異世界体験テーマパーク:アリウェルランド

とうもろこし

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12 4人での初戦闘

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 本登録を済ませ、専用ロッカーで支給された初期装備に着替えた4人は冒険者ギルド前で合流した。

 先に着替えを終えたサトシとツトムの初期装備は仮登録時と同じ恰好だ。

 サトシは革製の装備に剣。ツトムは黒いローブととんがり帽子にスティック。

 仮登録時と同じ格好であるが、今回はサトシだけ背中にリュックを背負っていた。

 リュックの中には冒険者入門書を入れて、困った時はいつでも読めるように。

 前回の来園時にベテラン冒険者達がポーションを入れて持ち運んだりしているのを見て、サトシもアイテムの持ち運び用にと今回から用意したようだ。

「お待たせ!」

 雑談しながら待つ事、10分程度。遅れて咲奈とまひろが合流した。

「シーフってやっぱり身軽な装いなんだな」

 ツトムは初めて見るシーフの初期装備に身を包んだ咲奈を見やる。

 上は白いタンクトップのようなインナーの上に薄茶のジャケットを羽織っただけ、下は薄青のショートパンツに黒いニーソックスと革製のロングブーツ。

 サトシのような防具らしい防具は身に着けておらず、見た目はほぼ私服に近い。

「武器は短剣と弓をもらったわ」

 初期武器は簡単な造りのナイフとショートボウ、弓用にいくつかの矢を支給されたようだ。

 咲奈は腰のベルトに短剣用のホルスターと矢筒を装着し、弓には肩掛け用のベルトは付いていないので直接持ち歩くしかなさそうだ。

「神田さんは白いローブなんだね」

「はい。着替えるのが楽で助かりました」

 回復師を選んだまひろの装いはツトムの選択した魔法使いに似ている。

 ただ、身に着けている物は白い生地で作られた簡素なローブだけ。魔法使いと違う点は武器がスティックではなく、木製の『杖』なところだろうか。

 しかし、初期装備なだけあって杖も先が丸まった持ちやすい木の棒と表現できてしまうほどシンプルである。  

「とりあえず、フィールドに出てみようか」

 合流した4人は早速、西門を潜ってフィールドに向かう。

 まずは門を出たすぐ近くで仮登録時との違いを体験する事にした。

 といっても、4人はまだスキルも取得していない。

 仮登録時と同じジョブを選択したサトシとツトムは前回とやれる事は全く変わっていない。

 サトシは剣でスライムを斬り、ツトムはファイアーボールを撃つだけである。

「うーん、やっぱ魔法撃つのは楽しいな」

「冒険者って感じがするよね」

 しかし、やる事は変わらずとも2人の顔には笑顔があった。

 ゲームのようにボタンを押すだけ、エフェクトを見るだけ、ではなく実際に体感しているのがクセになると言わんばかりに。

「私、弓の練習してもいい?」

 主な変化を体験するのは、仮登録時には体験できなかったジョブを選択した咲奈とまひろだろう。

 まずは咲奈が門の近くでポヨンポヨンと跳ねるスライム相手に弓を当てる練習をする事になった。

 当然ながら咲奈は弓道の経験は無い。

 見様見真似で弓と矢を構え、

「やぁッ!」

 気合たっぷりの掛け声と共に撃ってみたものの、矢が飛んだ距離は1メートルにも満たない。

 彼女のすぐ傍でぽとりと零れるように落ちた。

「あ、あれ?」

 現実を受け入れられぬ咲奈はもう一度弓と矢を構え、スライムに向かって放つが……。

 ぽとり、と矢が落ちてスライムはポヨンポヨンと跳ねながらどこかへ去って行った。

「…………」

「弓とは?」

「咲奈ちゃん……」

