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一章 泡沫の夢に
12話 『登校』
しおりを挟む「レイく~ん。起きないと遅刻するわよ~?」と布団越しにお腹辺りを揺する
「ぁぅ、ぅ、ぅん……」
右目を擦ってベッドから起き上がると知らない所に居た。どこだろう、ここ。
「早く着替えないと学校に遅刻しちゃうわよ?」
「っ……!」
そうだ、思い出した。
いつもと、って言っても二回くらいしか来てないからあまり実感が無いけど……。
ここは僕の部屋。そして、起こしてくれたのはネネさんだ。
「あ、ありがとうございます!」
「朝ごはんはもう準備出来てるから食べておいてね。さっ、次はレイカちゃんを起こさないとっ」
ええと……今は何時だろう。早く着替えないと──!
「ええっと……あ、着替えはここだ」
部屋の端に置かれているクローゼット
そこにハンガーに掛けてあるのは私服が一枚と制服だ
まだ春で、白色の長袖のカッターシャツを着てその上から紺色のブレザーを身に纏って昨日の夜縫った眼帯を着けて下に降りる
「あれ……?」
「どうしたの~?」
「ひっ!」
えっ、だ、だだだだ……ぁ、ぁぁ、ネネさん、ネネさんか。うん。あとはレイカちゃん以外あり得ないよね。そのレイカちゃんは今下りてきたみたい。同じ学校だったんだ。
「さあご飯食べちゃって食べちゃって!」
朝ごはんはバターの塗られたトーストが二枚とオレンジジュースだった。
凄く美味しくて、すぐに食べてしまって学校に行こうとしたらレイカちゃんが追いかけて来た。
途中でこけて口に咥えていた食パンが潰れて顔がバターまみれになっていたけど。
「ふぅ……。間に合って良かったぁ……」
「まだ登校中だけどね」
「だって一人で行くよりもレイくんと一緒に行った方が楽しそうだもん!」
「あ、あはは……」
「あ! ノリっち! レイくんまたね!」
「うん。じゃあね」
前にお友達を見付けたみたいだ。
走って行っちゃった。
でも、今日はなんだか足が軽い。
理由は分かってる。
稲継くんだ。
でも多分、彼はもう、襲って来ない。と思う。
「レイくん。おはようです」
「ミズキさん、おはよう」
……? どうしてミズキさんが?
「レイくんレイくん。聞きたい事があるです」と小さな声で話し掛けられてつい僕も小さな声になってしまった
「えっ、ど、どうしたの?」
「あれからレイくんの手は剣になったです?」
「えっ? なな、なってないよっ」
あれ……? 何か、悪い事言ったかな……?
ミズキさんが頬を膨らませてる。おこ、ってる、のかな……?
「むぅ、分かりましたです。今日は一緒に帰るです」
「えっと……理由を、聞いても?」
「レイくんは乙女心が全く分かってないです。私はただ純粋にレイくんとデートを楽しみたいだけなのに~! です」
「あ、あああ……。でも、大丈夫なの?」
「私は立ち直り早いですし、貞操が取られた訳でもないのに後悔するなんて可笑しいです」
「お、女の子が、そう言うのっ……て、良くないと、思う……」
「レイくんはすっごくピュアだという事が分かったです!」
えっ……僕が、ピュア……?
「とにかくっ。放課後、正門の所で待っていて下さいです」
「わ、分かったよ。……? でも、一緒に帰るだけなら同じクラスなんだし──」
「今週、私は掃除当番だからです」
「ああ、うん。分かったよ」
キーンコーンカーンコーン……
「あっ、チャイム鳴ったです。急ぐです」
「う、うんっ」
僕達は急いで二階の階段の隣、『三年二組』の教室へと向かった。
まだ先生は来ていないようで、間に合った。と一息つき各々の席へと向かう。
僕の席が入って来たドアから丁度二列目の三番目の席。ミズキさんの席は一列目の二番目の席。だから、すごく近い。
「一時間目は……数学で、二時間目は……」
「起立!」
あぅぁああっ! ……びっくり、したぁ……。
「気を付け! 礼! 着席!」
ほっ……。ようやく一息つける……。
「剣崎、岩倉」
「ひゃっ!」
「もう大丈夫なのか?」
「はい。私もレイくんも全然大丈夫です。いえ、実を言うとレイくんは分からないです」
「ぼ、僕は……」
大丈夫。大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫。何も無かったんだ。もう、何も無い。
「はい。大丈夫、です」
「そうか。だが、しんどくなったら言えよ? ……じゃあ一時間目の準備をして待機。ちょっと道具持ってくんの忘れたから」
先生が出て行った。
顔は怖いけど、優しくて……例えるならコオロギさん? でも、コオロギさんと違って筋肉が凄い。顔もコオロギさんとは違った迫力で……。なんて言えば良いんだろう。厳か? なんだか、そんな感じの人。
あ、戻って来た。
「それじゃあ一時間目の授業を始める! ……つってもさっきやったから別に良い。それじゃあ教科書十一ページを開けろ~」
っ、最後に授業受けた時は七ページだったのに。……? いや、そこまで内容は進んでない。はず。そう信じたい。
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