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16話「愛しい僕のソフィア」最終話
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「待ってくれ!」
僕は椅子から立ち上がり、ソフィアを抱き寄せ僕の腕の中に閉じ込めた。
彼女の体は小刻みに震えていた。
か弱い乙女に先に告白をさせ、泣かせてしまうなんて僕は男として最低だな。
「あの……? お義兄様……!?」
ソフィアは顔を茜色に染め困惑している。
ソフィアの心臓の鼓動が伝わってくる。
愛しい、愛しい、僕のソフィア。
誰にも渡さないよ。
これからはずっと僕の物だ。
「僕も初めて会ったときからずっとソフィアを義理の妹としてではなく一人の女性として見ていた。
僕もソフィアのことが大好きだよ。
妹としてではなく異性として愛している」
少し体を離しソフィアの目を見て伝えると、ソフィアの顔がりんごのように朱色に染まっていく。
僕はソフィアの涙をハンカチで拭い、彼女の頬に手を添え唇に優しく口づけを落とした。
僕の唇がソフィアの唇に触れた瞬間、彼女の体がピクンと震えた。
その反応が可愛くて、どうしようもなく愛しくて、僕は触れるだけの口づけを何度も落とした。
唇を離すとソフィアが潤んだ瞳で僕を見上げてきた。
ああ……可愛い! 好きだ! 放したくない!
キスだけでは我慢できない!
両思いになったばかりだが、ソフィアを僕の寝室に連れ込みたい!
僕の脳がそんな邪な思いに支配されたとき、背後から尋常でない殺気と研ぎ澄まされた冷気を感じた。
恐る恐る振り返ると……そこには鬼の形相をした、いや本物の鬼でも裸足で逃げ出すほど恐ろしい顔をした義父が仁王立ちしていた。
恐怖で心臓が止まるかと思った。
その後僕はソフィアから引き剥がされ、義父に長い長いお説教を食らうことになる。
それでもめげずに義父に「ソフィアと婚約したいです」と告げると、義父に般若の形相で睨まれた。
その時はもののたとえではなく心臓が一瞬停止した気がする。お花畑のある河原の向こう岸に幼い時に亡くなったお祖母様を見た。
義父は数々の難題を僕に与え、その課題をクリアしたら結婚してもいいと告げた。
これは義母とソフィアの助言があって叶ったことだ。
義母はソフィアの実母だけあって聖女のように心が広く優しい人だった。
これは後で知ったことだが、僕に婚約者を決めなかったのも、ソフィアを外に出さなかったのも、僕たちが互いに惹かれ合っていることに気づいた義母の配慮だった。
義母はずっと僕たちのもどかしい関係を見守っていてくれたのだ。
義母には一生頭が上がらないな。
義父の出した課題を全てクリアして、ソフィアとの婚約に取り付けるのは二年後のこと。
ソフィアと結婚するのはさらにその一年後のことだ。
さらにその一年後には俺たちの間にソフィアそっくりの女の子が生まれ、
その十数年後「お嬢様を僕にください!」と言いに来た男を僕が抹殺しようとしてソフィアと義母に止められ、
あの日の義父の気持ちが痛いほどわかった僕が、
娘の結婚式の夜に思い出を肴に義父と酒を酌み交わすことになるのは……遥か未来の話。
――終わり――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも「楽しい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、いいねとブックマークで応援いただけると大変励みになります。
どうぞよろしくお願いします!
【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。
「彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方
(紙の書籍が全国の書店に行き渡るのは2月4日頃になると思います)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804
こちらもよろしくお願いします。
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彼女の体は小刻みに震えていた。
か弱い乙女に先に告白をさせ、泣かせてしまうなんて僕は男として最低だな。
「あの……? お義兄様……!?」
ソフィアは顔を茜色に染め困惑している。
ソフィアの心臓の鼓動が伝わってくる。
愛しい、愛しい、僕のソフィア。
誰にも渡さないよ。
これからはずっと僕の物だ。
「僕も初めて会ったときからずっとソフィアを義理の妹としてではなく一人の女性として見ていた。
僕もソフィアのことが大好きだよ。
妹としてではなく異性として愛している」
少し体を離しソフィアの目を見て伝えると、ソフィアの顔がりんごのように朱色に染まっていく。
僕はソフィアの涙をハンカチで拭い、彼女の頬に手を添え唇に優しく口づけを落とした。
僕の唇がソフィアの唇に触れた瞬間、彼女の体がピクンと震えた。
その反応が可愛くて、どうしようもなく愛しくて、僕は触れるだけの口づけを何度も落とした。
唇を離すとソフィアが潤んだ瞳で僕を見上げてきた。
ああ……可愛い! 好きだ! 放したくない!
キスだけでは我慢できない!
両思いになったばかりだが、ソフィアを僕の寝室に連れ込みたい!
僕の脳がそんな邪な思いに支配されたとき、背後から尋常でない殺気と研ぎ澄まされた冷気を感じた。
恐る恐る振り返ると……そこには鬼の形相をした、いや本物の鬼でも裸足で逃げ出すほど恐ろしい顔をした義父が仁王立ちしていた。
恐怖で心臓が止まるかと思った。
その後僕はソフィアから引き剥がされ、義父に長い長いお説教を食らうことになる。
それでもめげずに義父に「ソフィアと婚約したいです」と告げると、義父に般若の形相で睨まれた。
その時はもののたとえではなく心臓が一瞬停止した気がする。お花畑のある河原の向こう岸に幼い時に亡くなったお祖母様を見た。
義父は数々の難題を僕に与え、その課題をクリアしたら結婚してもいいと告げた。
これは義母とソフィアの助言があって叶ったことだ。
義母はソフィアの実母だけあって聖女のように心が広く優しい人だった。
これは後で知ったことだが、僕に婚約者を決めなかったのも、ソフィアを外に出さなかったのも、僕たちが互いに惹かれ合っていることに気づいた義母の配慮だった。
義母はずっと僕たちのもどかしい関係を見守っていてくれたのだ。
義母には一生頭が上がらないな。
義父の出した課題を全てクリアして、ソフィアとの婚約に取り付けるのは二年後のこと。
ソフィアと結婚するのはさらにその一年後のことだ。
さらにその一年後には俺たちの間にソフィアそっくりの女の子が生まれ、
その十数年後「お嬢様を僕にください!」と言いに来た男を僕が抹殺しようとしてソフィアと義母に止められ、
あの日の義父の気持ちが痛いほどわかった僕が、
娘の結婚式の夜に思い出を肴に義父と酒を酌み交わすことになるのは……遥か未来の話。
――終わり――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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著者 / まほりろ
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方
(紙の書籍が全国の書店に行き渡るのは2月4日頃になると思います)
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夢駆様
感想ありがとうございます!!(*´∀`*)✨💕
義理の親子が目から氷魔法を出す光景は、傍から見ていたら、結構笑えるものかもしれません(*´艸`*)
ぱら様
最終話まで感想ありがとうございます!(*´∀`*)✨💕
完結乙ありです!✨😄
義父の難題……
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