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そうしますと、内装だけは、超、一流である事が却って癪に障り、目のやり場に、困らせておりますと、店員さんと会話をしておりました、常連の方と思しき男性が飲んでおられました、ミックスジュースを、ついうっかり目に入れてしまいましたので、わたくしは、それにも腹を立てる事となりました。
純喫茶の常連であるならば、ホット珈琲を飲まなくてはならぬ、というのは偏見ではなく、常識であり、お店に対する礼儀でもあるだろう。
と、そう思われた訳にございますが、よくよく考えてみますと、ミックスジュース、というのもひとつ、喫茶店の味、といえるのやも知れぬ、と思われて来てしまいましたからにはわたくしは、その常連の方へ、心のなかから、謝罪をせねばならなくなったのでございます。
そうして、一旦罪を覚えてしまいますと、八年越しのクレヨンを飲み干すまでは早くありました。
と、いうのは真赤な嘘でございまして、わたくしは、いつも優しく、誰かや何かの悪口など、これまでの人生で、一度も口にした事などないのではあるまいか、と思われてならない妻に倣いて、少しばかり優しい人間になろうとしておる真最中だったのでございます。
で、ありますから、注文したものを残してはならぬ、といった常識や、礼儀の問題は一切関係しておりませんで、あくまでも、彼女のおかげでございますから、あのお店は、あの珈琲の味を、早急に何とかせねばならぬ、という思いは、今をもってしても変わらずに、わたくしの心にあり続けておるのでございます。
純喫茶の常連であるならば、ホット珈琲を飲まなくてはならぬ、というのは偏見ではなく、常識であり、お店に対する礼儀でもあるだろう。
と、そう思われた訳にございますが、よくよく考えてみますと、ミックスジュース、というのもひとつ、喫茶店の味、といえるのやも知れぬ、と思われて来てしまいましたからにはわたくしは、その常連の方へ、心のなかから、謝罪をせねばならなくなったのでございます。
そうして、一旦罪を覚えてしまいますと、八年越しのクレヨンを飲み干すまでは早くありました。
と、いうのは真赤な嘘でございまして、わたくしは、いつも優しく、誰かや何かの悪口など、これまでの人生で、一度も口にした事などないのではあるまいか、と思われてならない妻に倣いて、少しばかり優しい人間になろうとしておる真最中だったのでございます。
で、ありますから、注文したものを残してはならぬ、といった常識や、礼儀の問題は一切関係しておりませんで、あくまでも、彼女のおかげでございますから、あのお店は、あの珈琲の味を、早急に何とかせねばならぬ、という思いは、今をもってしても変わらずに、わたくしの心にあり続けておるのでございます。
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