当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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二章 無意味の象徴

60話 『作戦』

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「はいはーい。みなさん、聞いていただけますかー?」

 少し先でベンチに座っている女の人が手を振って呼び掛けている。その呼びかけに皆の視線が注目していて、僕も慌ててそちらへ目を向けた。

「誠に申し訳なく思いますが……これから皆さんに協力していただくのは承知かとお思いますが、戦闘です……。ああッ……! 嘆かわしい限りです……! なぜ争うのか、そう問われれば私はこう答えるでしょう……! 皆が、ただ幸せな日々を送れるように……。と」
「まあ、何が言いたいかって話よね」と、男の人がレイの横を通り、演説をしている彼女の前に立つ「つまりはね、今回ばかりはアナタ達に手を貸してほしいのよ。ワタシとカエデだけじゃあ、流石に力量不足よ。だから、アナタ達にも手伝ってもらって平和な日々を送れるように……頑張りましょう……? ネェ……?」

 最後の部分に、ゾッとしてしまった……。何かに、背筋をなぞられたような、そんな感じがして、少しクラっとしてしまった……。

「──さて、冗談はさておき……作戦をお伝えします。トアさん……? お願いしますね……?」
「分かってるわよっ。んもうっ!」

 あ──、そうか、思い出した……。バスの中で聞いた人たちだ。たしか、二つ名……? を持っている人って聞いた。カエデさんと、トアさん。たぶん、この二人の事だと思う。いや、きっとそうだろう。

 トアは「んフッ」とウィンクを飛ばした。正直、誰が見ても気持ち悪いの一点張りだろう。だが、誰もそういった表情を浮かべず、黙って見詰めている。レイ、イツキ、コーイチの三人を除いて

「なぁ……レイ、今の見たか……?」
「レイくん……今のすごく……」

 二人の声が重なって「気持ち悪くない……?」と同じ言葉をレイに左右から言ったのだ。少し、いや、けっこう困惑を表情に出しつつ「うーん……」とだけ口にした

「さて、作戦と言ってもあまり難しくはしていません。この二十七人で、三つのチームを作っていただき、それぞれをAチーム、B、Cと名付け、Aには左側面を迂回するように、Bには敵の本陣を叩いてもらい、Cには右側面を担当してもらうように思っています。あ、安心して下さい。私とトアさんを筆頭とする九人で、出来得る限り手早くたたか………………………………はい。分かりましたか……? あ、まだチームの振り分けがまだでしたね。では──」

 僕は──Cチームに入れられるらしい。色んな人たちの集まりがあって、その間にも関係の良し悪しがあるから同じチームの人があまり偏らないように配属されるらしい。トアさんが説明していた。ミノリさんとイツキくんはBチーム。是枝さんとナナセさんがAチーム。そして僕とコーイチくん。皆、同じ具合にバラバラになってしまった。

「な、なんだと……! オレが……C……?」
「頑張ろうね。コーイチくん」
「はあ……しかたねー……こうなったら、徹底的に戦ってやる!」
「レイ、僕とも一緒だね」

 レイに声を掛けたのは彼の男だ

「──そう、ですね」
「ああ、そう言えば、まだ名乗っていなかったね。僕の名前はレイト。宜しくね」
「オレはコーイチだ……!」

 九人。残りの六人も、どこからどう見ても普通の人だ。背の高い男の人、母子おやこ三人。動物の耳が付いているパーカーを被った女の子。気怠そうなメガネを掛けたボサボサな男の人。合計九人。

「あー、これって、自己紹介とか、しなきゃいけない感じですか……?」

 気怠そうな男が頭を掻きながらレイトを見詰める

「うーん……どうだろうね。でも、僕はその方が良いと思うな」
「そうですか。じゃあ──、えー、自分の名前は……えっとー……なんだっけ」
「鳥の巣アタマ」と、隣のパーカー女が口を挟んだ「うん。エミ。よろしく」
「えーと、まあ、俺? 俺は富田英介。よろ」

 残るは母子だけだ。子供二人は良く似ている。少女達は恐らく双子だろう。母親の方は少し深呼吸をして胸を撫で下ろしてから「え、えーと、私の名前は加茂かもチトセです。……ほら、お兄さん達に挨拶は?」
「ナツメ……」
「ナツミ? ナツミのお名前はねー、ナツミって言うの。よろしく!」

 自己紹介は終わったけど……このまま、合図が来るまでどうしよう……。


 ※※※


「ミノリちゃんはおねーちゃんより弱いのー?」

 小さく頷くミノリを見て、「ふーん」と唇を尖らせて前に立っている彼らを見詰める。仲が悪い。初見で既にそう見えるのだ。彼ら四人は互いに互いを睨み合い、イツキとミノリを含めた五人がそれを傍観している。すでに展望台からは離れて、山の中だ

「もーさー! ケンカはやめよーよー! メーワクだから!」
「やめたいけどさ、これは俺達の問題なんだ」と、爽やかな少年、ミツキに対して「おぉう! 俺らの問題だ! そうだ!」と丸坊主でメガネをかけた人、アキラが便乗する

 残りの二人は互いの相手、ミツキとアキラをそれぞれ睨み付けている

「ホント……あの人たちコーイチなみだよ……まったく……」
「コーイチ?」
「んー、すっごくうるさくて、おかしもくれないケチなやつだよ! ボクでもコーイチとはなかよくできないもん! きっとセイタくんもそーおもうよ! ぜったい!」
「へェー……」

 セイタと呼ばれた少年はやはり四人を見詰めながらイツキの言葉を右から左へ流していた
 セイタの後ろに立っているのは女だ。年は二十前後だろうか……? 腰を曲げ、セイタの肩に腕を置いて頭の上に顎を置いてため息を吐いた

「ったく、男はこれだから……」
「そうですよ。不愉快極まりないです。消えて下さい」
「チィちゃんとミムラちゃん、すっごいわるぐちだね」
「しかたないじゃん? だってあそこの四人、会ってからずっとああしてんじゃん」
「人に迷惑をかけているにも関わらずまだああして続けている所を見ると……キモいですね……なぜそこまでして人に嫌われたいのか、不思議で仕方ありません……いつやめるんですか」
「ボク、は、ワカラナイ」
「セイタくんもかー……」

 ピピピピッピピピピッ!

「時間ですよ……? いつまで続けてるんですか、やめて下さい……」
「しゃあねー! このケリはいつか着けるからな! ぜったいに!」

 イツキは立ち上がって尻を叩くと大きく伸びをした

「がんばろうね。みんな」
「ワカリマシタ」
「んー、りょーかーい」
「分かってます」

 ミノリは無言で頷き、それに頷き返して「しゅっぱーつ!」と指を擦る。しかし音は鳴らず、何度もスカッと空振りしながら諦めた

「はやくいこ!」

 今度は指を指すだけにしたようだ




[あとがき]
 ここくらいから場面切り替えすんっごい多くなります。
 何卒、ご容赦ください。
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