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本編
レオさんの魔法 2
月光さんが苦笑いをしながら言う。
「私が知っている限り、エンリケ様が自ら船に乗ったのはこれが二回目だ。それだけ、まぁ、心配していたということだ」
爺さんは幼少期の船の事故で、航海にトラウマがあるようだ。それでも、私たちのために来てくれた……蝉のままの爺さんの姿にすごく心が温かくなった。
そんな気持ちをかき消すように、どこからか大声が聞こえた。
「殿下! 上空、攻撃です!」
レオさんの視線を追うように沈む船の上空を見れば、夜空に打ちあがった黄色い星が光っていた。あ、違う――あれは、魔砲弾だ。
魔法口は塞いだはずだったのに、剥き出しになった場所から光が再び上がる。沈む船から誰かが攻撃しているんだ!
レオ号を魔法で守ろうと私が手を掲げるより先に、レオさんから強い魔力が膨張するのを感じた。すると、すぐに上空で魔砲弾が轟音と共に炸裂した。
きっと私以外は見えていないけれど、上空にはレオさんの黒魔法の痕跡が色濃く残っていた。二回目の魔砲弾もレオさんの黒魔法の防壁によって防がれた。
あんな黒魔法の使い方は知らない。黒魔法を何十層にも重ねて盾のようにぶつけ、攻撃を全て上空で爆発させていた。小船に向けて放たれた攻撃に至っては、黒魔法で包んで爆発させてそのまま海に落とすという芸当だ。レオさん凄い!
月光さんがため息をつきながら沈む船を睨む。
「あの船にはよっぽどの死にたがりがいるな。今の魔砲弾を撃った衝撃のせいで船が沈む速度が増した」
「え、じゃあオーレリア王女様とばあやさんが!」
軋むような音が聞こえると、船尾が上空に向かってせり上がっていた。あれって昔、映画で見たタイタニック号のような状態だ。時間がない。
(人目など気にしている場合ではない)
浮遊すると、レオさんもだけど爺さんも驚愕の表情で私を見た。あ、そういえば浮遊は爺さんにも見せたことなかったんだった。
もうバレちゃったからどうしようもない。今は人命救助優先だ。
レオさんを真っ直ぐに見る。
「船が沈むのを止めます。その間に船内の人たちを救出してください」
「ま、待て待て! 船が沈むのを止めるとはなんの話だ! おい!」
レオさんに説明している暇はない。船は刻一刻と沈み始めている。風魔法を使い、スピードを極限まで上げ、沈む船へと向かう。
沈む船の上空に立つと、船の手すりを上るオーレリア王女とばあやさんが見えた。後ろからは大臣とその一味らしき拉致犯たちが追っていた。
オーレリア王女もばあやさんも服のあちこちが破れ、ほぼ下着姿だった。オーレリア王女が波のような水魔法を展開しながら大臣たちを突き放そうとしているが、もう魔力が限界のようだ。
(あんな下着剥き出しで酷い……こんな拉致劇がなければラジェだって魔力消耗で気絶することはなかったんだ)
顔が熱くなるのを感じた。これは怒りだ。
私に追いついた月光さんが隣に立つ。ラジェはレオ号に置いてきてくれたようだ。
月光さんが少々息を切らしながら言う。
「突っ走るなとあれほど――」
「月光さん、あそこです」
超絶デカスポットライトを大臣とその一味に向けると、全員が動きを止めた。きっと向こうからは眩しすぎて何が起こっているのか分からないのだと思う。
「熱い! 熱いぞ! なんだこれは!」
大臣が叫んでいるのが聞える。熱い……?
月光さんが私の頭に軽く手を置くと、グリグリとドリルされた。
「魔力の出し過ぎだ。やつらを調理するつもりか? それに魔力が乱れている。平常心に戻れ」
自分の手を見れば、いろんな属性の魔力が溢れ出ていた。怒り任せになれば、商業ギルドで我を忘れた時の二の舞になってしまう。私の魔力の量なら本当に大臣たちを焼き鳥にしてしまう。
深呼吸をして心を落ち着かせる。漏れ出ていた魔力を引っ込めると、うなずきながら気を引き締める。
(落ち着いて。今は沈む船をどうにかしないと)
月光さんの目をしっかりと見ながら言う。
「もう大丈夫です!」
「それで、船をどうするつもりだ?」
「月光さん、オーレリア王女をお願いします! 私は船が沈まないようにします」
月光さんは訝し気に尋ねる。
「それはどうやってだ?」
「女の子は秘密が多いのです」
「それは、私が知らない魔法を使うのか?」
月光さんの綺麗な瞳が突き刺さる。なんだか顔が良いだけで調子が狂う。
「し、質問タイムには答えませんけど、できます!」
「そこまで言うのなら、できるのだろうな……だが、無理はするな」
「はい!」
「いい返事だ。だが、魔法、魔力とせっかく今まで隠してきたのに露見してしまうぞ。いいのか?」
「もうかなりやらかしちゃっていますよね?」
「それもそうだ。それなら私はあの姫君を助けるとするか」
月光さんが顔に似合わない低い声で笑うと、そのままオーレリア王女のもとまで急降下した。
「私が知っている限り、エンリケ様が自ら船に乗ったのはこれが二回目だ。それだけ、まぁ、心配していたということだ」
爺さんは幼少期の船の事故で、航海にトラウマがあるようだ。それでも、私たちのために来てくれた……蝉のままの爺さんの姿にすごく心が温かくなった。
そんな気持ちをかき消すように、どこからか大声が聞こえた。
「殿下! 上空、攻撃です!」
レオさんの視線を追うように沈む船の上空を見れば、夜空に打ちあがった黄色い星が光っていた。あ、違う――あれは、魔砲弾だ。
魔法口は塞いだはずだったのに、剥き出しになった場所から光が再び上がる。沈む船から誰かが攻撃しているんだ!