 サトシは無言、ツトムは煽り、まひろは憐れむような声を出して咲奈を見た。

「あたし、才能無いのかな……」

 ガックリと肩を落とす咲奈であるが、弓道の経験もなく、人生初の弓撃ちチャレンジをした彼女が上手くいかないのも当然である。

 ここは現実であり、4人は異世界転生したわけじゃない。初めから何でも上手くいくよう神様からチートを与えられているわけじゃないのだ。

 初来園時に運動不足のサトシとツトムがすぐに疲れ果てたのと同じように、己の持つ技術や体力が全てである。

「あ、そういえば」

 落ち込む咲奈を見て、サトシはリュックから冒険者入門書を取り出す。

 付箋を貼っていたページを開くと咲奈に見せるように向けた。

「ほら、ここ。弓は難しいからポイントを貯めてボウガンを買うと良いって書いてあるよ。ボウガンなら当て易いんじゃないかな?」

 サトシが開いたのはシーフについて紹介するページであった。

 そこには『弓はボウガンに比べて連射性が高いが技術を要する。扱いが難しいので矢の装填に時間は掛かるが、撃ちやすいボウガンの方が確実でオススメ』と記載されていた。

「あー。確かに弓は難しいよな。でも、ボウガンは銃みたいに狙いを付けてトリガーを引くだけか」

 サトシの指差す箇所を読んだツトムも納得するように頷いた。

「弓道も難しいってイメージがありますもんね。咲奈ちゃん、最初はナイフで戦って、ポイントを貯めたらボウガンを買ってみたら?」

 まひろもボウガンの使用を勧めると、咲奈は小さく頷いた。

「そうするぅ……」

 弓の使用は泣く泣く諦める事にして、咲奈は大人しくナイフを基本に戦う事にした。

 短剣の使用感も掴むべくスライムと戦うことにした咲奈は、獲物を見つけるとすぐに駆け出す。

「このッ! このッ!」

 弓を諦めた事への不満をスライムにぶつけるように短剣で核を突き刺す彼女の動作は、見守っていた他3人から見ると少々恐怖を覚えた。

 まるでヤンデレが浮気した男の腹を何度も刺突するような勢いである。

「ふー! スッキリ!」

 ただ、本人は吹っ切れたのか良い笑顔を浮かべていた。

「回復魔法も試してみよう。俺がダメージを喰らうから使ってみてくれる?」

 最後はまひろの回復魔法。

 サトシがスライムにちょっかいを出し、ポヨンと跳ねたスライムの体当たりをわざと受け止める。

 ステータス画面を出して生命力の数値が1、2……と減っていくのを確認しつつ、スライムから十分な距離を取ってまひろに合図を出した。

「ヒール!」

 真剣な表情を浮かべたまひろがサトシに杖の先端を向け、回復魔法の名を叫ぶ。

 すると、サトシの体全体に緑色の光が一瞬だけ灯る。

「本当に回復してる!」

 特別傷が癒えたり、疲れが取れるわけじゃない。

 あくまでも数値的な回復であるが、ステータス画面に表示された生命力が全快しているではないか。

「えーっと、使用できる回数は5回ですね」

 対し、まひろは減少した魔力量からヒール回数を計算する。

「5回かぁ。結構、シビアかな?」

「そうですね。最初のうちは魔力ポーションが必要かもしれません」

「俺も最初は生命力回復用のポーションを飲んだ方が良いね」

 スキルを獲得して使用回数を増やす手段を得なければ、最大で5回という使用制限はシビアと言える。

 特に前衛としてパーティメンバーを支えるサトシは一番ヒールを受ける頻度が多いだろう。

 まひろに頼りきりで、まひろの魔力が切れたら回復手段が無く死亡扱いになるなど論外だ。

 事前の確認を入念に行う派であるサトシとまひろは、互いを補うように対策を講じながらも頷き合う。

「最初は浅いところでポイントを稼げって事だろうな」

 ツトムが言った通り、初期も初期である4人は何もかも足りない状況だ。

