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3巻
3-1
ミリアナの日常
東の空が白む頃、こっそり一人で屋上へと向かう。今日は猫亭で誰よりも早起きしてしまった。屋上の修理が終わってからというもの、一人になりたい時にはこの屋上に来る。澄んだ空気で深呼吸をする。
「気持ちいい朝だ」
行き交う人はまだ少なく、世界に一人しかいないようなこの時間はなんだか不思議な感じだ。この時間だし誰も見ていないだろう。上空を確認するといつもうるさい鳥も今日はいない。よし。
風魔法の応用で編み出した浮遊を使い宙に浮かび、ぐんぐん上昇する。四階建ての猫亭が小さくなっていく。
「わぁ、ここまでの高さを飛んだのは初めてだ」
怖いかと思ったけれど、この風の音しか聞こえない世界は意外と落ち着くものだ。
見上げれば、モドラーと名前の付いている青い大きな星がある。
前世の月よりも大きいそれは昼夜問わずいつも輝いている。これを見る度にここは地球でない異世界だと思い出す。
朝日が徐々に昇り始めると、猫亭の屋上からは暗くて見えなかった遠くにある大きな建物が目に映る。
この距離から見ても豪華なその建物は王都で一番大きいと言っても過言ではない。
あれは、多分位置的にも王宮だろうな。凄い大きさだ。きっと中の造りも贅沢なのだろう。ペーパーダミー商会の税金もしっかりあそこに流れているのだろうな。
ペーパーダミー商会のレシピは売り上げが毎月右肩上がりだ。商会の出店予定の菓子店の準備もミカエルさんの働きで順調。もうすぐ物件の内見にも行く予定だ。
前世とは違う世界に転生して、不便と思った時期もあるけれど、私は今最高に幸せで自分の進むべき道を歩んでいると思う。
冷えた風が吹きブルっと震える。
「ちょっと上昇し過ぎたかな。寒いし、もう降りないと誰かに見つかりそう」
ゆっくりと屋上まで下降する。一応辺りを確認するけど、この辺りでは猫亭が一番高い建物なので目撃者はいないだろう。そろそろ部屋に戻ろう。
私たち家族の居住スペースの四階へ戻りドアを開けると、丁度ジョーと鉢合わせる。
「ん。ミリー、どこに行っていたんだ?」
「お父さん、トイレだよ」
困ったらトイレネタで誤魔化す。大抵はこれで乗り切れる。
「そうか。早起きしたのなら今日は厨房の手伝いでもするか?」
「うん! 着替えてから行くね」
急いで汚れてもいい服に着替え、マリッサの作ってくれたエプロンを着けポケットの猫の刺繍を確認する。
(今日も猫が可愛い)
猫亭の厨房に到着すると、ジョーはすでに朝食の調理を開始していた。
「お父さん、何をすればいい?」
「ああ、朝食のパンをトレーに並べた後にサラダを盛りつけてくれ」
「了解です。隊長!」
ジョーは厨房での作業を毎日ほとんど一人でこなしているけれど、そろそろ限界が来ていると思う。猫亭が忙しくなったというのもあるけれど、ジョーの料理の腕が上がるにつれメニューも時間の掛かるものが増えてきたからだ。ジョーは料理好きなので、きっともっと料理研究の時間が欲しいだろうが……今はそういう時間が作業に削られている。
「なんだ、俺をジッと見て」
「もっと厨房でお手伝いできたらなって思って」
「ああ、そんなことか。気にするな。実は近々解決できそうなんだ。それよりサラダを急いでくれ」
朝食のラッシュが終わり、ちょっと疲れた体でマリッサとジークの食事を四階に持って上がる。
「あら、ミリー。今日は、お手伝いをしてたの?」
「うん。せっかく早く目覚めたからね。朝食持ってきたよ」
「助かるわ。ジークの朝食をお願いできるかしら。昨日、レース編みが楽しくて夜更かししたせいで、今日は寝坊しちゃったのよ」
マリッサが仕事に向かう準備をしながら言う。
趣味のレース編みや刺繡を繕い物のあとにやっているのは知っていたが、たまに没頭して夜更かしをしているらしい。
