国で暗殺されそうなので、公爵やめて辺境で美少女専門テイマーになります

竜頭蛇

文字の大きさ
4 / 67

美少女専門テイマーに転職しました。ただし、美少女がテイムできるとは言っていない

しおりを挟む


「やっと一番大事なものに気づいたよ。クリムゾン」

 処刑というビックイベントを控えることで、俺は極限状態になり、ついにこの世の真理にたどり着いた。
 圧倒的恐怖を前にして支えになるのは、恋人だということを。

「俺、美少女専門テイマーになるよ」

「ガイア、やめときなさい。あんたの顔面じゃ、頑張っても熟女専門が関の山よ」

「やる前からできないって言うのは、言い訳に過ぎないんだよ」

「たいていの人はやる前から自分に出来ないことは分かるでしょ。やるまで分からないて言うやつは人生エアプだけよ」

「人生エアプだからしょうがないだろ。やって試すしかないんだよ」

 俺は徐に腰から短い鞭を取り出すと、クリムゾンに叩きつける。
 奴のスライムボディは打ち付けるたびにポヨポヨと軽い感触で、返してくる。

 この先の作業を思い起こすと、少しげんなりするが、未来の自分の成功像を思い描いて奮起する。

 相変わらず、『女神の祝福』を得るのはめんどくさい。
 だが、祝福を得ないと職業をしていく上での技術アーツが習得できなくなってしまうのでしょうがない。
 職業だけで、アーツがなければ、名乗ってるだけだ。
 悲惨すぎる。

 取り合えず、経験値が一定に満ちるまでやり続けるしかない。
 そもそも美少女専門テイマーなんて職業さっき俺が作っただけだから、祝福が得られるかどうかは謎だし。
 まあ職業として認知されても、今職業にしているテイマーよりも才能ないと祝福受けられないしな……。
 本当になれるんだろうか。

 なんだか考えるとテンションが下がってきた。
 無心で鞭を振るうか。

「あああ、全身のコリがほぐれるるるるう」

 クリムゾンをリズミカルに叩いていると、マッサージを受ける中年みたいなことを口走り始めた。
 これもしかして、中年専門テイマーになるんじゃねえだろうな……。

 少し不安に駆られたが、手を休めずに鞭を振るう。

 百回くらい叩いて腕がしんどくなってくると、鞭を握る手がまばゆい光に包まれた。
 才能が更新された証だ。

 “慧眼”で自分の素性を見ると、才能がテイマーからテイマー(美少女専門)に代わっていた。

 よし! やはり信じるものは救われる。
 これで俺の思い描いた成功像が現実ものとなる。
 全てが上手くいく。

 まず俺が美少女をテイムする。
 美少女にテイムされた屈強なガチムチたちがアダルマンティーと戦う。
 物量の差で俺が勝利。
 大団円……。

 全てにおいて完璧な未来だ……。
 天運は俺にある。

「俺はテイムに行って来る。クリムゾン、お前は金貨でも磨いて待ってろよ」

「了解、寝て待ってるわ」



~明朝


「今回の挑戦では、何の成果も得られませんでした!!」

 朝日に染まる森の中で、四つん這いになって美少女をテイムに行った報告をクリムゾンにする。

 それもこれも、テイマー(美少女専門)のアーツ――誘惑テイムの劣悪さのせいだ。
 なんだ、10秒だけイケメン化て。
 10秒で何ができるっていうんだよ。チラッと見られて即終了じゃねえか。
 しかも「あれ、イケメン? あっやっぱただのモブだわ」とか言われて地味に傷ついたし。

 美少女に突貫して、周りのヤツから「おいおい、あいつ死んだわ」とか言われながら美少女テイムしてドヤるつもりだったのに、「おいおい、やっぱりあいつ死んだわ」になって恥もかいたし。

 踏んだり蹴ったりだよ。

「ガイア、時間よ。コロシアムに行かないと」

「俺はもう疲れた。あとはお前が何とかしてくれ」

「何言ってんのよ。昨日の威勢はどこ行ったのよ」

「いや、昨日の俺と今日の俺は別人だから。昨日のガイアはバイトリーダーの田中君がやってたから」

「なよなよしてる場合じゃないわよ。行くわよ」

 俺はクリムゾンにヘッドロックされながら、コロシアムまで引きづられていく。


―|―|―



「ふん、いっちょ前な顔してるじゃないか。地獄を見てきた顔だよ」

 アダルマンティーが俺の顔面を見て、不敵に笑う.

