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告白未遂

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「す……」

 僕は今日、告白をする。目の前の美人な女の子、橋本 優奈ちゃんに。僕は深呼吸をして、口を開ける。好きです、と言いたい。けれど、『す』のその先が言えない。

「す……す、すき焼き、食べない?」

 彼女の反応はない。それどころか、瞳の奥が冷え冷えとしているような気がする。僕はいたたまれなくなってこの場を後にした。





 翌日。行儀よく座る彼女の前に座り、僕はぎこちなく笑う。女性と話すのはあまり機会がないから、いつも緊張してしまう。彼女はクールな女性だ。表情一つ変えずに僕を見据える。それが僕の緊張をより一層高めていることを彼女は知る由もないだろう。

「あ……あの、す……す……っ!」

 頬に熱を帯びてゆく。心臓が忙しなく動き、このままでは、死んでしまいそうだ。

「ご、ごめ、なさい!」

 僕は堪らなくなって、彼女に背を向けて走り出した。ごめんね、優菜ちゃん。明日は絶対に、絶対に告白してみせるから!





 翌日。今日は僕の部屋に優菜ちゃんを呼んだ。静かだと僕が緊張してしまうから、テレビをテキトウにつける。途端に雑音が耳に入ってきた。煩わしいが、これで幾分か緊張が解れたような気がする。僕はソファーに座った彼女の隣に腰かける。

「……ね、ねえ、優菜ちゃん」

 僕は恐る恐る彼女の名前を呼ぶ。彼女は応えるように僕の肩にもたれかかってきた。

「ゆ……優菜ちゃん……?!」

 こ、これは……!チャンスではないか?!僕はごくりと生唾を飲む。頑張れ僕!これでも男だろう!男の意地を見せろ!
 僕が恐る恐る彼女の華奢な肩に手を回すと、彼女は僕に倒れ込んできた。偶然にも、彼女に膝枕をしているような体勢になってしまった。どうやら彼女は眠ってしまったようだ。彼女の冷えた体温が心地よい。今日も告白は出来なかったけれど、こうして二人でいるのは心地よく、僕はうっとりと目を瞑る。すると雑音が耳に入ってきた。

『一週間前に行方不明となったアイドルの橋本 優菜さんは依然として消息を絶っています。失踪前、橋本さんの事務所には毎日特定の人物から不審な手紙が送られており、警察はこの人物が事件に関与しているとみて現在も調査中です』

Fin.
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