血濡れの恋人

柊原 ゆず

文字の大きさ
1 / 1

血濡れの恋人

しおりを挟む

 一人目は、グループ内では底辺の男だったがそれ故に狡猾な奴だった。此奴は拉致し監禁しただけで恐怖に慄き命乞いをした。芯のないふにゃふにゃした男だ。見ていて気分が悪いので心臓を一突きして殺した。ぱくぱくと口を開閉する様は魚のようだった。
 二人目は片岡 翼。この男は、所謂実行役だ。グループのリーダーが命令するとすぐに実行に移す。リーダーに逆らえず少しばかりの罪悪感を抱いていたようだがそんなことで罪が軽くなると思うなよ。此奴には薬を持った。苦しそうに悶える様は滑稽だった。
 三人目は足立 香奈。この女も実行役。こちらは罪悪感などかけらもなく、楽しんでいたようだ。此奴は拉致し体を拘束した上で、浴槽に放置した。蛇口から絶えず水が出続けているため身体は冷えていく。溺れないよう必死に身を捩っていたが、結局は体温を奪われ体力が無くなり溺死した。頭を掴んで何度も溺死寸前まで苦しみを与えたんだ。お前にはお似合いの最期だろう。
 四人目は高津 寧音。リーダーの彼女だからか態度が女王のような女だ。本当に血の通った人間かと疑うような外道極まりないことを平気で思いつく。此奴にも同じ目にあってもらおう。人気のない夜道を歩く此奴を茂みに引き摺り込む。服を破き、無理矢理事に及んだ。その最中、首を絞めて殺した。苦しそうな顔は醜く見ていられなかった。
 これで最後。日吉 勇輝。奴は外面が異常に良く頭が回る。連日の殺人事件に、次は自分であると気付いたようだ。怯え、苛立ち、ヒステリックになる様は滑稽であった。俺は高津から盗んだ鍵で日吉の家に忍び込んだ。何も知らずに帰ってきた日吉がソファーに座って寛いでいたところに、スタンガンで気を失わせた。

「だ、誰だ、お前は?!」

 目覚めた日吉は俺の姿を認めて声を上げた。犬の面を被った俺が誰だか知る由もないだろう。日吉は今、首輪を着け、全裸で簡素な犬小屋に押し込められている。首輪からは鎖が繋がれており、逃げようともがくも首輪が食い込み逃げることができない。
 俺は面を取った。日吉は俺をじっと見つめて、あっ、と声を上げた。

「お、お前、あいつの幼馴染か?!」
「いいや、恋人だよ」

 日吉は顔を青くさせた。この連続殺人の意図が分かったのだろう。土下座し、必死に謝り始めた。

「わ、悪かった!悪かったよ!あそこまで追い詰めるつもりじゃなかったんだ!」
「ならばどういうつもりだったんだ?愛海が苦しむのを見て笑っていただろう?」
「そ、それは……っ!」
「もういい。これで全て終わる」

 未だに弁解しようとする日吉の首をナイフで切り裂いた。血飛沫が上がり、辺り一面真っ赤に染まる。これでやっと、やっと成し遂げた!これで、ようやく……。





 体を真っ赤に染めて、笑みを浮かべる男。大好きな恋人、陽一。彼を殺人鬼にしたのは私だ。
 私は5人からいじめを受けていた。物を隠したり無視されるのはまだいい方で、トイレの手洗い場で頭を押さえられて溺死しそうになったり、上履きに画鋲が入っていたこともあった。命の危険を感じていた時、私は瀬尾と片岡に襲われた。身体が汚されて、それを他の3人に笑われて。もう陽一には会えないと思った。こんな身体で、陽一には会えない。私は屋上から身を投げた。ごめんね、陽一。そう思いながら。
 気付いた時には、校庭にいた。目の前には死んだ私が倒れていた。お世辞にも綺麗とは言えない死に様に、私は目を背けた。これから、どうしよう。死んだ後のことは何にも分からなかった。途方に暮れていた私は、自然と陽一を探していた。一緒にいるだけで心安らぐ、唯一の居場所。死んでも尚私は居場所を求めて陽一を探した。
 陽一はすぐに見つかった。私の死体を前に人集りができており、何の集まりかと陽一は近付いて私の死体を見てしまった。陽一はすぐに帰路を目指した。涙を隠すように俯きながら。
 陽一の悲しみは怒りに変わっていった。私がいじめのことを相談していたから、あの5人に怒っているのだろう。陽一はこっそりと情報収集を始めた。念入りに策を練って、ついに成し遂げてしまった。
 ごめんね、陽一。そんなつもりじゃなかったの。あなたにこんなことさせたくなかった。私は泣きながら、血で汚れた陽一を抱きしめる。けれど身体はすり抜けてしまった。もうこの身体では陽一を抱きしめることもできない。大声で泣きながら、胸にナイフを突き刺す陽一を見ていた。

Fin.
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

2021.08.18 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.18 柊原 ゆず

黒輝やまとさん
感想とお気に入り登録ありがとうございます!
無事完結できてとても嬉しく思います。

解除

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。