【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ

文字の大きさ
1 / 50

一話「断罪された悪役令嬢」

しおりを挟む
「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」


宮殿で開かれた卒業パーティは、青年の凛とした言葉により静寂に包まれた。

皆の視線がパーティ会場の中央にいる栗色の髪の青年に集まる。

コーエン・グランツ、濃い茶色の髪、黒曜石の瞳、高い身長に、整った顔立ち。第二王子である彼に、学園の女生徒が一度は憧れる存在。

コーエン王子は端正な顔を憎悪に歪め、目を釣り上げ、かつての婚約者を睨んでいた。

婚約破棄されたディアーナは、コーエン王子の側近であり学友でもある騎士団長の息子ゲオルグ・ホーナーによって取り押さえさられ、床に膝をついている。

高い位置で結わえていた髪が乱れ、金の髪が数本たれる。

「俺はユリア・マウラー嬢との真実の愛に生きると決めたのだ!」

コーエン王子の隣に佇むのはピンクブロンドのサラサラのストレートヘアに金色の目の愛らしい顔立ちの少女。

庇護欲をかきたてる小柄な少女は可憐とか、清楚とか、妖精とか言う言葉がぴったりで「クリンゲル学園の天使」と呼ばれていた。

ユリアはコーエン王子に寄り添い、コーエンはユリアの肩を抱いた。

「ディアーナ、貴様がユリアにしてきた数々の悪事を俺が知らないとでも思っていたのか! マルク、ディアーナの罪状を述べよ!」

「はい殿下」

マルクと呼ばれ青い髪の中性的な容姿の美青年が一歩前に出た。マルク・ベーア、司祭の息子でコーエン王子の学友にして側近。

マルクは手に持った紙を読み上げる。

「ディアーナ・フォークト公爵令嬢、あなたはユリア・マウラー男爵令嬢に嫉妬し、マウラー嬢を階段から突き落とし全治一週間の怪我をおわせた。さらにマウラー嬢の食事に毒を盛りマウラー嬢を殺そうとした、しかしマウラー嬢は毒の入った食事を少量しか食べず暗殺に失敗。すると今度は刺客を放ちマウラー嬢を殺そうとした」

マルクが涼やかな声でディアーナの罪状を読み上げる。ディアーナに向けられたその目は氷のように冷たい。

ディアーナの悪事を知らさらされ、会場からどよめきが起きる。

刺すような視線がディアーナに注がれる。

「私がそんなことをしたという証拠があって?」

ディアーナはマルクをキッとに睨みつけ、白々しく答えた。

「証拠なら僕が持っている」

そう言って一歩前に出たのは、金色の髪にサファイアの瞳をした見目麗しい青年フリード・フォークト。

フリードはディアーナの義理の兄で、コーエン王子の近衛隊に所属し隊長をつとめていた。

「ディアーナの机の引き出しに、マウラー嬢に盛られた薬と同じ薬があった」

フリードの手には茶色い小瓶が握られていた。

ディアーナは人を殺す目つきでフリードをねめつける。

「ディアーナ、君の犯した罪はすでにお父様に……フォークト公爵に伝えてある、君は今日付けでフォークト公爵家を勘当された」

義兄の言葉にディアーナがひっと息を呑む。

もはや彼女を守る盾も、彼女のプライドを支える貴族という地位もない。

「ディアーナ・フォークト! 貴様の顔など見たくもない!」

コーエン王子が怒りに顔を歪め、冷たく言い放つ。

ディアーナを取り押さえていたゲオルグが、彼女を立たせると出口へと連れて行った。

「これで幸せになれるねユリア」

「コーエン様」

コーエン王子とユリアが向かい合い手を取り合う。真実の愛で結ばれた二人を会場にいる誰もが祝福した。

扉の前まで連れて来られたディアーナが、ピタリと足を止める。

「ゲオルグ様、私、殿下に婚約破棄され、公爵家を勘当され、今までの悪事を深く反省しましたの。潔く罪を認め牢で償いをたしますわ」

悪女ディアーナのしおらしい態度に、彼女の腕を掴んでいたゲオルグが顔をしかめる。

「ですがこのまま去るのは寂しいのです。フリード様は義理とはいえ兄、最後にお兄様とお話がしたいのです。なぜ私がこのような悪事を犯したのか理由を説明したいのです。少しだけ兄と話す時間をいただけませんか?」

