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3話「思い残したこと」
しおりを挟む死後、幽霊になった私は神を名乗る男の元にいた。
神様は私に、懺悔の言葉を口にしながらビービー泣いてる陛下と、血を吐きながら泣いて謝る殿下と、涙と鼻水を垂らしながら謝罪している聖女様の映像を見せてくれたからだ。
彼らの謝罪対象は私のようだ。
「死にづらいわ……。
せめて悪意を込めて毒でも盛ってくれれば、来世で復讐するなり、時間を巻き戻して人生をやり直すなりできたのに……」
善意で殺されたので復讐しづらい。
ビービー泣かれたのでは成仏もし辛い。
「で、神様は私にこんな映像を見せてどうしたいの?」
「いや、君に後悔があるなら未練を晴らす手助けをしてあげようと思って」
イケメンで無駄にキラキラしてる神様はそう言った。
「後悔……?」
「そうだよ。家族で旅行に行きたかったとか、美味しいものを食べたかったとか、素敵な恋人が欲しかったとか、溺愛されたかったとか」
「そうね未練といえば……、
来週開く建国記念パーティーの警備の最終打ち合わせがまだだったし、
北部地方の水害対策会議に提出する資料が作成途中だったわ。
それから再来月に上位貴族の夫人を集めて社会福祉について話し合うお茶会の招待状の用意がまだだったし、
隣国の国王夫妻の誕生日プレゼント選びに、
来年度の王立学園の予算編成、
昨年のスタンピードの影響で親を亡くした子供たちのための孤児院の建設、
地方の農家の次男の人頭税を免除して学校に通わせる法案も通したかったし、
王都の井戸をポンプ式にしたかったし、
聖女様の国のアラビア数字を導入して計算をしやすくして、年貢を固定性から変動性に変えたかったわ!
考えてみたら私、未練が山程あるわ!」
「……えっ?
君の未練って仕事のことだけ??」
神様がドン引きしていた。
「王太子の側室の私に他にどんな未練があるとお思いですか?」
「王太子妃教育につかった時間で友達を作りたかったとか、家族でのんびり旅行に行きたかったとか、自分だけを愛してくれる恋人や夫がほしかったとか……」
「そんな気持ちは側室になるとき捨てました!
そんなネガティブな思いを抱えて睡眠時間一日平均ニ時間で四年も側室の激務をこなせるとお思いですか?」
「そんなものなんだ……」
「そんなものですわ。
かつて王国の虎と呼ばれ賢王として知られた陛下も今や高齢、
殿下は無理をすると吐血してしまうほど病弱、
王太子妃である聖女様は異世界人でこの国の文字も読めない、
側室の私の他に誰がこの国を守るというのですか!」
「分かった。
じゃあ未練を晴らしておいで、今度は過労死しないように丈夫な体を与えよう。
一人で国を守れるような強い体をね」
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