やや顔色の悪いマリッサに見つからないようヒールを掛ける。
「無理しないでね」
「ええ……あら? なんだか体の調子は良くなった気がするわ」
そのまま仕事に向かおうとするマリッサを止める。
「お母さんがいつも言っているよ。朝食はちゃんと食べなさいって」
「ふふ。そうね。ミリーがどんどんお姉さんになっていくわね」
マリッサとジークと一緒に朝食の席に着く。
私はすでに朝食とつまみ食いを厨房でたくさん済ませていたので、手掴みで朝食を食べるジークの食事を手伝う。
最近は自分で掴むのが良いみたいで、スプーンも少しずつ導入しているが、手掴みが一番のようだ。
「ジークの好きなお芋さんだよ。アーは?」
「あー」
今日はまだ完全に起きていないのか、たまに嫌がるスプーンからも素直に潰した芋をモグモグと食べてくれる。
「それじゃ、お母さん行ってくるね。ジークをお願いね」
「うん。今日はジークとたっぷり遊ぶ予定だよ」
マリッサが去り、今度はマルクが起きてくる。
「マルク、おはよう。ネイトとケイトは?」
「お兄ちゃんはもう仕事に出かけたけど、ケイトお姉ちゃんはまだ寝ているよ」
スミスきょうだいは、冬の間に寒かった三階から私たちのいる四階に移り一緒に暮らしている。四階は私の温風魔法でぬくぬくだ。
そろそろ暖かくなってきたから、また三階に戻る予定だけど……なんだか三人がいるのに慣れてしまった。しんみりしていたらジークが大声で叫ぶ。
「ねぇね!」
「おお、ジークは元気だね。今日は何をして遊ぼっか」
ジークを持ち上げると、想像より結構重いので風魔法を使い負担を軽減する。
「きゃきゃ。ブンブン!」
ブンブンとは多分空を飛ぶことだ。たまにジークと二人きりの時は、一緒に軽く宙を飛びあやしていたのだ。リビングではマルクが朝食中なので部屋へ行きジークを抱えたまま軽く飛ぶ。
「ジークどう? これ好き?」
「ねぇね。ちゅき」
ああ、このままとろけそうだ。この笑顔のためならねぇねはなんでもするから!
ロイの平穏
ロイ・アズール。アズール商会の三代目会頭。
アズール商会は元々港町アジュールの領主一族の一人が起こした商会だったが、今の領主との関係性は以前ほど強くない。
ロイも平民としてアジュールで育ち、後に王都学園を卒業。アズールの会頭になってからは積極的に王都へ進出していた。
多くの商人の子息子女にとって、有意義な交友関係を築くために王都学園に入学するのは必須だった。
ロイもその内の一人で、決して魔力は高くなかったが、その分を学力で補い入学。商売のこと以外は特に興味を持たずに送っていた学生生活も当時変装で身分を隠していた王太子のレオナルドから声を掛けられ変わる。他人に振り回されたことがなかったロイは困惑しながらもレオナルドとの交流を楽しんだ。
ロイのレオナルドへの印象は『腹黒とカリスマ性』だ。
いつも笑顔だが、思考が読めない。ロイはそんなレオナルドを面白いと思った。
卒業後に王太子だと身分を明かされた時も、ロイは「ああ、だろうな」とすぐに納得した。そんなレオナルドとロイの関係は今だに続いている。
ロイは一度、何故自分みたいな一商人に構うのか、と聞いたことがあった。
レオナルドには「お前は不正やズルができない人種だから」と笑顔で返答された。
ロイは凡眼の自分には意味が分からない、と当時からレオナルドの言動に関しての深追いはやめていた。
(最近の王太子は、以前にも増して何がしたいのか全く分からない)
レオナルドに東商業ギルド長エンリケのひ孫とやらがギルドで何をしてるか調べるよう命令を下されたかと思えば、すぐに調査を撤回された。
ロイは困惑したが、正直エンリケとそのひ孫を見張るほど暇ではなかったので、着手前に調査を撤回されたことには安堵した。
(王太子が平民の子供を調べているのは奇妙だが、ただの子供だろ?)
