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聖女から除名される偽聖女
しおりを挟む「ロ~マンナ~💢」
鎧の訓練後、赤髪の偽聖女こと太陽の聖女ロマンナが本来俺らの鎧の指導に当たる教導員を簀巻きにしてロマンナの部屋に拉致していたことが判明し、教皇のモンローがブチギレている。
「教導員に危害を加えた挙句、教え導くはずの修道者に決闘を持ちかけて、一歩間違えたら人死にが出るような事態を起こすなど言語道断です! 今を持ってあなたを聖女から除名します!」
「そ、そんなー!!」
モンローはブチギレた勢いのままに聖女除名処分にするとロマンナが膝から崩れ落ちる。
昨日の時点でモンローが「あの聖女たちのせいで頭痛いんすわ」って言ってた次の日にこれだからな。
まあ当然だ。
このまま聖女をやっていても主人公パーティに入れられて、実力不足で早死にするだけだったので本人のためにもこの方がいいだろう。
「そんなあ? これだけで済むと思っているんですか! 枯渇しがちの貴重な鎧を決闘に使って大破させてるんですよ! 神工ガンダイン様はカンカンです! ガンダイン様の元に頭を下げに行って、怒りが収まるまで工房で下働きです!」
「下働き!? この私が?」
「当たり前でしょう! 早く行きなさい!!」
「は、はい!」
さらに追加で罰を言い渡され、驚愕した顔をするとモンローが声を張り上げて怒声を飛ばす。
モンローの剣幕にビビったようでロマンナがダッシュでその場から走り去っていく。
「皆さん、今日はすいませんでした。私の監督不行きのせいでこのようなことに。特にシドさんは命の危険に晒すようなことになってしまって」
「いや弱かったので別に……」
「私たちは見てただけですし、生身で鎧を倒す姿を直に見ていた私たちにはとってシド様に脅威になるように思えなかったですし」
「「「「「だな」」」」」
落ち着けるように深呼吸をしたモンローが頭を下げてくるので、それほど迷惑ではなかったとステラと共に伝える。
だがモンローの方は今回のことを大事と捉えているようで、むくりと顔を上げると食い下がってくる。
「そういうわけには行きません。我々はエリス様の元に集った志を同じくするものですが、生まれ持った出自も特性も全く違います。だからこそルールは厳格にしなければいけません。私の体の一部を捧げることで手を打ちましょうか」
「いや人体はいらないな」
宗教系のケジメとか贖罪は苦行と決まっているがやられるこっち側としたら何の旨味もない。
個人的にはこのまま何もなしで手打ちでいいがこのまま何もなしではモンローはおそらく引き下がらないからな。
後々に力を貸してもらうという方向で手打ちにするのが一番無難か。
「力が必要な時に手を貸してもらうというのは大丈夫ですか?」
「ええ、私の微力で良ければ」
いけるかと半分賭けのような気持ちで提案すると素直にモンローは引き下がった。
モンロー自身が自分に非があると思っているからだろうが、グロいことにならなくてよかった。
「すいません。私はもう一人の方に釘を刺してきます。皆さんは午後のお祈りまでゆっくりしていてください。では」
モンローはそういうともう一人の偽聖女──光の聖女に釘を刺しに足早に去っていく。
大組織の長ということで多忙だろうにご苦労なことだ。
さて俺も工房に向かうか。
原因はロマンナにあるものの結果として壊したのは俺で謝罪しないと心傷が悪くなるし、前魔王の準備で頼みたいことがあるし。
「俺は工房に行くけど、お前らはどうする?」
「シド様と共に行きます」「暇だし行くわ」「俺も」「あたしも」「うちも」
他のメンツに工房に行くことを伝えると暇でついてくると言うことで、まとまって工房に行くことになった。
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