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13話「リリアナ、すやすやと眠る」
「えっ?
ツインルームに空きがないんですか?」
「はい。
お客様の後に団体のお客様がいらっしゃいまして満室になっております」
「それでは今のお部屋をキャンセルしたら……」
「野宿していただくことになるかと……」
「それは困ります!
今の部屋に泊まります!」
ひ弱なカイロス様は、悪霊に取り憑かれたり、山賊に襲われたり、馬車に揺られたりしてお疲れなのです。
せめてベッドて休ませてあげたいです。
◇◇◇◇◇
「という訳で……一つのベッドに二人で寝ることになりました」
「はい……それは僕も聞いていましたので」
部屋に戻った私達。
ベッドの端と端に座り、会話している状態です。
「一つのベッドに二人で寝るといってもダブルベッドですし、端と端に別れて寝れば、体が触れ合うことはありませんよ!」
「そ、そうですよね!」
会話がぎこちないです。
「あの……先ほど襲おうとしたのに、信じろと言うのは無理かもしれませんが、カイロス様には朝まで指一本触れませんからご安心を!」
この状況で「私を信じて」という方が無理かもしれません。
カイロス様に拒否されたら、その場合は床で寝ましょう。
「分かってます。
リリアナ様は人の嫌がるような事をするような方ではありませんし、約束を違えるような方ではありません」
天使です! 天使がいます!!
カイロス様、他人を信用し過ぎですよ!!
私への信頼からくる屈託のない笑顔が眩し過ぎます~~!
カイロス様のこの笑顔は、絶対何としても私が守らなくてはいけません!
その後は特にやることもないので、一階の食堂で夕食を軽く済ませ、お風呂に入って寝ることにしました。
「で、では……おやすみなさい、カイロス様」
「おやすみなさい、リリアナ様」
ぎこちなく就寝の挨拶をしてベッドに入りました。
同じベッドに自分以外の人間がいるというのは、何だか落ち着きません。
心臓がドキドキしてます。
カイロス様はどうされているのでしょうか?
耳を澄ますと、カイロス様の寝息が聞こえてきました。
よほど疲れていたのか、ベッドに入るなり眠ってしまったようですね。
信頼されてるといいますか、意識されてないといいますか。
それはそれでもやもやしますね。
一人でもやもやしていても仕方ないので、私も寝ましょう。
羊の数を数えていれば眠れますよね?
「スースー」と規則正しく聞こえていたカイロス様の寝息が、ピタリと止まりました。
振り返ると、カイロス様の上に太った悪魔が乗っていて、彼の呼吸を圧迫していました。
【ブヒヒヒ…………!】
太った悪魔がカイロス様の上で下卑た笑い声をあげました。
「私の婚約者に何するんですか!!」
ドカッ! ガスッ!! バキッ!!
私は飛び起きて、懇親の力を込めて悪魔を殴り飛ばしました。
「ふーー、なんとか撃退出来ました。
婚約者の私が横に寝ているのに夜這いに来る悪魔がいるとは、油断も隙もありませんね」
婚約者の私ですらカイロス様の上に乗ったことがないのに……!
いえ、怒るポイントがずれていました。
それにしてもこの方、今までこんな体質でよく生き抜いてこれましたね。
帝国から王国までお供の御者一人でよくたどり着けたものです。
もしかしたら、生命力が人一倍強いのかもしれません。
「また、悪魔が襲ってこないように気をつけていなくて……」
そう思ってしばらく起きていたのですが、睡魔には勝てませんでした。
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