子供といえば。
最近よく遭遇するミリーのことを思い出しロイは口角を上げる。
あの子供の話の切り返しは楽しい。子供とは思えない、まるで年上の女性と話しているようだとロイは感じていた。
ロイは、ミリーがアズール商会に来店した時も、素性を暴こうと父親にまで探りを入れたが家名を聞き出すことすらできなかった。得た情報はミリーが本気で砂糖のスプーン食いをやる予定だということだけだった。
「砂糖のスプーン食い……目が本気だったな。砂糖や蜂蜜を定期的に買っていくからある程度裕福だろうと思うんだがな」
実際、ミリーが来店の時に付けていた髪飾りもそれなりの値段がするアジュール産のターボ貝だったなと、親指の爪を噛みながら窓の外を眺めていると、ミーナの顔が真ん前に現れた。
「ロイ会頭、私の話を聞いていましたか?」
「ごめんごめん。耳元で囁いてって痛たたた」
呆れ顔のミーナに耳を引っ張られ、耳が千切れると文句を言うロイ。
「どうせ使ってないのだから、千切れても良いのではないでしょうか?」
「相変わらず手厳しい。えーと、アジュールのオーシャ商会の話だったか?」
耳を抑えながらロイがミーナに確認する。
「そうです。ソフトクッキーの話です。人気上昇中の今、商会を王都に進出させますか?」
「それだけで生き残れるのか? 不確かな商売は許可しないぞ」
オーシャ商会はロイの姉の嫁ぎ先で、確かに他の傘下商会や店より特別に今まで融通をしていた。それでも、不確かな儲けの少ない商売をやる意味をロイは感じなかった。
「確かに、厳しいですね」
オーシャ商会が積極的に他のレシピも研究しているとミーナが報告を続けると、ロイは少し考えてから判断を下す。
「オーシャ商会の王都進出はまだ許可しない。俺に一切旨みがないだろ? 今だって姉貴の顔を立てるための慈善事業だぜ」
「畏まりました。ですが、菓子業進出は将来性があると思います。いずれオーシャ商会の商品開発が功を奏せば、こちらにも悪い話ではないと思います」
ロイがジッとミーナを睨む。指摘は確かに間違いではないが、ロイはミーナの発言に姉の影がちらついた。
(姉貴の仕込みか? まぁいい)
ロイはトントンと机を指で連続して叩く。
「分かった。これまで通り、ソフトクッキーはアズール商会の店内で販売する。が、もし他の菓子のレシピを春までに出すことができれば……考え直す。だが、ちゃんと俺も旨みを貰うと伝えておけ」
「はい。すぐにお伝えいたします」
ミーナは、早速オーシャ商会に向け書簡の作成を始める。
「あ、そうそう。本業も疎かにしないよう釘を刺してくれ。まぁ、姉貴が付いてるから大丈夫だろうけど姉貴の旦那は……ぽやっとしてるからなぁ。なんで、そんなに王都に来たいんだろうな? アジュールのほうが快適なのに」
ミーナがペンを止め、顔を上げる。
「王都学園に息子さんが合格しましたので、いずれにせよ王都にはいらっしゃる予定ですよ」
「あいつ、もう十二歳になるのか? 姉貴も年取ってきたな」
「お姉様ご本人の前ではそのことは言わないでくださいね。殺されますよ。それに、お姉様もお二人と一緒に王都にいらっしゃると前触れがありましたので、秋前には会えますよ」
「えええ。姉貴も来るのか?」
「以前もお伝えしました。それから、お姉様の強い希望でしばらくはロイ会頭の自宅に滞在される予定ですので、よろしくお願いします」
「ええええ。他に選択肢は?」
「ないですね」
(姉貴の奴、始めから王都進出をする予定なんじゃねぇか?)