「ああ、ほんとに地獄だったよ」

 俺の昨日の地獄を思い出す。
 美少女に振られて、傷心してるところで、ガチムチに「お兄さん、俺たちが慰めてやるよ」とか言われて、股間を押し付けられたあの夜を。

「あんたにも俺の忌まわしい力を見してやるよ」

「ガイア、美少女がダメだったからてガチムチアマゾネスをテイムする気になったていうの!?」

「もはや、顔面には価値はない。女の子でさえいれば、それだけで価値があるんだよ!」

 世にある真理は得てして残酷なものなのだ。

「ウオオオオオオ!」

 俺は魔力を練り上げながら、悲鳴交じりの咆哮を上げる。

「やばいぞ。あの魔力の奔流は! ここら一体をふとばせるほどの魔力を含んでやがる」
「コロシアムごと、アダルマンティーを吹っ飛ばす気だヤロー!」

 観客席からは俺と同じような悲鳴が聞こえてくる。

「せっかくだ。お前には昨日の地獄の果てに覚醒した新たなアーツを披露してやろう」

「ま、魔力量が多いからてどうしたっていうんだい。あんたがバカみたいな威力のアーツを出すとしても一回くらい避けられるさ」

「かかったな、アホガアァ! 『ラブ・サンシャイン!』」

 俺の目からハート形の光線が射出され、魔力の奔流に気を取られたアダルマンティーの心臓を貫く。

「くっ!」

 アダルマンティーは膝をつき、胸を押さえる。

「痛みはないのに……。胸が熱い」

 俺はビーム出すと、なんだか冷静になって来て、やっと自分のしでかしたことに気付いた。
 故郷でアマゾネス達にシコタマやられたのに、アマゾネスをテイムするて、何考えてんだ。

 あんなもんと生活を共にしたら、朝から俺が人間殺害現場になってしまう。
 そんな肉塊ライフはごめんだ。
 
 俺の理性が「うちでは飼えません。元の場所に戻してきなさい」とささやいて来る。

 てか何で昨日全然効かなかったのに、今日はしっかりテイムが決まってんだよ。わけわかんねえよ。

「勝負はついたな……」

 俺はとりあえず、適当な事を言ってこの場から退散するための足掛かりを作る。
 アダルマンティーに背を向けて、控室に通じる通路を目指す。

「待て! まだ終わっていない。『天空衝!』」

 俺の背中に棍棒でぶん殴られたような衝撃が走る。
 ボキィ!と聞えてはいけない音が背骨から聞こえた。
 折れた確実に背骨が。
 事実、俺は痛すぎて、その場で静止したまま動くこともかなわない。

「クリムゾン、動けん。俺を運んでくれ」

 俺は小声で、隣にいるクリムゾンに呼びかける。

「何言ってんのよ。デスマッチはリングを出るまでがデスマッチなのよ」

 そんな家に帰るまでが遠足みたいなこといわれても……。
 背骨が癒着し始めたためか、少しだけ痛みが和らいできた。
 気合でなんとか、ゆっくりながら、歩を前に進めていく。

「待て!」

「おい見ろよアレ。アダルマンティーに掛けられた呪いが解けていく!」

「バジリスクの呪いがかよ。嘘だろ!?」

「お前ら目が節穴かよ……。俺は見えたぜ。あのガイアとかいう野郎が、アダルマンティーの心臓を光線で蒸発させたあと、目にもとまらぬ速さで再生させたのおよお」

「てことは、一回アダルマンティーを殺して、呪いの効力を消したて言うのかよ」

 なんだか背後で騒がしいが、痛みと恐怖でそれどころではない。
 着実にコロシアムの外に向けて歩を進めていく。
 通路に入ると、背骨が再生したので、ダッシュでコロシアムから逃亡。

 宿屋になだれ込んで、代金の銅貨三枚を渡すと部屋に閉じこもる。
 テイムしたアダルマンティーが俺をマッシュポテトにしている映像が頭の中で再生されて、背中にじっとりとした冷や汗が流れる。

「ガイア、逃げても何も始まらないわ。己のしたことに向き合わないと」

「服強奪した奴に言われても説得力ぜロだよ」

 もうあれだ。
 考えるだけ無駄だ。
 具体的なことは明日考えよう。アダルマンティーも寝る間くらいは俺を捜索するのにかかるはずだ。

 俺は目を閉じると夢の中に意識を沈めた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。 しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった! 辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。 飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。 「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!? 元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...