国で暗殺されそうなので、公爵やめて辺境で美少女専門テイマーになります

竜頭蛇

文字の大きさ
13 / 67

魔王絶対殺すマン

しおりを挟む


「は! 滅相もありません。偉大なる王と麗しき女神様の姿を共に拝み見ることが出来、このゼウス至福の至りでございます」

 嫣然と微笑む女神に向かって、ゼウスは謹みを込めて挨拶を返す。

「固い床に膝をついたままでは、足が痛くなってしまいます。ゼウス、椅子に座りなさい」

 女神はその様子に満足したのか、ゼウスの前に椅子を生じさせると座るように促してきた。
 促す体でありながらも命令口調であった女神から、ゼウスは笑顔の裏に相当の怒りがあることを悟る。
 余計な謙遜は相手の反感を買うだけだと判断したゼウスは、

「女神様のお気遣い痛みいります」

と短く礼を述べ、無駄に仕立てのいい椅子に座る。
 その様子にウラノスは「一介の将が王と対等のような態度を取るなど!」と気色ばんだが、女神の長い 銀髪が首筋を撫ぜられると不服な顔をしながらも黙った。

「して、女神様。ガイアが魔王とはどういうことでしょうか?」

 女神に抑えられているとは言え、あまり長く我慢させてウラノスの反感を買うのも良くないし、単純に自分の気にかかっていることもあり、ゼウスは早速本題に切り込んだ。
 女神はその態度を好ましく思ったのか、ゼウスに流し目を送りながら質問に答え始める。

「あのものがなぜ魔王ですか? それはガイアがこれから行うだろう悪魔的な所業からです。奴はまずここ――ノースクラメルとイースバルツを混沌の海に沈め、それに飽きると自ら魔王であることを僭称し、六つの国をまとめて滅ぼします。この鬼畜の如き所業と自称していることからもわかる通り、あのものを魔王と言わない理由はないでしょう?」

「確かにそれが出来ればそうなのですが。一度に六つの国を戦争を起こし、なおかつそのうえで打倒する……。本当にそんなこと出来るのですか?」

 圧倒的な実力で自分を屈服させてきたガイアのことは知っているが、それでも彼が六つの国と戦争し、なおかつ勝つことが出来ることなどとはゼウスには信じられなかった。
 ゼウスの目測ではガイアが出来るのはノースクラメルほどの一つの大国と対等に戦うことくらいだ。
いくらなんでも手を取り合い、連携し、六つの神、六匹の帝龍を持っている大陸と戦うのは無理がある。
もし出来たとしたら、もうそれは人ではない。

「しますよ。絶対にします。あの魔王は大陸を滅ぼすのを。何度も何度も」
 
 ゼウスの疑問に対して、そう女神は断言した。
 その言葉には理由も、根拠もなかったが、そう言う女神の身から滲み出る悲壮感が真のものであり、謎の説得力があった。
 まだ疑義が残ってはいるが、話を止めるものではないので、陰鬱な世界に沈みかけている女神に話を促す。

「それを止める方法はないのですか?」

「あります!」

 じめついた態度から一転、女神は明朗快活とした声音で答える。
 まるでその仕草は待ってましたと言わんばかりだ。
 セールスに家にたまに訪れる商人に、悩みを相談するとよくこんな態度を取った気がする。
 女神は徐にゼウスに向けて近づいて来ると、目と鼻の先で女神は止まった。

「あなたはやはり、余ほど魔王ガイアをブチコ〇したいようですね。その意気込みに免じて、特別に教えてあげましょう」

 そう言って、もったいぶるように間を作り、女神は息を吸い込む。
 次の瞬間にはドスの効いた高い声がゼウスの鼓膜を揺らした。

「魔王を倒すには、アナタがガイアに接触し、戦闘と実力で信頼を勝ち取り、騙し討ちを行う事のみです」

 ゼウスは途中まで、自分の理想をなぞった女神の言葉に少し気分が高鳴ったが、後半の『騙し討ち』というワードで意気消沈した。

「何を怖気づいているのです。魔王に反乱容疑を被せるためのニューハーフ一揆の誘発。敵国への逃亡の誘導。すべてのお膳だてはすましてあるのです。ここでやらなきゃどこでやるというのです」

 ゼウスはさらっと女神がとんでもない事実を言うのを見逃さなかった。
 女神がガイアを嵌めたと自らの口で証言したのだ。

「女神様、ガイアを嵌めたのですか?」

「大事の前の小事です。罪のない人の子らの命を救うためには、時には心を鬼としなければならないのです。数多の命と一人の人間を陥れることなど、どちらを取るべきかなどすぐにわかるでしょう」

 嵌めたということで、この女神をこの場で切り捨てようかと思ったが、女神の言っていることに筋は通っており、更にゼウスの卓越した道徳心も味方し、至極まっとうな判断のように思えた。

「……魔王を討ち取るしか国の滅びは避けられないのですね?」

「ええ! それはもう! ではあなたは魔王の討伐を――」

「はい、受けます」

 なんかいいなあと思っている男と大陸の民の命。
 まっとうで聡明なゼウスは、民の命を選んだ。
 その返事を聞くと女神は気色ばんだように、ゼウスの顔に顔を至近させる。

「あなたの選択確かにこの耳で聞きましたよ」

 絶対に破らせないからなという強迫をにじませるような声音でそういうと、ゼウスに向けて神々しい光を下した。

「あなたの決意にこたえて、『セイクリッド』の才能の祝福を与えましょう。流石に剣の才能だけでは、騙し討ちしても攻撃力とクリティカルが足りませんからね。本来なら莫大な熟練度がいるものですからかなりの優遇ですよ」

 いたずらぽく笑うと、女神はゼウスに瀟洒な金色の剣を持たせた。

「それはセイクリッド『ライトニング』です。激レアアイテムなので大切に扱ってください」

 流れるような早業で次々とことを起こす女神に気後れしていると、女神はゼウスから距離を取る。

「早速魔王と接触して、実力を上げてください。ガイアを倒した暁にはノースクラメルの王にしてあげますからね。では、魔王を倒したその時に――」

 有無を言わせ態度で手続きを行い終わると、ゼウスは王城から前ガイアと戦った草原のど真ん中に一瞬で移動していた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...