転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

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本編

レオさんの魔法

 月光さんが何を考えているのか分からないけど、その間に少し冷静になれた。月光さんが抱えた気絶したままのラジェに視線を移し、反省する。

「ラジェの安全の確保が先でした……」
「ああ。だが、珍しく子供らしい反応だったな」
「珍しくって……」
「ラジェはひとまず避難させたほうがいい。そのあとに――」

 会話の途中で月光さんの胸元が光る。あ、これは、いつか見た爺さんの胸元で光ったものと同じものだ。

「なんですか、それ」
「通信用の魔道具だ」
「え? そのようなものがあったんですか!」

 どうやらモールス信号のように光の点滅で連絡を取れるらしい。連絡相手はもちろん爺さんだ。
 通信はある程度離れると途切れるらしいけど、それでも凄い。この世界の魔道具って私が思っているより進んでいる。私の知らないことがまだ多すぎる。
 通信の魔道具は、ネックレスに大きな魔石が付いた小型の円盤の形をしていた。分かる……これはぜったいに高いやつだ。

(いくらなのか怖くて聞けないけど……)

 月光さんが通信の魔道具の表面を小刻みに叩くと、再び小刻みに光る。

「ギルド長はなんと?」
「合流しろ、とのことだ。今回、かなり無理をして――」
「え?」

 風の音で月光さんがなんと言ったのか最後まで聞こえなかった。
 月光さんが片手を伸ばしながら言う。

「無事を確認したいのだろ。ほら、抱っこするから近くに来い」
「抱っこされなくても魔力はまだあります」
「莫大な魔力があることは知っている。だが、空を飛んでいるのがあの王太子に露見してもいいのか?」
「よくはないです……」
「なら、早く来い」

 そっと飛び、月光さんに大人しく抱っこされる。すると、すぐに月光さんが空を蹴りながらギラギラした船へと向かった。
 間近で見るレオ号は、まさに金持ち金キラ船だった。無数の灯りもだけど、船自体が黄金色に光っていた。いったいどういう原理なのだろう……
以前、レオさんのことをセレブ脛齧りニートだと思ったことがあったけど、この船はその印象に拍車をかけていた。
 月光さんがレオ号の甲板に着陸する。レオ号の騎士や船員は全員、目の前の沈む船を助けるために駆り出されているようで、私たちが船に乗り込んだのに気づいていないと思ったけど……甲板に足を付くと、船全体に薄い膜のような魔法が張ってあるのに気づく。

「気づいたか?」
「はい。これは誰の魔法ですか?」

 これは黒魔法だ。こんな船全体に黒魔法をかけるには相当な魔力が必要だ。そんな魔法を使える人って――考えられる人物は一人だ。

「そう焦らずとも、ご本人様の登場だ」

 月光さんが指を差した先に現れた人物は、予想通りレオさんだった。
普段の冒険者の身なりとはうってかわって上品な服装に身を包んだレオさんは、ザ王太子そのものの威厳と気品を前面に出していた。
 レオさんは黒魔法使いだったのか……私以外の黒魔法使いは初めてだ。
 今まで覚えているセレブ脛齧りニートの印象が強く、レオさんに魔法のイメージがどうしても浮かばない。王太子だってことすらいまだに実感が湧かず微妙な状態だ。こんなに卓越した黒魔法の使い手だとは考えもしなかった。さすがそこは王族ってことだ。
 レオさんは私を見ると、安堵の表情を浮かべるのと同時にこれ以上ないほどに目を大きく見開いた。

「その髪……」

 レオさんが何度も口に手を当てては下ろす。染粉がほとんど落ちてしまった私の髪だけど、そんなに驚くことだろうか? でも、そんなレオさんの姿より気になる人がその後ろにいた。船の柱の一本に必死にしがみ付いた爺さんだ……

「月光さん、ギルド長は何をしているんですか?」
「エンリケ様は……まぁ、察してやれ」

 爺さん、もしかして船がダメなのか? 記憶を巡ると、確かにヒントはあった。船での移動が必須な国に航海していないことや、何かもじもじして船の話を逸らすとかもあった。変な違和感がようやく繋がる。爺さんは船が苦手なんだ。
 爺さんに手を振りながら言う。

「私とラジェは大丈夫です! ギルド長は大丈夫ですか!」
「何がだ! 私は何も問題ない!」

 問題ないのならその蝉の物まねはなんなのだろう。爺さんの騒ぐ姿が拍車をかけて完全に蝉と重なってしまう。
 





**
2026年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
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