妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ

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33話「薬草がある場所と国の礎」

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二日後の夜――

ヴォルフハート王国、離宮――

国王陛下のお見舞いに行った二日後の夜のことでした。

そろそろ休もうかと思っていた時、離宮のドアが激しく叩かれました。

クレアさんはすでに宮殿に戻っていたので、離宮には私とフェルしかいません。

ドアを開けると、王太子殿下が険しい顔で立っていました。

彼をリビングに招き入れ、お茶を出しました。

彼は酷く気落ちした様子で「解毒ポーションの材料のエントギフテンデス・グラースと、疲労回復の効果のあるエアホーレンダス・ブラットが見つからない」そう漏らしました。

殿下は王宮の学者や医者を総動員し、図書館で文献を調べ、王都中の薬草園、雑貨店、薬屋、病院に兵士を派遣し、薬草を探させたそうです。

それでもエントギフテンデス・グラースと、エアホーレンダス・ブラットは見つからなかったそうです。

王妃様には疲労回復の魔法をかけたので、エアホーレンダス・ブラットが見つからなくても、彼女はそのうち回復するでしょう。

問題なのはエントギフテンデス・グラースです。

これがないと解毒ポーションが作れず、国王陛下の毒を消すことができません。

「古い文献に、その昔ドゥンクラー・ヴァルトにエントギフテンデス・グラースが生息していたと記されていた。
 俺は明日、ドゥンクラー・ヴァルトに薬草を探しに行く」

殿下は、眉間に皺を寄せ厳しい表情でそう言いました。

クレアさんから聞いたことがあります。

ドゥンクラー・ヴァルトには恐ろしい魔物が出ると。

今は誰も近づかないと。

彼はそんな場所に一人で向かおうとしているのですね。

「王太子殿下、ドゥンクラー・ヴァルトに行くなら私も同行させてください」

「君は自分の言っていることがわかっているのか?
 あそこは魔物が出て危険だ」

彼は厳しい表情で私を見据えました。

「危険な場所だからです。
 それに、薬草を探すなら一人よりも二人の方がいいと思います」

「アリーが行くなら僕もついて行くのだ!
 薬草については、この中で僕が一番詳しいのだ」

「ありがとうフェル。
 あなたならそう言ってくれると思ったわ」

実は彼がそう言ってくれるのを待っていました。

私が危険な場所に行くと言ったら、彼はついてきてくれると思ったんです。

誰もエントギフテンデス・グラースの実物を見たことがありません。

妖精のフェルを連れて行くのが一番です。

「僕はエントギフテンデス・グラースの本体だけでなく種も見分けることができるのだ。
 枯れた沼地の奥底などに、種が保存されている可能性もあるのだ」

「さすがだわ、フェル。
 頼りにしているわ」

フェルと一緒なら鬼に金棒ですね。

「君たちの気持ちはありがたい。
 だがやはり危険だ」

「危険は承知の上です。
 ですから、魔物退治は王太子殿下にお任せします。
 殿下が魔物を退治している間に、私たちは薬草を探します。
 魔物を倒しながら薬草を探すなんて無茶です。
 陛下と王妃様を助けたいんでしょう?
 使えるものは何でも使ってください」

王太子殿下は目をパチクリとさせていました。

「この国の君に対する対応は良かったとは言えない。
 なのに君はなぜそこまでしてくれるんだ?」

殿下は不思議そうに訪ねてきました。

「確かに最初は歓迎されていませんでした。
 ですがそれは私の悪い噂が広がっていて、彼らがそれを信じてしまったからです」

私が彼らの立場でも、きっと悪い噂を信じてしまったと思います。

この国に来たばかりの私は、噂を肯定するような酷い服装をしていましたから。

「私がじゃがいもを育てて皆に配ってからは、皆さんとても良くしてくださいました。
 それに、感謝されるのってとっても気分がいいんですよ」

街で炊き出しをした時、皆感謝してくれました。

「私はこの国の民を愛してしまったのです。
 彼らの笑顔を守りたいと思ってしまったのです」

私は、じゃがいもを美味しそうに食べてくれた国民の笑顔を思い出しました。

「国王陛下と王妃様と王太子殿下は国の礎ですわ。
 民の平穏な生活を守る為にも、王族の方々には健康でいてもらわなくては困ります」

飢饉や魔物の被害、その上このタイミングで王族に不幸があったら民の受けるダメージは計り知れません。

「王太子殿下がいなくなったら、民は心から笑うことはできないでしょう。
 それに殿下がいなくなったら、誰が魔物から街を守るのですか?」

国民にとって王族はかけがえのない存在。

特に自ら兵を率いて魔物と戦う王太子殿下は、この国に欠かせない存在です。

「王太子殿下がこの国を守りたいように、私も民の笑顔を守りたいのです」

そう言ってにっこりと微笑むと、殿下は口を少し開き顔を赤らめました。

「完敗だ。
 君のような女性を悪女と決めつけ、離宮に閉じ込めていた自分が恥ずかしい」

彼は苦しそうに目を伏せました。

「その件につきましては先日謝罪していただきました。気にしなくて大丈夫ですよ」

私が穏やかに微笑むと、彼は苦笑いを浮かべました。

「悔しいが、薬草について俺は素人だ。
 魔物は必ず俺が倒す。
 君たちに危害を加えさせない。
 アリアベルタと妖精殿は、俺が魔物と戦っている間に薬草を探してほしい」

殿下はそう言って頭を下げました。

「もちろんです、殿下」

「アリーが協力すると言ったから、僕も全力で協力するのだ」

明日は朝早くから薬草を探すことになりそうです。

今日は早めに休みましょう。

ドゥンクラー・ヴァルトはどんなところなのでしょうか?

魔物は怖いけど、王宮の外に出るのも、森で薬草を探すのもちょっとだけ楽しみです。




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