ロイはここ数年、姉のレシアとは手紙のみの交流だった。
ロイは姉の頭の回転の速さにも人望にも子供の頃から一度も勝てたことがなかった。本来だったら、アズール商会の会頭の座も姉が引き継ぐべきだとロイは昔から思っていたが「表に立つのは嫌よ」と早々に傘下のオーシャ商会の物静かな跡取り息子と結婚した。
ロイは姉のことは好きだが、それは決して同じ空間で生活したいということではなかった。
「俺の平穏が……」
ガレルとラジェ
猫亭の従業員全員が集まるようにとジョーから声を掛けられ食堂へと向かう。ジョーの隣には初めて見る、この国には珍しい褐色の肌に黒髪の二人がいた。
「今日から猫亭でみんなと一緒に働くガレルと、その息子のラジェだ」
ガレルさんはジョーと同じくらいの年齢の筋肉質な男性で、息子のラジェはエメラルドのような宝石の瞳が印象的な私と同じ年くらいの少年だ。ジョーはいつの間に新しい従業員を雇ったのだろう? 行動が早いというか……いつ面接をしたんだろう?
「ガレルという。これは息子のラジェ。よろしく頼む」
ガレルさんが片言の王国語で自己紹介をする。この国の出身ではないようだ。
「ガレルは俺と一緒に厨房や食堂を担当してもらう。ラジェは主に部屋の掃除の手伝いをしてくれ。それからラジェは耳が聞こえづらいので気をつけてくれ」
ジョーにラジェとの会話は首にぶら下がった木簡にマルバツを書いて意思疎通を図ってくれと言われる。ラジェは王国語の読み書きなら少しはできるそうだ。
猫亭の全員がそれぞれ自己紹介をしながら二人に挨拶をする。
「ミリーです。ガレルさん、ラジェ君、よろしくね」
ガレルさんは反応するが、ラジェは丁度こちらを見ておらずもう一度挨拶しようとしたがジョーが次の話題に移り機会を逃してしまう。あとでもう一度挨拶しよっと。
「まずは、二人を住む部屋に案内だな。ミリー、頼めるか?」
「うん。任せて!」
「あー、それからミリーは商業ギルドで見習いを始めるから、ミリーがいなくとも宿を回せるようにみんなで頑張ってくれ。連絡事項は以上だ。よろしく頼む」
みんなが解散すると、今度はきちんと正面からラジェにゆっくりと挨拶をする。
「は じ め ま し て。ミリーです」
「ラジェでしゅ」
ゆっくり話せば理解してくれるし、会話が不可能というわけではなさそう。
早速、三階へ案内をして二人の使う部屋の掃除をする。三階は今でこそ寂しい雰囲気だが、スミスきょうだいが戻ればにぎやかになるだろう。
「お嬢さん。掃除、手伝い、ありがとうございます」
ガレルさんが埃を払いながら言う。
「ミリーと呼んでください。ガレルさんは、このあとお父さんと厨房ですよね? ラジェ君は私に任せてください」
「ミリーちゃん、よろしくおねがいします。ラジェ。口読む。でも言葉少しだけ慣れていない」
「分かりました。ラジェ君とはゆっくり話しますね」
ガレルさんが厨房へ向かうとラジェに猫亭の掃除の仕方などを教えた。
ラジェの使うクリーンで掃除された場所は凄く綺麗で素晴らしい。もしかしたら、魔力が高いのかな?
「えーと。せ ん た く は バツ。ネ イ ト が す る」
「あい」
ラジェの首の木簡のバツを指しながらやる仕事とやらなくていい仕事を教えていたら昼食の時間になった。
「ラジェ、ラ ン チ の時間だよ」
そう言うと、私のお腹がクゥと鳴ったので焦ってお腹を押さえるとその様子を見たラジェが笑う。食堂に向かうとジョーが大皿に載った今日の賄いランチを披露する。
「二人とも見ろ。今日の昼はオークカツと唐揚げだ。初日だし、猫亭の大人気ランチだ」
「お父さん最高! 早く食べよ!」
ガレルさんとラジェがランチを一口食べ手が止まったかと思ったら、無言でガツガツと食べ始めた。ジョーが笑いながら二人に声を掛ける。
「おうおう。喉に詰まるからゆっくり食えよ」
「作ってる時も思った。旦那さん、凄い料理人」
「ガレル、おだてても何も出ねぇぞ」
ジョーが照れながら言うと、みんなが笑い出した。
◆
次の日もラジェに掃除や雑務を教えながらお手伝いをする。
一通りラジェに仕事を教え、一緒に外で背伸びをする。今日は春日和だ。続くといいけど春の天気は予測が難しい。あくびをしていたらマイクが急ぎ足で薬屋から出てきて真っ直ぐこちらへ向かってくる。