 最初から強敵を相手にするのは無謀だろう。

「そうだね。でも、4人でスライム相手じゃ物足りないだろうし……。ちょっと先まで行って試してみようか」

 4人はスライム以外の敵が出現する最初のポイントまで進む事にした。 

 距離にして西門から500メートル程度進んだ地点、この辺りからスライムに混じって別の魔獣の姿が目撃されるようになる。

「あれがそうか」

 ツトムが指差した先にいたのは、口と体が一体化した縦長の植物。

 食虫植物のような本体は真ん中一文字に割れていて、ビッシリと生えた鋭い牙をチラつかせながらカパカパと口を開閉していた。

 加えて体の下部には無数の根っこのような足と長い蔓が生えており、ゆらゆらと左右に体を揺らす。

「基本的には危害を加えたり、警戒距離内に近寄らなければ襲って来ない魔獣らしい。初心者同士でパーティを組んだ人達が戦闘に慣れるには丁度良い魔獣みたい」

 ソロだとキツイ。でもタンク・火力・回復などそれぞれ役割を持ったジョブでパーティを組んだ状態ならば丁度良い。

 冒険者入門書に書かれた『脱・初心者手引き』を読むサトシは植物型の魔獣――キラープラントの難易度を語った。

「ふーん。遠距離攻撃で倒す魔獣ってこと?」

 特徴を聞いた咲奈はよくある倒し方のセオリーを口にするが、サトシは首を振る。

「それが、遠距離攻撃の対策として口から種を飛ばす遠距離攻撃もしてくるみたいなんだ」

 故に魔法系のジョブが警戒距離外からの攻撃を行って、無傷で倒すというのも難しい。

 むしろ、生命力が低い魔法系ジョブにとって天敵とされているようだ。

「俺がタンク役で前に出るから樋口さんは遊撃、神田さんは回復、ツトムがアタッカーでどう?」

 サトシが役割分担を改めて確認した後、まずは戦ってみようと早速実践開始。

「行くぞ!」

 まずはサトシが剣を構えて突撃。

 相手の警戒距離に入り込むと、キラープラントが突っ込んで来たサトシに体を向ける。

 ウネウネと縦長の体から生える蔓をムチのように振るい、サトシの体をペシペシと叩き始めた。

 痛みは感じない。

 だが、目の前にとんでもないスピードで迫って来る蔓はなかなか迫力があって、サトシは自然と歯を噛み締めて痛みに備えるような表情を浮かべてしまう。

「せい!」

 サトシは自分の体を叩く蔓を剣で切断しようとブンブンとデタラメに剣を振るが、相手の動きが速くなかなか捕らえられない。

「ふっ!」

 遅れて突撃した咲奈はサトシの体を叩く事に夢中になっている蔓を短剣で斬りつけた。

 切断された蔓がぼとりと落ち、歓喜の声を上げようとする彼女だったが、別の蔓が自分を攻撃しようとする動作が目に映る。

「わあっ!?」

 咲奈は慌てて体を翻すと魔獣から距離を取って射程内から逃げ出す。

 逃げ出す姿はお世辞にも華麗とは言えぬが、蔓の攻撃が届かぬ距離まで脱出する事が出来た。

「ヒール!」

「ファイアーボール!」

 前衛が抑えている間にまひろはサトシに回復を。ツトムは炎の玉を撃って攻撃。

 何度かそれを繰り返し、キラープラントを討伐する事に成功した。

「ふぅ、倒せたね」

「うん。でも、疲れるわ……」

 初のパーティ戦による討伐を終えて、安堵の息を吐く前衛2人。

 サトシは何度も剣を振るった腕を揉み解し、何度もヒットアンドウェイを繰り返した咲奈は汗を拭いながら地面に腰を降ろした。

「いざ、壁役がいる状態で戦うと自分の立ち位置を考えなきゃいけないな」

「私も回復のタイミングが難しいですね……」

 魔法攻撃でアタッカーを務めるツトムは壁役がブラインドとなって視界と射線が塞がれる。

 前回はサトシだけであったが、今回からは激しく動き回る咲奈もいる事で魔法を撃ち込むタイミングや射線の確保を考えなければならない。

