転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

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本編

早朝からの準備

 次の日、サリさんの声がけで元気に目覚める。
 外はまだ暗い……お茶会ってこんなに早朝から準備するものなのか……お茶飲んで~お菓子食べて~ウフフ~と、思い描いていたお茶会とは違うような気がする。
 昨晩、爺さんとキースな月光さんから今日のお茶会に向けて最後の詰め込み教育をされた。基本のマナーなら大丈夫なはずだ。
 サリさんにオーレリア王女から貰ったドレスを着るのを手伝ってもらう。

「少し、お化粧も施しましょう」
「はい」

 お化粧か……こちらのお化粧に関してはあまり詳しくない。マリッサも近所の女性たちも日常的に化粧をしていない。
 サリさんが新品の化粧品を箱から出す。昨日、爺さんが買ってきたという。爺さんが選んだのだろうか? 化粧品の入っている箱があまりにも豪華なので、高級品なのだろう。値段は考えたくない……
サリさんが軽く私の頬にチークをはたき、唇に桃色をのせる。
 髪をセットしてもらい鏡に映る自分を見て、驚く。
 そこに立っていたのは覚えている前世の――

「貴族みたい」
「はい。お嬢様はとってもきれいですよ」

 サリさんにお礼を言い、リビングルームに向かいラジェと合流する。ラジェの正装に心の中で母目線になりながら目を細める。
ラジェが凛々しくて、なんだか急に大人びて見える。

「ラジェ、おはよう。正装、凄く似合っている」

 ラジェに声をかけたが返事がない。
 あれ、固まっている? もしかして今日のお茶会のことで緊張しているのかな。
 もう一度手を振りながら声をかける。

「ラジェ、おはよう……?」
「あ! うん。ミリーちゃん、そのドレスよく似合っているよ」
「ありがとう!」

 なんだかラジェの耳が赤いような気がするけど、本当に大丈夫かな。
 それからマナーについて爺さんにしつこく最終確認をさせられる。でも、これも私とラジェのためだ。
 爺さんに感謝を伝える。

「ギルド長、マナー講座もですが、化粧品まで揃えていただきありがとうございます」
「……化粧品はそのままお主にやる。私が持っていても使いようがないからな」

 化粧を施した爺さんの顔を想像して吹き出すと、爺さんに唸られる。

「お主、王女の前でそんな失態をするでないぞ」
「頑張ります!」

 キリッとした表情で告げるが、爺さんの不安顔は拭えなかった。

 朝日が顔を出し、出発の時間になった。爺さん、キースな月光さん、それからラジェと一緒に馬車に乗り込む。お茶会のある伯爵邸までは、ここから三十分ほどだという。途中でお腹が空くかもとドレスの中には最後の一粒のチョコレートを入れたネコの財布を忍ばせている。大丈夫、溶けないように氷魔法を時折掛けているから!
 窓の外を眺めていた爺さんに尋ねた。

「今日のお茶会には、本当に何も持っていかなくてよかったのですか?」
「うむ。今回はいらない」

 なんだか手ぶらで訪問するのは気が引ける。そんなことを考えていると、爺さんが前のめりになりながら言う。

「それからお主、分かっていると思うがオーレリア王女にちょこれーとの話は絶対にするでないぞ」
「分かっていますよ。大人しくマナーに従ってお茶を飲んで帰ってきますから。任せてください!」

 元気よく返事をすると、爺さんの眉間に皺が寄った。

「教えたマナーは最低限な貴族のマナーだ。だが、お主が訳の分からないふざけたことをしなければ問題はない」
「そんなことはしませんよ」
「私もキースもお茶会には参加できない。ラジェ、頼んだぞ」
「は、はい」

 急に話を振られたラジェが戸惑いながら返事をした。
 クッ……私ではなくラジェに頼むあたり、爺さんに全然信用されていない。まぁ、過去のいろいろを考えると爺さんの私を疑う気持ちは分からないでもない。私だってやればできるというところを見せないとね。
 お茶会への招待は私とラジェだけだ。爺さんと月光さんは伯爵邸への立ち入りを許されていない。
爺さんたちにマナーを叩き込まれている時に聞いた話によると、オーレリア王女は未婚の淑女なので、寡夫である爺さんを女性のみが集まるお茶会に誘うことはできないらしい。オーレリア王女はレオさんを狙っているので、男性との接触は気を付けているのかもしれない。
月光さんは……それとは全く別な理由で立ち入りを禁じられている。完全に危険人物認定されているのだろう。
 爺さんは、お茶会にこちらから付き添いを付けられないことに最後まで小言をこぼしていた。でも、文句があったとしてもお茶会を断るという選択肢など最初からなかったのだ。

 伯爵邸に到着すると、ウィルさんとオーレリア王女の侍女のリュヤさんが出迎えてくれる。レオさんは本日どこかに視察で不在と事前に知らされていた。すでに伯爵邸にはいないようだ。
 ウィルさんが爺さんに貴族の顔で挨拶をする。

「ローズレッタ殿、本日は急なことで、準備が大変であったろう。ご苦労だった」
「ひ孫には身に余る役割をいただき、感謝に耐えません」

 爺さんが真顔で答える。爺さんの声のトーンにしても、嫌味を含んだ言い方だ。ウィルさんの笑顔も軽く引き攣っている。
 爺さんはこの後に商業ギルドへ向かい、夕方に迎えに戻ると伝えられる。月光さんも爺さんに付き添う予定なのだろうか……キースな月光さんを見上げるとにっこりと微笑まれる。これはどっちだ……
 爺さんが私の肩に手を置き耳打ちをする。

「お主、問題ごとだけは起こすなよ。頼んだぞ」
「はーい。お祖父ちゃんもお仕事を頑張ってね」

 満面の笑みで言うと、爺さんは苦い顔をしながら馬車へと乗り込んだ。

「それではオーレリア王女殿下に会う前に客室へ案内する。リュヤ殿から必要な作法を覚えなさい」

 ウィルさんが丁寧に言う。他の人がいる手前、今日は貴族モードを続行するようだ。
 オーレリア王女に会う前に客室にてリュヤさんにブルガル帝国の作法を習う。王国とは違う部分もあるけど、問題ないと合格点をもらう。
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