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10章 入院生活
129話 奴
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【良かった…アリサが無事で……さっき寝たのに安心…したら…また眠くなってきた…】
欠伸を掻き、うつらうつらと眠りの世界へ誘われようとしているとアリサが瞼の上に手を置き、ゆっくりと下ろした
必然、レンゼの瞼も閉じる訳でそのまま眠りこけた
…………
その頃、星空の下で10mはある程の建物の屋上から双眼鏡を使ってジーっとレンゼ達を眺める女性がいた
「あの子が私の娘を…」
怒りの篭った声で呟くと双眼鏡をバキッと壊した
「許さない…」
壊れた双眼鏡をその場に捨て、そこから立ち去った
(ふぁ~あ…)
目尻に涙を浮かべて瞬きすると左右を確認する
視界にアリサが居る事を確認するとホッと溜め息を吐いた
(なぁなぁ、大丈夫か?)
火照った顔でコクッ…コクッ…と首を上下させるアリサに声を掛けると気付いた様で目の焦点を合わせてレンゼを見詰め、紙に字を書いていく
『どうしたの?』
(大丈夫かって聞いてるんだよ。本当に大丈夫?)
レンゼが心配そうに聞くとアリサはニコッと微笑んで頷いた
『大丈夫。あんたは怪我人なんだから何も心配しなくて良いのよ』
そう書いた紙を提示すると同時にレンゼは頭を撫でられ、目を瞑った
(…分かった……でも俺の心配ばっかりじゃ無くて自分の心配もしてろよ?)
アリサはコクッと頷くと手を離して机にうつ伏して再び眠りこけた
【怪我が治るのは早くて半年…遅くても5年…それじゃあ傷男が仲間に報告して潰しに来るかも…少しアリサもおかしいし…さっきの気配…何か嫌な予感もする…】
無理矢理、身体を動かそうとしてみる。ミシッと音を立てて激痛が走り意識が遠退いていく
(ぐッ…! ハァ…ハァ…!)
なんとか意識を留めると天井を見上げた
【相当に努力しないとダメだな…でもまずはこの痛みに堪えられる様にならないといけないし…そもそもこの手首の傷で手も動かせないし…せめて動ける様になればアリサは…】
何も出来ない事に焦りを覚え、更に思考を巡らせる
【落ち着け…落ち着け…俺は死んでもアリサだけでも…】
そうこう考えている内に気が付くと夜になっていた
【早くアリサから離れないとヤバい…! あの気配はヤバい…! 動けない今は何も出来ずに殺される…! 聞こえないから近付いてくる事も分からない…さっきの気配は相当ここから近かった…つまり俺の居場所もバレてる可能性はある…一刻も早く…せめてアリサだけでも…そうだ! あそこに行けば時間位は稼げ…るけど…その後アリサが危険に晒される…ダメだ…どうにかしてでも動かないと…!】
部屋の中を見回して何か無いか探してみても何も良案が思い浮かばない
【誰か来てくれればアリサを連れて行って貰うのに…! そんなご都合展開無いのかよ…まあ…今までがご都合だった分仕方無い…少しは俺が動かないと…!】
とは思う物の、実質動けないのでアリサを起こした
『何? お腹空いた?』
(違う…その…少し…風呂入りたいかな…って…)
そう言った瞬間にアリサは嫌悪の眼差しを向ける
(へ、変な意味ではナイヨ…?)
目を逸らすと頬を紅潮させる
『なんでお風呂入りたいの?』
(そ、それは…)
【早く言わないと奴が来る…!】
(アリサの裸が見たいからです!)
