バッドエンド・クレイジーナイト~Storia per dare a Giunone~

白井 雲

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四乃原 語 3

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「僕が?気になってた?それは一体どういう……?」
「私の口から言わせないでよ。そのままの意味よ」
「だ、だからその意味ってどんな意味だよ」

僕の頭上にあるハテナマークは増えるばかりだ。
僕は溜息をついた。

だが、
ふとさっきまで考えていた事を思い出した。
大事なことだった。

「あのさ、そっちにも…………きた?」
「きた、って何が?」
「いや、だからさ。大したこと…でも無いかも知んないけどさ」
「焦らさないでいいなさいよ」
「手紙だよ。ほら、僕らの小学校のときの先生からの」
「手紙?知らないわよそんなの。だいたい私にはラブレターすら1通も来ないのにそんなの届くはずがないじゃない」
「………あ、そうなんだ。なんか…ごめん」
「なんで謝るのよ。それより、どうしよ。私の恋人説が広まったらあんたもあんたでヤバイよね?」
「当たり前だろ。というか、そんなに有名なアイドルなのか?」
「あんたテレビ見ないの?」
「見ないよ」
「…………ああ、そうか。あんたはそうだったね。昔っから情報に疎いところがあってさ」
「褒めてんの?」
「な訳ないじゃない」
「だ、だよなぁ…………」

そうか。
クラスメイト全員と、手紙にはあったけれど。
実際には数人にしかその「βテスター」のアレは来ていなかったのか。
いや、若しくは彼女に分からないようにマネージャーが捨ててしまった可能性もある。
いずれにせよ、危険じゃないのか?
街には奴がうろついていて、先生は僕らに手紙とアレを渡してきたんだ。
普通に考えたなら、
それは
自分の身を守る為に先生が渡したものであると、
そう思うはずだ。

僕に、守れと言いたいのか?


「カタリ?さっきから黙ってるけど、どうかしたの?」
「…………本当に、手紙は来てなかったんだな?」
「今はそれよりもこの状況をどうにかする方が先でしょ?」
「いや、それは君のせいでしょ?僕は巻き込まれただけだよ。いやいや、それよりも大事なことなんだよ。本当に来てなかったんだな?手紙は」
「来てない。そんなに気になったならマネージャーに訊いてみたら?あ、逆にマズイか」

待てよ。
彼女にあの景色を見せることはできるのか?
それとも「βテスター」でなければ、あの手袋をつけていなければ見ることはできないのか?
僕は彼女に対してそれを問おうとした。
まぁ、返ってくる反応なんかわかりきってるが。

「あのさーーーーーーーーーーーー」

「く、っはははははははははははは!!!!」

その高笑いには聞き覚えがあった。
冷たく、それでいていつも寂しさに満ちていて。
誰かが声をかけてあげればよかったのに。
誰かが彼に声をかけてあげたなら、
あんな、
あんな悲しい出来事なんか起きなかったはずなんだ。


「懐かしいな。覚えてるか?覚えてるよなぁ?お前らと同じクラスだったからなぁ……………」


二人はギョッと振り向く。
そこに居たのは。
あの日に見た、
あの日に見たまんまだった、
あの日に最後に会った、
あの日に会ったあの幼い少年の、


そのままの姿だった。


「どう…………む……………!?」
「うそ…!?服役中のハズじゃ!?」
「”だった”と付けなよ。まぁ、もう脱獄しちゃったから服役中も何もないんだけどね」
「い、今更何の用なんだよ!」
「………ニュース、観てなかったのか?」
「ま、まさか?」
「そうよ、あんたクラスメイトを一人ずつ殺し歩いているって………」
「有名になったな。フッ、ククク。そうさ、俺だよ。
   そして次に選ばれたのは………….、
   ”お前ら”だ」

瞬間、背筋が凍り付く感覚を覚えた。
目の前にいるのは、かつてのクラスメイトなんかじゃなく。

………………殺人鬼「神無 童夢(かんなき どうむ)だ。

「…………逃げるぞ」
「えっ?」
「僕が合図を送ったら、直ぐに逃げろ。後から僕も追いつく」
「作戦会議かぁ?ひそひそ話は苦手なんだよなぁ」
「逃げ切れたなら、警察に電話してくれ。それまで、多少なり時間稼ぎはする」

僕は右手を出し、
手の形を指ぱっちんのあの形にした。
それが僕の合図だ。

彼女に逃げてもらい、そしてその間に彼女に警察を呼んでもらう。
童夢、お前の最後だ。


パチン!


合図は鳴った。
彼女は急いでこの場から去る。
と。

「グフッ!?」

僕の右わき腹にどうしてか酷い痛みが現れた。
どうしたのかと手をあてがえば、血が出ていた………。
目の前にいる童夢をみると、
その手には包丁が握ってあった。
しかも、僕の血が、新しい僕の血が付着していた。
ああ、そうか。
僕は刺されたのか。
瞬時に状況が飲み込めた。
遠くで彼女が叫びをあげた。
けれど、鈍い痛みが次第に鋭い痛みに変わりだして、僕は目の前が暗くなっていったのを感じていた。
どうにか、出した声は、

「………い…………け」

といったような虚しい言葉だった。
自分が今死ぬにも関わらずだ。
他人の心配なんかしている余裕なんかないはずなのに。
僕は、最後まで……。
甘ちゃんだったみたいだ。



「お前が悪いんだ。お前さえ、お前さえ居なければ」




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