「ミリー! あいつ、誰だよ」
「やぁ、マイク君。あの子はラジェ君だよ。昨日から猫亭で働いているんだよ」
「そうなのか? おーい! おーい! おい! 無視すんなよ」
無視されたと思ったマイクが苛立ちながらラジェに向かうのを止める。
「マイク! ラジェ君は耳が聞こえにくいから正面から話してあげてね」
「お? そうなのか? 分かった! おーい! 俺はマイクだ、よろしくな。お前はなんて名前だ?」
「ラジェ」
「そうか! この辺で男の友達少なねぇからな。よろしく頼むぜ。それでミリー、今日は何すんだ?」
「日向ぼっこだよ」
「何言ってんだよ。それ、年寄りがやることじゃねぇか。今、兄ちゃんの部屋にケイトが遊びに来てるからみんなで何かしようぜ。そうだ。こっそりとドアを開けて兄ちゃんたちを驚かせようぜ」
マイク……その扉を開けたらびっくりするのは自分だからね。
どうやらマイクはまだトムとケイトが付き合っていることに気づいていないようだ。
「えーと……やめたほうがいいよ」
「えー。なんでだよ?」
「いいから。マイク、今日は別の遊びをしよう」
マイクの幼少期の純粋な心を傷つけないためにも、トムの部屋から遠く離れてできることを考えるが天気が良すぎてボーッとしてしまう。
「お、そうだ。五軒先のマージ婆さんの家に鳥がいんだよ。見に行こうぜ」
「鶏?」
「ミリー、何寝ぼけてんだよ。食い物じゃあねぇよ。青い鳥だったぜ」
青い鳥か。この辺でペットを飼っている人なんて珍しいので興味が湧く。
会ったことはないが、五軒先に住むマージ婆さんは結構な歳で一人暮らしをしているそうだ。たまに外に座っている姿しか見たことはない。ラジェにも声を掛ける。
「ラジェ、と り み に い く?」
「あい」
三人で鳥を見に五軒先のマージ婆さんの家へと向かう。
マイクが表の扉をノックすると窓から白髪を綺麗に結ったお婆さんが顔を覗かせる。
「誰だい?」
「マージ婆さん、俺だよ。薬屋のマイクだ。鳥を見に来た」
「薬屋の悪さ坊主か。鳥は裏にいるから勝手に見ていきな。籠から出すんじゃないよ。今日は他の子もいるのかい? ふむ。猫亭の変わった子と……もう一人は初めて見る顔だね」
猫亭の変わった子って……その認識で合っているけどね。マージ婆さんに自己紹介をする。
「ミリアナとこちらはラジェです」
「その名前は砂の国の子かい? ここら辺じゃ珍しいね。鳥を見たいならここから裏へ行きな。籠を開けるんじゃないよ」
「はーい」
ラジェたちは砂の国から来たのかな? 砂の国の存在は知っていたが、実際その国出身の人とは会ったことなかった。あとで聞こう。
裏口を開けると小さいがきちんと手入れされた庭があった。
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「だろ? しかもこいつら喋るんだぜ」
「え? そうなの?」
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マイクが偉そうに鳥たちに向かって命令をする。
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『マイクガキタ。ワルサボウズ』
思わず吹き出してしまう。賢い鳥たちだ。マイクが恥ずかしさからか赤くなりながら鳥に怒鳴る。
「お前ら! この前はちゃんと言えてただろ!」
『イエテタイエテタ』
翼を広げマイクに威嚇を始める鳥たちを見てラジェが呟く。
「きれい……」
「うん。綺麗だね」
翼を広げた鳥たちは本当に宝石のように美しかった。マイクが籠を揺らしながら一生懸命鳥に声を掛ける。
「マイク様だ! マイク様」
「マイク……鳥にストレスを与えるから籠を揺らすのはやめてね」
何度かマイクを注意すると鳥がその言葉を拾う。
『ヤメテネ。ヤメテネ。イエテタ。テンキイイネ。カイモノイコウカ』
鳥、結構喋るね。これなら一人暮らしのマージ婆さんも毎日が賑やかだ。
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