21 / 263
一章 泡沫の夢に
17話 『話題』
しおりを挟む「レイくんレイくん!」
通学途中、ミズキが後ろからレイを追いかけてきて、レイが立ち止まると同時に加速した
そして、レイと少し距離の離れた所で跳躍してから何事も無かったかのようにスタスタと歩いて来る
「お、おはよう。ミズキさん」
「レイくんは今日の朝は何食べたです!?」
目を燦爛と輝かせながら笑顔を浮かべて迫るミズキに少し気圧されながらも「えっと……目玉焼きを乗せた食パンに牛乳……かな……?」しっかりと答えた
「おおっ! 凄い偶然です! 私もそれです!」
「そ、それが、何かあったの……?」
「いえ! ただ、レイくんと同じ食事をしたのかと思うと……、とてもッ! 嬉しくてッ!!」
「は、ははは……」
……よく、分からない、かな……?
「レイくんはどうです!? 嬉しいです!? 嬉しいです嬉しいです嬉しいです!?」
執拗に迫るミズキに二、三歩後ずさりながら「えっ……!? ぇ……と……う、嬉しい、かな……?」と小さく頷く
「……レイくん、嘘は良くないです。嬉しくない時は嬉しくない。嬉しいって言うのは嬉しい時だけにするです」
「えっ!? ……ご、ごめんなさい……」
「シュンとしたレイくんも可愛いです。許してあげるです」とレイの頭を優しく撫で下ろす
「んっ……」
「ふふっ。可愛い声出すです」
「そ、それは……」
……か、可愛いなんて……。
「その……ごめん、なさい……」
「大丈夫です。ほら、学校遅刻しちゃいけないです。急ぐです」とレイの腕を掴んで走り出した
「ぅゎっ! い、いたっ、少し、待っ、て……!」
※※※
「到着ですっ」
「ぎっ、ぎりぎり、だけどっ……ね……」
教室になんとか辿り着いたレイは既にクタクタだ
当然だ
普通に歩いて約二十分の距離を──
それを、僅か五分で駆け抜けたのだ
それでもまだ疲れた様子を見せないミズキは更に凄い事になるのだが──
それでも、凄い事に変わりはない
「はぁっ……はぁっ……!」
「疲れたです?」
「う、ううん……大丈夫……っ! ……じゃ、ないかな……。凄く、胸が、横腹が……いた、い……」
「席までお姫様だっこしてあげた方が良いです?」
「だっ、大丈夫……。それは、ちょっと……」
呼吸を整えて自分の席に座ったレイは机の横に付いているフックにカバンをかけて腕を枕代わりにうつ伏せた
つっ、疲れた……。
一時間目が体育じゃなくて良かった……。
本当に……。
体育だったら、ちょっと、無理だったと思う。
右肩も痛いし……。
少し、眠たいかも……。
ちょっと、寝よう。
少しだけ。
せめて、ホームルームが始まるまで……。
一休み、させて欲しい。
おやすみ。
……えっと……誰か分からないけど……。
おやすみなさい。
※※※
「ミッチー」と、ロング茶髪の少女がブレザーのポケットに手を突っ込んで近付いて来る
「リンコさん。おはようです」
「ミッチーてさ、剣崎の事好きなの?」
「はい? 好きです」
「マジかよ……。それってさ、結構ヤバくね?」
リンコが言いたいのはこういう事だ
実際に言った
すぐそこでうつ伏せている少年は凄い過激な不良グループに目を付けられてるから仲良くするのはとてもマズいと言うこと
あと、単純にぼっちな上にイケメンと言う訳でもない剣崎と付き合うのはミズキにとって『百害あって一利なし』だからだ
「違うです。リンコさん。レイくんは百害なんて無いです。『百利あって一害なし』です」
「えっ? じゃあ聞くけどさ、あんな奴のどこが良いの? バカなの? 成績は平均、顔も微妙、下ネタ発言だけでトイレ行く変態なんだよ?」
「違うです。たしかに成績は平均です。顔は凄く可愛いです。あと、レイくんの頭を撫でた事あるです?」
「無いよ。あるわけ無いだろ」とリンコが即答してもミズキは続ける
「頭を撫でた時、凄く可愛らしい声を出すんです。あと、その発言のあと、トイレに付いて行った事あるです?」
先程と同じ答えが即座に返されてもミズキは挫けず続ける
「吐いてるです」
「吐く? 何を?」
「ゲロです。ゲロ。分かるです? 嘔吐です」
「はぁっ!? 下ネタ程度でゲロぉ!?」
「レイくんの事を知ればとても可愛く思えるです。分かるです?」
「いや、あいは剣崎の事興味無いし」
「恐らく、このクラスの、この学年の中で一番心に傷を負ってるのはレイくんなんです。分かるです? この理由」
「いや、だから分かんねえよ……」
「レイプされた事があるです。レイくんは」
「……いやいやいや、アイツはオトコ。どっちかって言うと襲う側だろ」
「私は双眼鏡で見たです。どこかの不良さんに激しく弄ばれるレイくんを。……まあ、その不良さんも今は手を出してくるはず無いですけど」
「何をしたんだよミッチー……」
「何って。決まってるです。制裁です」
「不良相手に?」
「と言うよりグループ相手にです」
「なるほどなるほど。ってなるか? ならない。もっと現実的な事言おうぜミッチー?」
「むぅ……さっきからホントの事言ってるです」
「はいはい。っと、先公来たから戻るわ。んじゃ」
「はい。またです」
そう手を振ってリンコは三列目の一番後ろの席に座った
ちなみに苗字は杉浦だ
0
あなたにおすすめの小説
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる