6 / 7
6話「ラーラの最後」
翌日、ラーラは遺体で発見された。
ラーラの隣には二枚目と評判の吟遊詩人の死体も転がっていた。
二人のバッグから金目のものがなくなっていたことから、地元の騎士団は物取りと判断した。
騎士団の話では吟遊詩人はラーラの浮気相手で、ラーラは吟遊詩人と駆け落ちしようとしていたらしい。
そして駆け落ち当日、運悪く強盗に遭遇し殺された……。
妻が殺されたことで夫である僕も疑われたが、騎士団の奴らは僕が国王の第一子であると知ると掌を返した。
そして王族の体裁を考えてかラーラの死は事故として処理され、ラーラと吟遊詩人の関係も、ラーラの妊娠も公にはされなかった。
王位継承権を捨てて結婚した女が死んだのに、不思議と悲しくはなかった。
男爵領に来てからのラーラの態度が酷すぎて、僕のラーラに対する愛情も関心も薄れていた。
今ならなぜラーラに惹かれたのかわかる……珍しかったんだ。
ラーラは王太子だった頃の僕の周りにはいないタイプの人間だった。
珍しいものに触れた好奇心を愛と勘違いしていた。
下町にいけば、ラーラのような女は掃いて捨てるほどいるというのに。
ラーラが死んだいま男爵領にいる意味はない。
しかし父との約束で男爵領から出ることも再婚することも許されていない。
残りの人生を一人寂しく過ごすのかと思ったら、胸がズキリと痛んだ。
ラーラの葬式に父や母が来てくれないかと期待した。
両親に今までの行動を誠心誠意侘びて、王都に戻してもらおうと思ったからだ。
しかし父も母もラーラの葬儀に来ることはなかった。
ラーラの葬儀に参列したのは屋敷の使用人だけだった。
ラーラは領民に好かれていなかったので、葬式に領民の姿はない。
そんな中、僕の学生時代の友人が葬儀に参列してくれた。
ルイス・ニクラス伯爵令息、いや卒業後家督を継いだから今は伯爵か。
僕が王太子だった頃、クラスメイトのよしみで派閥に入れてやった地方出身の貧乏伯爵家のルイスが、今は僕より高い身分にいるのかと思うと複雑な気分だった。
ルイスの治める伯爵領と僕の統治する男爵領は隣同士。
彼がラーラの葬儀に参列してくれたのは旧友としてのよしみというより、隣の領地を治める伯爵としての義理だろう。
ルイスは商売をやっていてよく王都に行くらしい。パーティーで弟と会話することもあるという。
幼い頃から僕の側近を務めていた公爵令息や侯爵令息に比べて財産が少ないというだけで、ニクラス伯爵家は貧乏ではなかった。
少なくとも今の僕の何倍もお金を持っている。
他に王都のことを聞ける相手もいないので、ルイスに王都のことを尋ねた。
「なぜ父上と母上はラーラの葬儀に参列しないのか?」と。
ルイスは心底呆れた様子でこう答えた、
「王位継承権を剥奪した息子の嫁、しかもかつて平民だった女の葬儀に陛下や王妃様が参列なさるはずがないでしょう」と。
「僕は自ら王位継承権を放棄したんだ、剥奪されたわけじゃない」
僕がそう反論すると、ルイスは王都でのことを教えてくれた。
あなたにおすすめの小説
条件は飼い犬と一緒に嫁ぐこと
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
恋愛
ダリヤ・ブベーニン伯爵令嬢は、姉のベリンダに虐げられる日々を送っていた。血の繋がらない、元平民のダリヤが父親に気に入られていたのが気に食わなかったからだ。その父親も、ベリンダによって、考えを変えてしまい、今では同じようにダリヤを虐げるように。
そんなある日、ベリンダの使いで宝石商へ荷物を受け取りに行くと、路地裏で蹲る大型犬を見つける。ダリヤは伯爵邸に連れて帰るのだが、ベリンダは大の犬嫌い。
さらに立場が悪くなるのだが、ダリヤはその犬を保護し、大事にする。けれど今度は婚姻で、犬と離れ離れにされそうになり……。
※この作品はベリーズカフェ、テラーノベルにも投稿しています。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
断罪された薔薇の話
倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。
ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。
とても切ない物語です。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。
断罪するならご一緒に
宇水涼麻
恋愛
卒業パーティーの席で、バーバラは王子から婚約破棄を言い渡された。
その理由と、それに伴う罰をじっくりと聞いてみたら、どうやらその罰に見合うものが他にいるようだ。
王家の下した罰なのだから、その方々に受けてもらわねばならない。
バーバラは、責任感を持って説明を始めた。