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本編
カニパワー
海に沈み始めた船を浮かすほどの重力魔法を使えば、残っている魔力がさらにたくさん削れると思う。レオ号の小船が海に飛び込んだ船員を救出しているのが見える。
私が重力魔法で時間を稼ぐ間、レオさんが無事に全員救出してくれることに賭けるしかない。
船のせり上がった一番高いところにちょこんと立つ。
矢が掠った時に驚いて消えてしまった水魔法のカニたちを、私の回りに盾のように置く。
「よし!」
呼吸を整え、唱える。
「船を持ち上げて!」
重力魔法を船全体に流すと、海水に沈んでいた船尾が持ち上がり、船が再び水平を取り戻した。
「う、気分悪い」
がっつりと減る魔力に吐きそうになる。それなりに魔力を消費したでも、魔力はまだ枯渇には近くない。使っている間も少しは取り戻している。枯渇気絶活動で培った魔力はやはり半端ない。
(後はこのまま船をホールドだ)
急に浮いた船に恐怖する人の声も聞こえたが、中には船が沈むのが収まったと気付きレオ号から出ている救助舟に向かって助けを呼ぶもの者もいた。全員が大臣の一味というわけではない。
月光さんを見れば、オーレリア王女とばあやさんを俵担ぎのように抱えていた。
二人とも何が起こったか分からない顔をしたまま抵抗していたが、月光さんは澄ました顔をしていた。一国の王女様なのに扱いが少々雑だと思ったけど、月光さんなので驚きはしない。
少しずつ、この重力魔法のコントロールもできるようになってきた。気を抜くとガタガタと船が揺れてしまうけど……
月光さんがオーレリア王女を抱えたまま私の元へ合流すると、無造作に二人を床へ放り投げた。
オーレリア王女が憤りながら立ち上がり、月光さんを睨む。
「なんと無礼な――エルフ……?」
オーレリア王女が視線を逸らし、頬を赤くする。今はそんな状況ではない。でも、オーレリア王女の気持ちは分かる。私だって、ほんの少し前に溺れていたことよりも月光さんの顔に釘付けになってしまっていたのだ。
ばあやさんまでが頬を赤らめ、少女のような顔をしていた。
月光さんが呆れた顔で言う。
「助けてあげたことに感謝をしてほしいのだがな」
「え? ええ、それは――」
「オーレリア王女様もばあやさんも大丈夫ですか?」
「ミリアナ? ぶ、無事でしたのね!」
私の存在にようやく気付いたオーレリア王女が抱きしめてくる。
「怪我は大丈夫なのかしら? あら……ミリアナの髪の色はこんなに金髪だったかしら……」
オーレリア王女が首を傾げていると、追いついた大臣とその一味に囲まれた。相手は十人ほどだ。その中には最後に見た時には気絶していた船長、それからリュヤさんの姿もあった。
リュヤさんは服の一部は焦げ、右手に火傷を負っていた。たぶん、魔砲弾が爆発した時に近くにいたのだろう。
オーレリア王女が悲しそうに言う。
「リュヤ! 何故このような愚かな計画に加担したの?」
「殿下、温室育ちの貴女には分からないことですよ」
リュヤさんが口元を歪め笑った。
「リュヤ……」
大臣が勝ち誇ったように笑う。
「姫、もう逃げ場はないぞ。それにエルフとは……よい土産が増えた」
隣にいる月光さんから凍えるような冷気を感じた。この大臣は沈みかけた船の心配よりも自分の欲が勝っているようだ。
『さっさとお姫様を捕まえなさい。その他は始末なさい』
リュヤさんが別の言語に切り替え周りの男たちに指示をする。すぐに水魔法で出したカニに加え、鉄のカニたち金属魔法で出す。
鉄のカニならほとんどの攻撃を防げると思う。
突然現れたカニの群れに大臣一味は動揺を隠せないようで、戸惑いを見せた。
月光さんがカニたちを見ながら笑う。
「魔法まで食いしん坊だな」
「ちゃ、ちゃんと実用的に使えます」
鉄のカニのハサミは鋭く作った。カニたちのハサミを動かしながら、転がっていた木箱に試し打ちをすると、スパンと半分に切れた。
「あ……」
