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二章
22話「お金がある」
しおりを挟む「…………お金がない!」
「これ以上シフトは入れられないし、そうなると仕事を掛け持ちするしか……」
「あっ、そうか!
どうせこの世界からいなくなるなら金融会社からお金を借りてトンズラしても……!
いや、それはだめでしょう!
人として!
でも他に方法は……」
母さんのいる世界に来て二週間が経過した頃。
母さんはお財布と通帳とにらめっこしながら独り言をつぶやくことが増えていた。
「あっ、母さん。
宝くじで儲けたお金を母さんの銀行口座に振り込んでおいたから」
「ふぇ??」
僕の言葉を聞いた母さんが目を点にしてる。
おかしいな、僕がお金を稼いだら母さんは喜んでくれると思ったのに。
「えっと……それはどういう??」
「年末に母さんにスマホ借りたことあったよね?」
「うん」
スマートフォンという機械を発明した人は凄い。
王宮の図書館の何万倍……いや何億倍もの情報があの中に入っていた。
「母さんの名前で数字が当たる宝くじを買ったら一等が当たった。
キャリーオーバーしてたから十億円手に入った」
「ふぇぇぇえええ!?」
多分僕にはどの国の言葉でも理解できてしまう特殊スキルがあると思う。
そのスキルのお陰でこの世界の言葉は簡単に理解できた。
僕がこの世界の仕組みを理解するのにそんなに時間はかからなかった。
お金も割と簡単に稼げた。
「過去のデータを分析すれば、宝くじのあたり番号を予想するのなんか簡単だよ」
母さんは一瞬フリーズしていたが……、
「やっぱりあたしの遺伝子って凄い!」
そういう結論に達したらしい。
つまり僕が賢いのは母さんの遺伝子の力が大きいと、母さんは言いたいようだ。
母さんは元いた世界ではたった一人の聖女様だったわけだし、特別な存在だと思う。
父さんも神話の時代の生き物を手懐ける特殊スキルを持ってるし、二人の遺伝子が合わさって偶然僕みたいなのが生まれたのかな?
「母さんの名義でこのアパートの隣の部屋を借りて父さんの工房にしておいた。
それから倉庫を借りて公園に隠しておいた次元を超える機械をしまった。
それからインターネット通信販売で、次元を超える機械の修理に使う道具や部品を色々と買った。
残りは母さんの通帳に振り込んでおいたから好きに使って」
次元を超える機械をいつまでも公園に隠しておけないからね。
「どうしたの母さん?」
「大金が振り込まれているとわかった瞬間、通帳を持つ手が震えて……」
母さんの通帳を持つ手は震えていた。
ちょっと稼ぎ過ぎたかな?
「それから言い忘れてだけど、父さんが作った木彫りの置物をネット通販で売っておいた」
「コルトは天才的な芸術家だから凄い高値で売れたでしょう!」
母さんの父さんに対する評価はかなり高い。
「一体一万円で売れたけど、経費を考えるとトントンかな」
だけどこの世界の他の人たちには父さんの才能が理解できないようだ。
「うん。まあ……最初はそんなもんだよ。
芸術家は価値を理解されるのに時間がかかるし……」
それでも母さんの父さんに対する評価は変わらなかった。
僕も父さんには木彫師の才能があるって信じてるよ!
「あれ? でも数字で番号を当てる宝くじって十二月二十五日に売ってたかな?」
「そのへんは作者も詳しくないんだ。ふわっとさせとこう」
不自然な言葉が僕の口から出ていた。僕は今誰かに操られているのか?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
※作中、アビーが数字を当てる宝くじで簡単に一等を当てている描写がありますが、この作品はフィクションです。
現実の宝くじの購入にはリスクが伴います。
これらのものに手を出すときはリスクをお考えの上、自己責任で購入してください。
この作品を読んで宝くじを購入し、大外れしたとしても、作者は一切の責任を負いません。あらかじめご了承ください。
※宝くじの購入できるのは20歳以上です。作中で未成年が宝くじを購入していますがこの作品はフィクションです。
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