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5話「かつての婚約者候補との遭遇」
しおりを挟むこんなのエステリアード公爵令嬢になんて伝えればいいの?
ガラティア侯爵令息は今まで見たどの男よりクズだった。
ガラティア侯爵令息って、エステリアード公爵家に婿入りするんだよね?
婿入りするのにこの態度……ある意味大物だわ。
「どうしましたの?
もしかして悪い結果が出ましたの?」
私が額に汗を浮かべ何も話さないので、公爵令嬢は心配になったようだ。
「すみません。
エステリアード公爵令嬢、今一度。
今一度だけお手を握らせてください」
「ええ、それは構わないわ」
もしかしたらもっと先の未来では、ガラティア侯爵令息も反省してるかもされない。
雨降って地固まるパターンもあるかもしれない。
私は淡い期待を込めて、公爵令嬢の手を握った。
『オリビアに子供ができた!
君の娘として育ててほしい!』
『なぜ私が愛人の子を育てなくてはいけませんの!
その子はエステリアード公爵家の血を一滴も引いていませんわ!』
『煩い!
女は黙って男の言う事を聞いていればいいんだ!』
『暴力は止めて!』
ガラティア侯爵令息がエステリアード公爵令嬢に暴力を振るったところで、私は彼女からパッと手を離した。
ガラティア侯爵令息は結婚しても、何も変わらなかった。
いや、結婚する前より酷くなっていた。
ことはエステリアード公爵家とガラティア侯爵家の縁組に繋がる重大な話だ。
この両家が繋がれば、強固な派閥が出来上がる。
私の一存で彼女の未来について話したくない。
家に持ち帰って両親の判断を仰ぎたい案件だ。
だけど私が何もしなければ、このあとエステリアード公爵令嬢とガラティア侯爵令息の婚約発表がされてしまう。
婚約を発表してしまったら、婚約を破棄するのは容易なことではない。
家の為にエステリアード公爵令嬢に不幸になってほしくない。
彼女の不安そうな瞳を見ていれば分かる。
彼女も婚約や結婚に希望を抱く、私と同い年の女の子なんだって!
「先程から真剣に思い悩んでいるご様子ですが、何が見えましたの?
もしかして悪い結果ですの?」
エステリアード公爵令嬢が心配そうな顔で尋ねてきた。
「エステリアード公爵令嬢、心して聞いてください!
実は……」
私は未来視で知ったことを、占いと誤魔化して公爵令嬢に伝えた。
結果を聞いた公爵令嬢は愕然としていた。
「私は少し恋占いが得意な女の子です。
私の言葉にはなんの信ぴょう性も裏付けもありません。
ただもし私の言葉を少しでも信じる気持ちがあるのなら、ガラティア侯爵令息の身辺調査をしてください。
特に彼の女性関係を中心に洗い直してください。
彼との婚約発表は、それからでも遅くないと思います」
エステリアード公爵令嬢は何も話さなかった。
彼女の体は小刻みに震えていて、彼女が動揺しているのが伝わってきた。
エステリアード公爵令嬢は使用人に、公爵夫人を呼ぶように伝えていた。
これ以上私に出来ることはありそうにない。
「私はこれで失礼します」
私は淑女のお辞儀をして部屋を出た。
私はきっかけを与えたに過ぎない。
あとはエステリアード公爵令嬢と公爵家がどう決断をするかだ。
どうか、彼女の心を傷つけるような判断をしませんように……。
私にはエステリアード公爵令嬢の幸せを祈ることしかできなかった。
◇◇◇
その日、エステリアード公爵令嬢は体調不良を理由にパーティーに戻ることはなかった。
私は遅くまでパーティーに残っていたが、エステリアード公爵令嬢とガラティア侯爵令息の婚約が発表されることはなかった。
一か月後、エステリアード公爵令嬢が隣国への留学を発表。
それ以降、エステリアード公爵家とガラティア侯爵家の縁談の話を聞くことはなくなった。
世間はガラティア侯爵令息が振られたと噂した。
というのも、彼の女癖の悪さが露見したからである。
ガラティア侯爵令息は好みの女性をメイドとして雇い入れてから彼女達に手を出し、離れや別荘に囲っていたらしい。
他家に知られないように、メイドとして一旦雇ってから、別荘などに囲っている辺り、手口がいやらしい。
ガラティア侯爵令息の容姿に惹かれて集まっていた令嬢達は、彼の素行の悪さを知って蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
何にしても、クズ男の毒牙にかかる女性が減ったのは良いことだ。
私はというと、エステリアード公爵令嬢の未来を見てから、男性不信に拍車がかかっている。
お見合いもお茶会もしばらく断っている。
今まで未来予知で見た男性は、浮気はすれど浮気女相手の女性を大切にしていた。
それに暴力は振るわなかった。
ガラティア侯爵令息ほどのクズを見てしまうと……男性というより、人間不信になってしまう。
当分、家族以外の誰とも会いたくないわ。
◇◇◇◇
そんなわけで、私は心身の療養をかねて森林公園を訪れていた。
外を貴族令嬢が一人で出歩くのは危険なので、伯爵家で雇った護衛付きだ。
そこで見知った顔に声をかけられた。
「モンフォート伯爵令嬢。
覚えていませんか?
以前あなたとお見合いしたベオウルフです」
「バルトクライ伯爵令息、お久しぶりですね」
思いがけずかつての婚約者候補に遭遇した。
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