 こいつ、本当は頭のイカれた戦闘狂なんじゃねえか?

 本当に勇者様かよ?

「まだ時間掛かりそうだし、何か食わねえ?」

 それはともかく、小腹が減った。

 俺はリアムを誘って中央区側に並ぶ屋台へ向かう。

 お互いに相談した結果、チョイスしたのは串焼き肉である。

 実に思春期真っただ中の男の子らしい選択だろう?

「美味いけど何の肉だ?」

「さぁ……。鹿っぽい味だね」

 王都近郊によく出現する鹿の魔物かな? 若干臭みが残っているが悪くない。

「もう一本食べる?」

「ああ、次は別の屋台にしよう」

 一本じゃ物足りないのは俺もリアムも一緒だったようで。

 次はジャイアントボアの肉へ仲良く食らいつく。

「食い歩きって楽しいよね」

「確かにな」

 こうして二人で過ごしていると、馬鹿を言い合う友人と過ごす青春の一ページみたい。

 お互いに背負う運命は真逆だが、こうした瞬間も悪くないと感じてしまった。

 こいつは勇者だが、人としては良いヤツなんだよな……。

 勇者じゃなければ、もっとすんなり仲良くなれていた気がするよ。

「そろそろ戻ろうか」

 串を捨てて店まで戻ると、タイミングよく三人が退店してくるところだった。

「お待たせ~」

 紙袋を持ったリリたんの輝かしいワンコスマイル。

 小腹を満たした心に効く炭酸ジュースのように爽やかだ。

「良いのあった?」

「うんっ」

 リリたんは紙袋を抱きしめながら頷くと、にひっと笑いながら俺に言うのだ。

「期待しててね?」

 彼女の挑発的なセリフに負け、色だけでもと問うが「秘密♡」と言われてしまった。

 こりゃ楽しみだ。

 早く来い、湖イベント! 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...