レオ号を魔法で守ろうと私が手を掲げるより先に、レオさんから強い魔力が膨張するのを感じた。すると、すぐに上空で魔砲弾が轟音と共に炸裂した。
きっと私以外は見えていないけれど、上空にはレオさんの黒魔法の痕跡が色濃く残っていた。二回目の魔砲弾もレオさんの黒魔法の防壁によって防がれた。
あんな黒魔法の使い方は知らない。黒魔法を何十層にも重ねて盾のようにぶつけ、攻撃を全て上空で爆発させていた。小船に向けて放たれた攻撃に至っては、黒魔法で包んで爆発させてそのまま海に落とすという芸当だ。レオさん凄い!
月光さんがため息をつきながら沈む船を睨む。
「あの船にはよっぽどの死にたがりがいるな。今の魔砲弾を撃った衝撃のせいで船が沈む速度が増した」
「え、じゃあオーレリア王女様とばあやさんが!」
軋むような音が聞こえると、船尾が上空に向かってせり上がっていた。あれって昔、映画で見たタイタニック号のような状態だ。時間がない。
(人目など気にしている場合ではない)
浮遊すると、レオさんもだけど爺さんも驚愕の表情で私を見た。あ、そういえば浮遊は爺さんにも見せたことなかったんだった。
もうバレちゃったからどうしようもない。今は人命救助優先だ。
レオさんを真っ直ぐに見る。
「船が沈むのを止めます。その間に船内の人たちを救出してください」
「ま、待て待て! 船が沈むのを止めるとはなんの話だ! おい!」
レオさんに説明している暇はない。船は刻一刻と沈み始めている。風魔法を使い、スピードを極限まで上げ、沈む船へと向かう。
沈む船の上空に立つと、船の手すりを上るオーレリア王女とばあやさんが見えた。後ろからは大臣とその一味らしき拉致犯たちが追っていた。
オーレリア王女もばあやさんも服のあちこちが破れ、ほぼ下着姿だった。オーレリア王女が波のような水魔法を展開しながら大臣たちを突き放そうとしているが、もう魔力が限界のようだ。
(あんな下着剥き出しで酷い……こんな拉致劇がなければラジェだって魔力消耗で気絶することはなかったんだ)
顔が熱くなるのを感じた。これは怒りだ。
私に追いついた月光さんが隣に立つ。ラジェはレオ号に置いてきてくれたようだ。
月光さんが少々息を切らしながら言う。
「突っ走るなとあれほど――」
「月光さん、あそこです」
超絶デカスポットライトを大臣とその一味に向けると、全員が動きを止めた。きっと向こうからは眩しすぎて何が起こっているのか分からないのだと思う。
「熱い! 熱いぞ! なんだこれは!」
大臣が叫んでいるのが聞える。熱い……?
月光さんが私の頭に軽く手を置くと、グリグリとドリルされた。
「魔力の出し過ぎだ。やつらを調理するつもりか? それに魔力が乱れている。平常心に戻れ」
自分の手を見れば、いろんな属性の魔力が溢れ出ていた。怒り任せになれば、商業ギルドで我を忘れた時の二の舞になってしまう。私の魔力の量なら本当に大臣たちを焼き鳥にしてしまう。
深呼吸をして心を落ち着かせる。漏れ出ていた魔力を引っ込めると、うなずきながら気を引き締める。
(落ち着いて。今は沈む船をどうにかしないと)
月光さんの目をしっかりと見ながら言う。
「もう大丈夫です!」
「それで、船をどうするつもりだ?」
「月光さん、オーレリア王女をお願いします! 私は船が沈まないようにします」
月光さんは訝し気に尋ねる。
「それはどうやってだ?」
「女の子は秘密が多いのです」
「それは、私が知らない魔法を使うのか?」
月光さんの綺麗な瞳が突き刺さる。なんだか顔が良いだけで調子が狂う。
「し、質問タイムには答えませんけど、できます!」
「そこまで言うのなら、できるのだろうな……だが、無理はするな」
「はい!」
「いい返事だ。だが、魔法、魔力とせっかく今まで隠してきたのに露見してしまうぞ。いいのか?」
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