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王子殿下の戯れ
しおりを挟む「あの噂、聞きまして?」
「身の程知らずの男爵令嬢の話かしら?」
くすくす。令嬢達の嘲笑が自分の耳に入るほど、あからさまな状況に僕は苦笑いを浮かべた。
僕が最近親しくしている男爵令嬢が学園内でいじめにあっているようだ。助ける者はおらず、彼女が孤立した姿をよく見かける。何故ならば、このいじめの主犯は公爵令嬢である僕の婚約者だからだ。同調し、加勢する方が自分の家のためにはいいと考えているのだろう。声をかける者はいない。僕一人を除いて。
「どうしたんだい?」
ボロボロになった教科書を抱えた男爵令嬢に話しかけると、彼女は健気にも作ったような笑みを浮かべた。
「……殿下、こ、こんにちは。これは……その。何でも、ないのです」
けれどその瞳には『助けて』と書いてあった。僕に助けられて、お伽噺のように返り咲くのを夢見ている少女の顔を隠すように俯く。
「僕でよければ君の力になるよ」
にこやかに笑みを浮かべれば、男爵令嬢は顔を上げて、嬉しそうに顔に花を咲かせる。しかし、すぐに表情を落とした。
「……あ、あの。私、いじめにあっていまして……」
控えめに、けれど希望の光をギラギラと光らせて、男爵令嬢は現状を吐露する。僕の婚約者だから我慢していましたが、という枕詞を付けて、いかに自分は辛いのか、苦しいのかを訴える。
「そうだったんだ」
でも、ごめんね。
「僕の方でも調べてみるよ」
優しい言葉をかけて、僕は男爵令嬢と別れる。口先だけの優しさを吐く自分自身が滑稽で、思わず乾いた笑いが出てしまう。
そろそろ、彼女は限界を迎えるだろう。だが、彼女のことはどうだっていいのだ。彼女が使えなくなれば、他に目を向ければいいだけのこと。
『悲劇のヒロイン』と別れて歩いていると、婚約者が顔を出した。彼女は随分と前から僕が通りかかるのを待っていたようだ。待ち続けて疲れたのか、苛立ちを隠さず険しい表情の彼女が口を開く。
「御機嫌麗しゅう、殿下。あれと、随分仲がよろしいようですわね」
棘のある台詞に、背筋がゾクリと粟立つ。
「リアムに、『あれ』だなんて。口が悪いよ、アドリーヌ」
男爵令嬢を擁護すると、切れ長の赤い瞳で睨みつけられた。ルビーのように美しい瞳に射抜かれて、僕は口元が緩みそうになるのを堪える。可愛いなあ、僕のアドリーヌ。僕が君以外に目を向けるわけがないじゃないか。
アドリーヌは僕を想うのに一生懸命なあまり盲目となっている。僕の周りにいる令嬢を片っ端から排除してゆく程に。彼女が僕を想うが故に暴走する様をずっと眺めていたいと思うのは僕の我儘なのだろう。
「リアムは素朴で素直ないい子だ。あまりおいたはしないようにね」
アドリーヌの瞳に宿る嫉妬の炎が勢いを増す。その劫火に焼かれ、彼女とともに果ててしまいたい。
盲目な彼女は僕の想いに気付かない。今日も彼女は僕の寵愛を欲して暴走を続ける。僕はそれを微笑ましく見つめるのだった。
つづく?
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