悲しげに目を伏せ、ゲオルグを振り返る。

「しかしそれは……」

ゲオルグが言い淀む。

「お願いします。あなたしか頼れる人がいないのです」

ディアーナは目に涙を浮かべ胸の谷間を強調し、ゲオルグを見つめた。

大きく胸の部分がカットされた真紅のドレスからは、今にも胸が溢れ落ちそうだった。

騎士団長の子息として、剣術に励んできたゲオルグだが、女性関係には疎く、親族以外の女性とはろくに話もしたことがなかった。

妖艶な色気をまとうディアーナに泣きつかれ、ゲオルグは酷く動揺した。

ディアーナはその一瞬の隙きをつき、ゲオルグを突き飛ばすと、会場の中心にいるユリアめがけて走り出す。

足に仕込んでいたナイフを取り出し、ユリアに襲いかかる。

数々の暗殺計画に失敗したディアーナは、今日この手でユリアを殺そうと計画していたのだ。

「あなただけは許さない! 道連れにしてやる!!」

コーエン王子がユリアを抱きしめ自身を盾にする。

マルクは呆然と立ち尽くし、持っていた書類をバラバラと床に落とした。

キィィィィィンン!

金属と金属がぶつかる音が響く、ディアーナが持っていたナイフが宙を舞い、くるくると回転して突き刺さった。

ナイフの落ちてきた近くにいた生徒が「ひぃっ!」と声を上げる。

ディアーナの肩から腹にかけて深く斬られていた。義兄のフリードに斬られたのだ。

「お兄様……なぜ……」

その言葉を最後にディアーナは床に崩れ落ちた。彼女を中心に赤いシミが広がる。

会場にはどよめきがおこり、複数の女性客が「きゃぁぁぁぁっっ!!」と甲高い声を上げた。

近衛隊長のフリードは血に染まった剣を手に、温度のない目で事切れた義理の妹を見下ろす。

「すまないディアーナ……最後は僕の手で苦しまずに殺して上げたかった」

フリード公子の吐いた言葉は、会場のざわめきの中に消えていった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


本作は「第15回恋愛小説大賞」にエントリーしています。少しでも面白いと思っていただけたら、投票していただけると嬉しいです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


2022/01/28新作を投稿しました。読んでいただけると嬉しいです!
「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス

上記の作品は「第15回恋愛小説大賞」にエントリーしています。少しでも面白いと思っていただけたら、投票していただけると嬉しいです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


下記8作品を「第15回恋愛小説大賞」(2月1日~2月28日開催)にエントリーしています。少しでも面白いと思っていただけたら、投票していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。


①「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス

②【完結】 「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/627457471 #アルファポリス

③【完結】「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/965491267 #アルファポリス

④【完結】「お姉様ばかりずるいわ!」と言って私の物を奪っていく妹と、「お姉さんなんだから我慢しなさい!」が口癖の両親がお祖父様の逆鱗に触れ破滅しました
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/893514362 #アルファポリス

⑤【完結】「王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される~王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/845571297 #アルファポリス

⑥【完結】「神様、辞めました~竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/155576468 #アルファポリス

⑦【完結】「真実の愛に生きるのならお好きにどうぞ、その代わり城からは出て行ってもらいます」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/706584153 #アルファポリス

⑧【完結】「転生したら少女漫画の悪役令嬢でした~アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました~」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/809452282 #アルファポリス




しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

ルンルン気分な悪役令嬢、パンをくわえた騎士と曲がり角でぶつかる。

待鳥園子
恋愛
婚約者である王太子デニスから聖女エリカに嫌がらせした悪事で婚約破棄され、それを粛々と受け入れたスカーレット公爵令嬢アンジェラ。 しかし、アンジェラは既にデニスの両親と自分の両親へすべての事情を説明済で、これから罰せられるのはデニス側となった。 アンジェラはルンルン気分で卒業式会場から出て、パンをくわえた騎士リアムと曲がり角でぶつかって!?

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...