それと同時にレンゼは殴られるのを覚悟で目を瞑り、アリサの顔は火照り目を逸らした
【あ、あれ…? 反応違うな?】
予想と全く違う反応を見せたアリサを見てある結論に辿り着いた
【まさか…俺を男として見てたのか…!? こんな所でそんな反応されると流石に恥ずかし過ぎる…】
(や、やっぱりなんでも無い…)
顔を紅潮させるが今はそんな事に気を取られている場合では無い事を分かっているレンゼは眉を顰める
(お、お腹空いたなぁ~…)
『今持ってきてあげる!』
字を高速で書き上げてレンゼに見せるとゴミ箱に丸めて捨てて部屋を走って出て行った
【これで後はすれ違ってくれるのを望むしか無い…】
ドアが開けっ放しになっていて、そこをジッと見詰める
【頼む…奴が来てくれ…! ご都合展開!】
欠伸を掻き、うつらうつらと眠りの世界へ誘われようとしているとアリサが瞼の上に手を置き、ゆっくりと下ろした
必然、レンゼの瞼も閉じる訳でそのまま眠りこけた
…………
その頃、星空の下で10mはある程の建物の屋上から双眼鏡を使ってジーっとレンゼ達を眺める女性がいた
「あの子が私の娘を…」
怒りの篭った声で呟くと双眼鏡をバキッと壊した
「許さない…」
壊れた双眼鏡をその場に捨て、そこから立ち去った
(ふぁ~あ…)
目尻に涙を浮かべて瞬きすると左右を確認する
視界にアリサが居る事を確認するとホッと溜め息を吐いた
(なぁなぁ、大丈夫か?)
火照った顔でコクッ…コクッ…と首を上下させるアリサに声を掛けると気付いた様で目の焦点を合わせてレンゼを見詰め、紙に字を書いていく
『どうしたの?』
(大丈夫かって聞いてるんだよ。本当に大丈夫?)
レンゼが心配そうに聞くとアリサはニコッと微笑んで頷いた
『大丈夫。あんたは怪我人なんだから何も心配しなくて良いのよ』
そう書いた紙を提示すると同時にレンゼは頭を撫でられ、目を瞑った
(…分かった……でも俺の心配ばっかりじゃ無くて自分の心配もしてろよ?)
アリサはコクッと頷くと手を離して机にうつ伏して再び眠りこけた
【怪我が治るのは早くて半年…遅くても5年…それじゃあ傷男が仲間に報告して潰しに来るかも…少しアリサもおかしいし…さっきの気配…何か嫌な予感もする…】
無理矢理、身体を動かそうとしてみる。ミシッと音を立てて激痛が走り意識が遠退いていく
(ぐッ…! ハァ…ハァ…!)
なんとか意識を留めると天井を見上げた
【相当に努力しないとダメだな…でもまずはこの痛みに堪えられる様にならないといけないし…そもそもこの手首の傷で手も動かせないし…せめて動ける様になればアリサは…】
何も出来ない事に焦りを覚え、更に思考を巡らせる
【落ち着け…落ち着け…俺は死んでもアリサだけでも…】
そうこう考えている内に気が付くと夜になっていた
【早くアリサから離れないとヤバい…! あの気配はヤバい…! 動けない今は何も出来ずに殺される…! 聞こえないから近付いてくる事も分からない…さっきの気配は相当ここから近かった…つまり俺の居場所もバレてる可能性はある…一刻も早く…せめてアリサだけでも…そうだ! あそこに行けば時間位は稼げ…るけど…その後アリサが危険に晒される…ダメだ…どうにかしてでも動かないと…!】
部屋の中を見回して何か無いか探してみても何も良案が思い浮かばない
【誰か来てくれればアリサを連れて行って貰うのに…! そんなご都合展開無いのかよ…まあ…今までがご都合だった分仕方無い…少しは俺が動かないと…!】
とは思う物の、実質動けないのでアリサを起こした
『何? お腹空いた?』
(違う…その…少し…風呂入りたいかな…って…)
そう言った瞬間にアリサは嫌悪の眼差しを向ける
(へ、変な意味ではナイヨ…?)
目を逸らすと頬を紅潮させる
『なんでお風呂入りたいの?』
(そ、それは…)
【早く言わないと奴が来る…!】
(アリサの裸が見たいからです!)
それと同時にレンゼは殴られるのを覚悟で目を瞑り、アリサの顔は火照り目を逸らした
【あ、あれ…? 反応違うな?】
予想と全く違う反応を見せたアリサを見てある結論に辿り着いた
【まさか…俺を男として見てたのか…!? こんな所でそんな反応されると流石に恥ずかし過ぎる…】
(や、やっぱりなんでも無い…)
顔を紅潮させるが今はそんな事に気を取られている場合では無い事を分かっているレンゼは眉を顰める
(お、お腹空いたなぁ~…)
『今持ってきてあげる!』
字を高速で書き上げてレンゼに見せるとゴミ箱に丸めて捨てて部屋を走って出て行った
【これで後はすれ違ってくれるのを望むしか無い…】
ドアが開けっ放しになっていて、そこをジッと見詰める
【頼む…奴が来てくれ…! ご都合展開!】
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