全員が無言になり、真っ二つになって転がった木箱を見つめた。
ハサミを少し鋭くし過ぎたかもしれない……
私が重力魔法で時間を稼ぐ間、レオさんが無事に全員救出してくれることに賭けるしかない。
船のせり上がった一番高いところにちょこんと立つ。
矢が掠った時に驚いて消えてしまった水魔法のカニたちを、私の回りに盾のように置く。
「よし!」
呼吸を整え、唱える。
「船を持ち上げて!」
重力魔法を船全体に流すと、海水に沈んでいた船尾が持ち上がり、船が再び水平を取り戻した。
「う、気分悪い」
がっつりと減る魔力に吐きそうになる。それなりに魔力を消費したでも、魔力はまだ枯渇には近くない。使っている間も少しは取り戻している。枯渇気絶活動で培った魔力はやはり半端ない。
(後はこのまま船をホールドだ)
急に浮いた船に恐怖する人の声も聞こえたが、中には船が沈むのが収まったと気付きレオ号から出ている救助舟に向かって助けを呼ぶもの者もいた。全員が大臣の一味というわけではない。
月光さんを見れば、オーレリア王女とばあやさんを俵担ぎのように抱えていた。
二人とも何が起こったか分からない顔をしたまま抵抗していたが、月光さんは澄ました顔をしていた。一国の王女様なのに扱いが少々雑だと思ったけど、月光さんなので驚きはしない。
少しずつ、この重力魔法のコントロールもできるようになってきた。気を抜くとガタガタと船が揺れてしまうけど……
月光さんがオーレリア王女を抱えたまま私の元へ合流すると、無造作に二人を床へ放り投げた。
オーレリア王女が憤りながら立ち上がり、月光さんを睨む。
「なんと無礼な――エルフ……?」
オーレリア王女が視線を逸らし、頬を赤くする。今はそんな状況ではない。でも、オーレリア王女の気持ちは分かる。私だって、ほんの少し前に溺れていたことよりも月光さんの顔に釘付けになってしまっていたのだ。
ばあやさんまでが頬を赤らめ、少女のような顔をしていた。
月光さんが呆れた顔で言う。
「助けてあげたことに感謝をしてほしいのだがな」
「え? ええ、それは――」
「オーレリア王女様もばあやさんも大丈夫ですか?」
「ミリアナ? ぶ、無事でしたのね!」
私の存在にようやく気付いたオーレリア王女が抱きしめてくる。
「怪我は大丈夫なのかしら? あら……ミリアナの髪の色はこんなに金髪だったかしら……」
オーレリア王女が首を傾げていると、追いついた大臣とその一味に囲まれた。相手は十人ほどだ。その中には最後に見た時には気絶していた船長、それからリュヤさんの姿もあった。
リュヤさんは服の一部は焦げ、右手に火傷を負っていた。たぶん、魔砲弾が爆発した時に近くにいたのだろう。
オーレリア王女が悲しそうに言う。
「リュヤ! 何故このような愚かな計画に加担したの?」
「殿下、温室育ちの貴女には分からないことですよ」
リュヤさんが口元を歪め笑った。
「リュヤ……」
大臣が勝ち誇ったように笑う。
「姫、もう逃げ場はないぞ。それにエルフとは……よい土産が増えた」
隣にいる月光さんから凍えるような冷気を感じた。この大臣は沈みかけた船の心配よりも自分の欲が勝っているようだ。
『さっさとお姫様を捕まえなさい。その他は始末なさい』
リュヤさんが別の言語に切り替え周りの男たちに指示をする。すぐに水魔法で出したカニに加え、鉄のカニたち金属魔法で出す。
鉄のカニならほとんどの攻撃を防げると思う。
突然現れたカニの群れに大臣一味は動揺を隠せないようで、戸惑いを見せた。
月光さんがカニたちを見ながら笑う。
「魔法まで食いしん坊だな」
「ちゃ、ちゃんと実用的に使えます」
鉄のカニのハサミは鋭く作った。カニたちのハサミを動かしながら、転がっていた木箱に試し打ちをすると、スパンと半分に切れた。
「あ……」
全員が無言になり、真っ二つになって転がった木箱を見つめた。
ハサミを少し鋭くし過ぎたかもしれない……
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