国で暗殺されそうなので、公爵やめて辺境で美少女専門テイマーになります

竜頭蛇

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俺のことは置いて先に行け!

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「てめえら、めちゃくちゃ怪しいな! 荷物全部おいていきやがれ! 無一文になったら通してやるよスカタンがああ!」

 ガクエンの検問に至るとメタボリックなおっさんから我々ガイア一向は恫喝を受けた。

「そんな!? 我々はセールスマン様の手形を持っているのですよ! そんな横暴がまかり通ると?」

 さすがにモンスター生い茂る荒れ野を横断してきたナイスガイのドロネコもこれにはたじたじだ。

「うるせえ! ここでは俺ら聖職者がルールなんだよお! 下界のことなんざ知ったこっちゃねえ!」

 くそ、おっさんめんどくせえな。あとちょっとで、国入れるていうのに、通せんぼしやがって。
 これくらいしつこいと、誰かがキ〇ガイのふりをして強行突破するか、素直に身ぐるみはがされるくらいしか出来ることがない。
 身ぐるみを剥がされるのは国内と帰路で地獄を見るので絶対に選択したくないからな。
 残されたのはキ〇ガイ一択だ。
 ドロネコは無駄に顔がダンディなのでキチッても平静に見えそうだし、幼女は演技力が低そうだし、傍から見たら駄々こねてるようにしか見えん。
 出来るのは俺しかいないか……。

「ドロネコさん、幼女を連れて先に行ってください……」

「ガイアさん! あなた!?」

「もたもたしないでください! 早く行ってください!」

「く、くそおおおおおお!」

 ドロネコは雄たけびを上げると、馬に鞭を打って馬車を走らせる。
 俺は奴が行くのを確認するとすぐに、全力でキチる態勢に入る。
 キチる上で大切なのは突発性と人の常識を正面からぶち壊すような突飛さだ。

「うおおおおお!」

 俺は自分の演技が中途半端にならないように気合の咆哮を上げると、地面にダイブする。
 「なんだこいつ!?」みたいな感じで俺の方に門番たちの視線が誘導される。
 さりげなく強行突破した馬車のことは誰も気にしていない。

 突発性はクリアだ。この場の全員の視線が俺に集まっている。
 あとは肝心かなめの突飛性だ。
 こいつらの煤けた常識をひっくり返すような人間性のかけらもない行動をしなければならない。

「ギョギョギョ! ギョギョ!」

 俺は打ち上げられた魚みたく、地面を飛び跳ねる。
 門番のおっさんたちは「こんなひでえ光景見たことがねえ」みたいな感じでドン引きだ。
 俺は正気にならないように気を付けながら、おっさんたちの足に体当たりして危害を加えていく。

「ぎゃああ! 新種のマーマンだ! 接触すると死ぬぞおまえら!」

 悲鳴を上げるおっさんたちに何度も執拗に体当たりを仕掛ける。
 おっさんたちが混乱して疲弊しきるのを確認すると、俺は魚野郎から人間に戻る。
 流石のおっさんたちもこちらが正気だと気付いたようだ。

「あの野郎。キ〇ガイのふりだ。捕まえろ、お前ら!」

 ダッシュして逃亡すると背後からそんな声が聞こえる。
 いかん、気合を入れて体当たりをし過ぎて、平行感覚がおかしい。
 視界がぐわんぐわんしている。



―|―|―



「クソガキ、コノヤロー、聖職者の俺様に手を上げるとはお前も異教徒みてえだなあ」

 酒臭い聖職者の男は怒りと酔いで真っ赤になった顔で、マザーとマザーの娘であるドーターを睨みつける。
 男の言い分はめちゃくちゃだった。

 取り巻きを連れた男が千鳥足でフラフラしながら歩いてきて、ドーターに足をぶつけたのだ。
 それだというのに、この男は謝らない上、あまつさえドーターがぶつけたのだと主張し、異教徒認定を行おうとしている。

 先月、夫を理不尽な理由で異教徒として監獄送りにされたマザーにはこれ以上は我慢の限界だった。
 マザーが男に文句を言おうと睨むつけると男は睨み返してきた。

「……お前。俺に文句があるて言うのか! ええ!」

 男は怒鳴り声をあげるとともに拳を大きく振りかぶった。
 マザーはしてはいけないと目を開けようとしたが、目は反射で勝手に閉じてしまう。
 避けることが出来ず、頭部に衝撃が走ると思ったが、なぜかそれはついぞ訪れなかった。

「な、なんだテメエ!?」

 眼を開けると素っ頓狂な声を上げる男と、旅装姿の青年が立っていた。
 男が溜めを入れて全力で振りかぶった拳は青年の胸に当たっているはずなのだが、青年はまるで動じた様子がない。
 ただただその青年は拳を打ち付けた男を見つめている。

「テメエ、お、俺の懲罰を邪魔しやがって、な、何のつもりだ」

 男は青年から何かを感じ取ったのか、脂汗を流してつっかえつっかえ、文句を言う。

「……」

 だが青年は何を言わずに見る価値もないというように、どこか焦点のあってない目で男を見下ろしている。

「い、異教徒だ。こ、こいつを連れていけお前ら」

 部下にそういうと青年に怯んだように男はたどたどしい足取りで踵を返す。
 すると足をもつれさせ、近くにあった人力車の角に頭をぶつけて、倒れた。

「なんてことだ大司教様が……!」

 周りの取り巻き共はざわめき立つ。
 男の周りでああでもこうでもないと騒いでいると、聖職者たちが駆けつけてきた。

「こんなところに居やがったこの魚野郎」

 粗野そうな聖職者は青年に罵声を浴びせると、倒れた男を見て目を剥いた。

「なんて野郎だ! ウォルムズ大司教に手をかけやがった!」

 駆けつけてきた男たちはその声を聴くとすぐに青年の周りを包囲した。

「その大罪人を連れてけ! お前ら!」

 粗野そうな聖職者が指示を出すと、聖職者たちは青年の腕を拘束して連行していく。
 青年は聖職者たちに抵抗せず、まるで「それでいい連れていけ」と言った風情。
 その余裕の態度からマザーは青年が只者でないことを悟った。
 この人ならと、青いロケットペンダントを投げた。

 青年は徐に受け取るとこちらに視線を寄こして、了承の意を伝えてきた。
 一言も言っていないのに全てを悟った青年に驚愕しながら、連行される凛々しい背中を見送った。




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