 回復役のまひろはサトシの生命力がどれだけ減っているのか、それを知る手段が無く勘で回復魔法を唱えなければならない。

「魔法使いも体力が必要だな……。それ以上に機転も必要になるか」

「私もダメージを受けた人の減少度合が見えるようになる装備品を買わないと魔力が無駄になっちゃいそうですね」

 前衛に守られる後衛だからといって何も考えずに魔法を撃てばいいわけじゃない。

 前衛が壁となるように、後衛は相手を攻撃することで前衛の負担を減らさねばならぬのだと知ったようだ。

「でも、面白いな」

 サトシが小さく呟いた言葉に他の3人が顔を向け、笑顔を浮かべた。

「ゲームのマルチプレイを実際にやってるみたいで楽しいよな」

「そうね。あたし達、冒険者! って感じがする」

「こういった連携をみんなで考えるの楽しいですよね」

 アハハ、とフィールド上に座り込みながら笑い合う4人。

 まさに、今の4人は冒険者である。よって――彼等は1つの教訓を知る事となった。

「あん?」

 笑うツトムのすぐ隣に光の粒子が集まって、1つの形を作り始めた。

 光の粒子が模ったのは、先ほど倒したばかりのキラープラントである。

 輝きが終わりを告げて、ツトムの真横に魔獣が現れたのだ。所謂、ゲームでいうところの『ポップ』という現象である。

「ちょおおおお!?」

 秒でキラープラントの警戒範囲内に侵入していたツトムは蔓のムチで背中と尻を「スパパパン!」と滅多打ちにされた。

「はあん!!」

 痛みは感じぬがくすぐったいような感触に襲われたツトムはなんとも酷い悲鳴を上げた。

 突然の出来事に呆けていた他の3人もすぐには対応できず、生命力が低い魔法使いであるツトムはすぐに死亡扱いとなって転送されてしまった。

「ツ、ツトム~!」

 サトシが光の粒子に変わったツトムへ手を伸ばすが時既に遅し。

「田中さん! やばいよ! きゃああ!」

「あ、ああ! 咲奈ちゃん!?」 

 次に狙われたのは咲奈であった。彼女もぺしぺしと蔓の鞭を連打され、まひろは突然の出来事に焦って回復ができない。

「神田さん、逃げて!」

 咲奈が転送され、なんとかまひろだけでも逃がそうと壁になるサトシだったが1人ではどうにもならず。

 アタッカーを失い、極限なまでに運の悪い奇襲状態で戦闘が始まったサトシ達は、焦りと動揺もあって成す術もなく全員死亡扱いとなって転送されてしまう。

 正式に冒険者となった4人が最初に得た教訓は『フィールド上で油断は禁物』という事である。

「ひでえ目にあったぜ」

「あれは防ぎようがないわね」

 転送された先で合流した4人は待機所で一息ついてから外に戻った。

「良い時間だし、お昼食べる?」

 サトシは待機所を出た先、すぐにあった園内の時計を見て告げる。

 時刻は11時45分を過ぎたところ。昼食にするにはタイミングも時間も丁度良いだろう。 

「そうだな。休憩しようか」

「うん。そうしましょう」

「賛成です」

 となれば、今度は食事系を事前に調べてきた咲奈とツトムの出番。

 2人が調べたイチオシの店に向かって4人は歩き出す。

「お昼食べて休憩したらまたフィールドに出てポイントを稼がない?」

 確かに疲れてはいるが、まだまだ楽しみたいとばかりに咲奈は午後に向けてやる気十分な提案をした。

「そうだね。ポイント稼いでスキルも欲しいし」

 咲奈の提案にサトシに続いて他の2人も笑顔で同意した。

 この日はアリウェルランド内で食事を楽しみつつも、4人は何度も死亡しながら再出発を繰り返して、夕方まで全力で楽しみながらポイントを稼ぐのであった。
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