年下幼馴染みは加減しない

みなみ抄花

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第一章

三話

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「なぜ姉に……」
 確かに私の姉は実家から会社勤めをしているけれど、そんな姉に高校生である彼がわざわざ私の通っている大学名を聞き出したということか?
 一体何のために?
「栞里のことがどうしても忘れられなくて……何度考え直そうとしてもダメだったんだ」
「そ、そうなんだ……」
 うーん、何がダメだったのかは良く分からないけれど、確か真宵くんて兄弟とかいなかったんだっけ。
 だからちょっと寂しくて私に会いたくなっちゃった……とか?
 多少大きくなっても、真宵くんはあの優しかった真宵くんなんだもんね。
 なんてそんなことをしばらく考えていたら、彼の子どもの頃の記憶が私の頭の中を再びよぎる。
 一緒に河原を走ったり、裏山で秘密基地を作ったりしてとても楽しかったな。

 少し経って、電車がホーム内に入ってくるというアナウンスが鳴った。
「あ、電車が来たみたいだから、私はこれに……」
「うん、俺も一緒に乗るよ」
 まぁ真宵くんも同じ東京方面に乗るよね……だって都内の方に帰るんだし。
 このままこの電車に乗っていれば、いつかは東京に着くはずだ。
 だいぶ先な気もするけど……。
 二人で目の前に止まった車両へ乗り込むと、私はドア付近のところで立った。
 二駅先ですぐに降車するためだ。
 そしてドアが閉まるアナウンスとともに、電車がプシューという音を立てて扉が閉まる。
 ガタンとした揺れのあとにゆっくりと電車は動き出し、少しずつ速度を上げて走り出した。

 真宵くんが今何を考えているのか私にはよく分からない。
 先ほどから彼はなぜか黙って私を見ている。
(もう話はしないのかな?)
 この沈黙はちょっと……気まずいかも。
「真宵くんは座らないの? 空いてるよ」
「……栞里、俺は今日これで帰るけど、また明日来るから。これ、俺の番号とLINNメッセージアプリのID。帰ったら栞里の家の住所、ここに送信して」
 真宵くんはそう言って、私に紙のような物を手渡してきた。
 というか手の中に無理矢理持たせてきた感じ?
 私はびっくりして、慌てて彼の顔を見上げる。
「い、家? それはちょっと、さすがに……」
 私たちは一応それなりの年齢になった男女じゃん?
 二人で一つの部屋にいるのは、あまり良くないと思うんだよなぁ……。
「ちゃんと昼頃に来るよ。そんで夕方には帰る」
 いや、まぁそれはそうでしょうけど、随分といきなりだな。
 真宵くんて、こんなに押しが強い子だったっけ?
「えっと、高校生になった男の子が女の一人暮らしの家に来るのはさすがにさ……」
「それって……少しは俺のことも男として意識してくれているってこと?」
「えっと……まぁ……」
 子どもの頃の真宵くんのことは、もちろん弟みたいに可愛い子だと思っていたけど、今の真宵くんの姿はその時とのイメージが違いすぎて、私の頭の中ではまだ二人がきちんとマッチングされていない。
 現在の君はどうしてもまだ男の人って感じがしてしまうんだ。
 気持ちの切り替えが下手で申し訳ないけれど。
「たぶんもう少し慣れたら、ちゃんと真宵くんのことを昔みたいに見れると思うから……今はちょっと……」
「……栞里が俺を昔みたいに見る必要はないし、男として意識してくれて全然いい。それに俺の方は、今も昔も自分が栞里の弟だなんてちっとも思っていないから……じゃ、後で連絡よろしく」
(えっ……)
 彼はそれだけ言うと、二つ目の駅で私の手を引いて電車から降ろした。
 そしてすぐに自分だけまた電車の中へと戻る。
 すると少し経って、私たちの間をまるで隔てるかのように扉は閉まった。
 真宵くんに駅で降ろされた私は、彼を乗せた電車が通り過ぎるのを目で追いながら、ただ呆然とその場でたたずんでいる。
(嘘でしょ……昔は真宵くんとあんなに仲良かったのに……)
 彼は私のことを姉みたいに慕ってくれていたワケじゃなかったんだ……。
 え、ショック……かなりショックな出来事だ。
 真宵くんに出会うまでの私は、とても幸せな気持ちでいっぱいな金曜の夜だったのに……なんでこんなに心が沈む事態になってしまったのか。
 私は重い足取りの状態で駅を出て、そのままの足で帰路へとついた。
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