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一章 泡沫の夢に
34話 『後悔』
しおりを挟む「いってらっしゃい」
「行ってきます」と微笑んで振り返りながら靴を履いて、ドアを開ける
「レイくん、学校終わったらバス乗り場でね……?」
「はい。分かりました」
火葬場までは少し距離があるらしい。と言ってもバスで十五分の距離だ。
だから、バスで行く。
そこから少し歩いてすぐ、火葬場が見えてくるらしい。
二度目、だったと思う。けど、思い出せない。孤児院に入ってすぐ、院長さんが言っていた。『辛かったね、でも、もう大丈夫だからね、あそこに行くのは、最期だけで良いんだよ』と。あそこがどこか聞いた。そうしたら、院長さんは『火葬場』とだけ答えた。これが、一番古い記憶でそれより前の記憶は無い。
考えたりしてみたけど、分からなくて、その時は考えるのをやめてしまった。
あの時はあまり何も思ってなかった。
だけど、今考えてみたら、おかしい、よね……?
だって……一切憶えてないって、おかしい、多分。きっと、いや……絶対に。
ダメだ。
やめよう。
早く学校に行かないと。
僕は、駆け足になった。なんでかって聞かれると、よく分からない。だけど、教室に着いた時、また、嫌な視線が突き刺さった。
怖がる眼、怒りの眼、疑いの眼、訝る眼、嫌悪の眼、眼眼眼。『め』が、僕をずっと観ている。
怖いを通り越して、気持ち悪い。
すぐに席について腕に顔を埋めた。
とても静かで、とても気持ち悪くて……、嫌になっていた。
なりそうではなく、なっている。既に。ミズキさんが殺されて、僕が疑われるのは、少し分からないでもない。だって、あの場に居たのは死んでしまったミズキさんと、倒れている僕と、多分、死んでいるあの子だけだったから。
そうすると消去法で僕が殺したと疑われても文句は言えない。
何も知らない人からすれば、それが真実だから。目に見えるそれが、その人達からしたら、真実だから。
今日は国語と理科。大丈夫。出来る。
一日だけだったけど、勉強したから。
ミズキさんと。
だから、大丈夫。
先生が来た。
朝の挨拶が終わって、少ししてから一時間目が始まる。
…………………………始まった。
初めの方は漢字を書いて……次は文法。ここがとても苦手で、よく分からない。五段活用って何? なんだろ。……飛ばそう。次は──、文章問題……、それに、古文……。これは、少しだけ苦手。なんとなくは分かるけど、ちゃんとは分かってない。うーん……、分からない所は後で。…………今度は、文章問題……。えーと、『三年生になって何が出来るようになったか、百二十~百四十字以内で書け。また、二段落構成で書くこと。一段落目で何が出来るようになったか、二段落目でどうやってそれが出来るようになったのかをそれぞれ具体的に書きなさい』…………別の問題を先にしよう。
まだ、時間はあるから、大丈夫。だと思う。考えれば解けるかもしれない。
頑張ろう。出来るだけ────……………………。
「テストを集めましょー」
終わってしまった。
全部は埋める事が出来た。……作文以外。
次は理科。頑張ろう。出来るかは分からないけど……。
この休み時間に出来るだけ勉強を「剣崎」
……せん、せい……? 担任で、数学の先生。名前は……小森先生……だったと、思う。
「ちょっと来い」
呼び出されて、廊下に出た。
……どんな用だろう。
あまり、辛くない話が良い。
「剣崎、最近嫌な事が立て続けに起こっているからって暴力はよくないぞ」
「ぇ……?」
「最近ずっと、剣崎に嫌がらせを受けていると何人からも職員室に報告が来ている。名前は言わないぞ」
待って……。ぇ……? 僕は、何もしてない……。なんで、なんで……?
「次、何かしたら保護者の人と話さないといけない。受験生なんだから、それは嫌だろ?」
何も、してないのに……、でも、ここで、してないって言ったら、きっと……怒られる。
「分かり、ました……」
「分かればいい。次は理科だからな。頑張って勉強しておけ」
そんな……、僕は、何もしてない。してないって……。
席に戻ると、「あ。あっぶねー」そう聞こえて声のした方を振り向いた。
……ぇ? 今、視界の端に……──っ……!
「ぃっ──!」
あ、あぶ、ない……。目尻を、何か、刃物が掠っていった。…………カッターだった。カッターが、後ろの方に転がっている。
「うっわ。きったねー」
カッターを持ってる人、だと思う。その人がカッターを拾って気持ち悪そうにしていた。
「おーい、そろそろ次のテスト始まるぞー」
「おー。行く行くー」と手を振りながらレイの後ろを通っていく「俺、お前の事許さねえから」そう呟いて
……………………大丈夫。僕が痛いだけ。別に何もない。
それより、テスト勉強。
あっ、チャイムが鳴ってしまった。
このまま、やろう。
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